傘を開いたら、66通りの物語が降ってきた。|#みんなのことば帖2 参加作品より
傘を開いたら、
どんな物語がはじまるでしょうか。
雨の音。
誰かの気配。
帰り道の小さなため息。
あるいは、もう会えない人の記憶。
「同じお題を、みんなで書いてみたらどうなるんだろう」
そんな小さな好奇心から始めた企画、
「みんなのことば帖」
第2回のお題は、
「傘を開いたら」
でした。
ありがたいことに、今回もたくさんの方が参加してくださいました。
私自身の記事を除くと、集まった作品は66通り。
タグページを開くたびに、そこには本当にいろいろな傘が並んでいて。
やさしい傘。
切ない傘。
ちょっと不穏な傘。
思わず笑ってしまう傘。
誰かを思い出す傘。
同じ一文から始まっているはずなのに、
見えている景色が、ひとつとして同じではありませんでした。
ぜひ、みなさんの作品を拝読していただけると嬉しいです💖
今回は、その中から、私の心に残った作品をいくつかご紹介させてください。
※どれが一番、ということではありません。
どの記事も本当に素敵でした。
この記事では、あくまで私が「この広がり方、好きだなあ」と感じた作品を一部ご紹介します。
カイロウドウケツさん
まず印象に残ったのは、カイロウドウケツさんの一編です。
傘を開いたら、そこにいたのは――ヤモリ。
もう、この時点で心をつかまれました。
雨の夜、帰ろうと思えば帰れる。
けれど、傘にくっついている小さな生きものを前にして、急ぐ理由が少しだけ薄れていく。
雨宿りをしているのはヤモリなのか、それとも語り手のほうなのか。
そんな余韻が残る、静かであたたかい一編でした。
作品はこちら👇
花*花8787さん
花*花8787さんの「つなぐ。」は、タイトルの通り、時間と記憶がそっとつながっていく作品でした。
母の日に贈った白い日傘。
それが、母の形見分けとして自分のもとへ戻ってくる。
その日傘を開いたとき、中から転がり落ちたもの。
そして、傘の内側に残されていたもの。
とても短い物語なのに、そこには三世代分の時間が流れていました。
傘って、ただ雨や日差しを避けるためのものではなくて、
誰かを守ってきた記憶そのものにもなるのだなと思いました。
作品はこちら👇
ちょろすさん
ちょろすさんの作品は、前半と後半の落差がたまりませんでした。
幼いころ、母はいつも日傘を自分のほうへ傾けて歩いてくれた。
その影は、ただの日よけではなく、誰かの歩幅に合わせる優しさだった。
そして母になった自分が、今度は娘の歩幅に合わせて歩く。
ここまでは、もう、じんわり泣きそうになる流れです。
母から娘へ、そしてまた次の娘へ。
優しさが受け継がれていく、きれいな掌編だと思って読んでいました。
けれど、最後にふっと生活の強さが顔を出す。
きれいごとだけで終わらないところに、ちょろすさんらしい軽やかさを感じました。
作品はこちら👇
央白(おしろ)さん
央白さんの作品は、雨の日の一瞬を切り取る美しさが印象的でした。
コンビニの軒下。
突然の土砂降り。
駅へ走るのを諦めた、下校途中のふたり。
彼女が傘を開いたら、この時間は終わってしまう。
雨って、ふだんは厄介なものだけれど、
時々、誰かと一緒にいられる理由にもなるのですね。
淡くて、静かで、でも胸の奥に確かに残る。
青春の一場面を、ほんの数秒だけ覗かせてもらったような作品でした。
作品はこちら👇
くろいるすけさん
そして、くろいるすけさんの作品。
タイトルからして、もう好きでした。
「傘は守ってくれない」。
傘は雨から守ってくれるもの。
そう思っているはずなのに、現実では、傘のせいで濡れることがある。
あまりにも生活です。
この企画の面白さは、まさにこういうところにもあると思いました。
「傘を開いたら」と聞いたとき、
魔法や恋や記憶に向かう人もいれば、
車に乗るまでの数歩のバタバタを描く人もいる。
でも、そのどちらも物語なのですよね。
作品はこちら👇
第3回以降のお題募集
そして、引き続き、
#みんなのことば帖 第3回以降のお題も募集しています。
「この一文から始まる物語を読んでみたい」
「こんな数秒を、みんなならどう書くのか見てみたい」
「このモチーフ、面白そう」
そんなアイデアがありましたら、ぜひ下記の記事のコメント欄へお寄せください。
お題募集はこちら👇
一文だけでも、
ふわっとしたイメージだけでも大歓迎です。
みなさんからいただいたことばが、
また次の小さな物語の入り口になるかもしれません。
ひとつの場面から、
たくさんのことばが生まれる。
その面白さを、これからも一緒に楽しめたらうれしいです。
喜木 拝
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