やさしさの裏返し
「やさしいね」と言われるたびに、どこか息が詰まる。
本当は、やさしくなんかない。
嫌われたくなかった。
置いていかれたくなかった。
見捨てられたくなかった。
だから笑って、空気を読んで、気を遣って、
怒られないように、否定されないように。
「いい子」でいようとしてきた。
………気づけば、「やさしい人」になっていた。
でもそれは、
ほんとうに人を思いやってのことだっただろうか?
それとも、ただ自分が怖かっただけなのかもしれない。
本当は、わたしが一番、優しくされたかった。
誰にも気を遣わずに、「わたし」として存在したかった。
大丈夫だよって言ってほしかった。
がんばらなくていいって、言ってほしかった。
だけど、誰も言ってくれなかったから、
代わりにわたしが、誰かに言うようになった。
「大丈夫だよ」って。
「無理しないでね」って。
まるで、それを一番言ってほしかったのが自分じゃなかったみたいに。
「やさしいね」と言われるたびに、
胸の奥がちくりと痛む。
嬉しいはずなのに、どこかでそれが苦しくなる。
それはきっと――
その言葉の裏に隠した「本当のわたし」が泣いている。
わたしはやさしい人じゃない。
やさしさが欲しくて、誰かに気づいてほしくて、
それをやさしさのかたちにして渡していただけ。
でもそれでも、
そのやさしさで、誰かが少しでも救われたなら。
少しでも、あたたかくなった人がいたなら。
たとえそれが裏返しのやさしさでも。
それは、それで、
ちゃんと「やさしさ」だったんだと思いたい。
自分のために始めたやさしさが、
誰かの心に届いていたのなら。
それは、わたしがわたしを許せる理由になる。
*
紫吹はるさん
このたびは、あたたかい感想を届けてくださり、ありがとうございました。
とても幸せな気持ちになりました。本当に、感謝しています。
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「やさしさの裏返し」の後日談エッセイです。
「あのときのわたしへ」の作品とで2作品連作エッセイとなっております。
よろしければ、他の作品も覗いてみてくださいね。
それではまた。
りか
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