研究を通して身につける、専門性とは異なる能力〜リケトレ!#7
こんにちは。理系院生に特化したキャリア教育に取り組んでいる三木尭紘と井本裕顕です。今回は、井本がメインの執筆を務めます。
このnoteでは、「研究を頑張りたいけれど、将来のキャリアや就活が不安」という理系院生に向けて、キャリアトレーニング「リケトレ!」を連載形式でお届けしています。
前回は、理系院生が就活やキャリア準備に取り組むうえで、真っ先に時間をかけたいものとして、Can=実践的能力を紹介しました。
Canを意識しながら研究することで、
①研究で成果が出る
②就活で使える
③入社後に活躍できる
と一石三鳥になる、という話でした。
ただ、「実践的能力」と言われても、ピンとこない人もいるのではないでしょうか。
大学院の研究を通して身につくものとして、真っ先に思い浮かぶのは専門分野の知識やスキルです。
研究を行う上で、専門性はもちろん欠かせません。
しかし、教員をしていると、「知識・スキルは秀でているのに、実践的能力がうまく育っていないなぁ」と感じる学生さんを見かけます。
では、専門性と実践的能力は何が違うのか。
今回のテーマは「研究活動における専門性と実践的能力」です!

<研究を通して学ぶもの>
前回は、理系院生が最優先で取り組みたいこととして、日々の研究でCan=実践的能力を意識して伸ばすことを挙げました。
一方、「研究を通して学ぶもの」と聞いたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは、専門分野の知識や技術ではないでしょうか。
大学院では、自分のテーマについて、文献を読み、実験や分析を繰り返しながら、専門性を高めていきます。
専門性は、研究で成果を出すためにも、就活にも、入社後に研究者・技術者として活躍するためにも欠かせません。
ところが、リケトレ!#5で紹介した「成果創出モデル」では、「知識・スキル・専門性」と「実践的能力」は、別の層として分けられていました。

専門性も実践的能力も大切なのであれば、この2つは何が違うのでしょうか。
まずは、それぞれの意味を整理してみましょう。
<専門性と実践的能力は、何が違う?>
専門性とは、特定の領域や場面で使われる知識や技術のことです。
たとえば、
・橋梁の強度を高める方法についての知識
・高分子を精密に合成する技術
・測定装置を操作し、結果を解析するノウハウ
・ある領域の理論や先行研究についての理解
などが挙げられます。これらは、研究テーマや研究対象と強く結びついています。
一方、実践的能力とは、研究テーマや所属が変わっても、持ち運んで使える力のことです。
たとえば、以下のようなもの。
・現状を整理し、課題を見つける
・仮説を立てる
・計画を立てる
・結果をもとに進め方を修正する
・周囲に相談し、協力を得る
・自分の考えを相手に伝える
ここで、少し考えてみてください。
ある企業の採用担当が、「弊社では、こんな人が活躍しています」と以下のような特徴を挙げたとします。
次のうち、実践的能力に当たるものはどれでしょうか。

正解は・・
①③⑤番です。いかがでしたか。
<専門性と実践的能力、両方をもつ人が活躍する>
専門性と実践的能力の違いは、大学院の研究でも感じることができます。
分野や研究テーマが変われば、必要とされる専門性も変わります。
別の学科や隣の研究室にいる友人と話したときに、お互いの研究内容がほとんど分からなかった経験はないでしょうか。
これは、専門性が特定の領域に深く結びついたものである証左です。
一方で、実践的能力は、場面が変わっても発揮することができ、分野や研究テーマによらない力です。
自分の置かれた状況に合わせて必要な情報を集め、仮説を立て、検証し、周囲に相談しながら、新しい専門性を獲得していく。そして、身につけた専門性を成果につなげる。
その際に使われるのが、実践的能力です。
専門性と実践的能力のどちらかだけでは活躍が難しく、両方をもった人が成果を出していきます。
三木からの一言:
実際の就職活動でも、企業は「専門性」と「実践的能力」の2つの軸で学生を評価しています。
なぜなら、入社後に活躍している社員には、この2軸を兼ね備えている人が多いからです。
そのため、本選考の面接でも、企業は「専門知識や研究内容」と「それを仕事で活かせる力=実践的能力」の両方を見て、採用するかどうかを判断しています。
<実践的能力を意識するのは難しい>
専門性と実践的能力には、他にも大きな違いがあります。
それは、身についているかが分かりやすいかどうかです。
専門性の習熟度合いは、比較的分かりやすいものです。
新しい理論を理解した。扱える装置が増えた。実験や分析の技術が高まった。研究室に入ったばかりの頃には理解できなかった論文が読めるようになった。
専門性が不足していれば、教員や先輩など、周囲から指摘されることも多いでしょう。
一方、実践的能力は、自分に何がどれくらい身についていて、何が足りていないのかが見えにくいものです。
専門知識や実験技術のように、身についたことが明確に示される機会は、あまり多いとは言えません。
そのため、日々の実験やデータを出すことに追われていると、自分がどのような実践的能力を使っているのか意識しないまま、研究生活を続けていくことになるでしょう。
反対に、自分が研究の中で使っている実践的能力に意識して目を向けられれば、日々の研究は、それを伸ばすトレーニングになります。
三木からの一言:
理系院生の面接を聞いていると、多くの学生は研究内容や専門知識については自信を持って話せます。しかし、「その研究を通して、どのような実践的能力を身につけたのか」を説明できる学生は意外と多くありません。
企業が本選考で見ているのは、「専門性」と「実践的能力」の両方です。専門性だけをアピールしても、評価の半分しか伝えられていないと言っても過言ではありません。だからこそ、自分の実践的能力を理解し、面接で具体的に伝えることが重要なのです。
<最後に>
ここまでで、専門性と実践的能力の違いや、研究者として成果を出すために両方必要なことが伝わったかと思います。
その観点を持つと、大学院で研究する意義も少し違って見えてきます。
大学院での研究は、専門性を獲得しつつ、それを成果につなげるために必要な実践的能力を磨いているものと言えます。
ただし、実践的能力は、専門性に比べて身についたことが見えにくいし、専門性よりも自ら意識的に伸ばす必要があります。
そこで、日々の研究に望む姿勢が大事、ということでした。
しかし、そう言われても、実践的能力に当たる要素はいろいろありそうですし、それをどう整理し、何からどう伸ばしていけばいいのでしょう?
次回は、実践的能力の具体的な項目や分類を知り、自分の力を整理するための重要な観点を紹介します。
<今回のリケトレワーク>
最後に、今回の学びを実践に繋げるリケトレ!ワークです。

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