⑤『最弱扱いされた俺のギフト《追加ボーナス》、実は仲間も武器も報酬も手に入る最強スキルでした』〜第6章〜
第6章 群れとの死闘
前回の振り返り
ギルドでかつての仲間──ガレスたちと再会したアスラ。
嘲笑と挑発を受けるも、もはや彼は囮ではない。
黒銀の短剣と仲間たちを得たアスラは「群れゴブリン討伐」の依頼を受ける。
夜明けの森で、仲間と共に初めての大きな戦いに臨もうとしていた。
森の奥は、夜明けの薄明かりを遮るほどに暗かった。
湿った土の匂いと、どこか焦げたような臭気が混じり合い、ゴブリンの縄張りであることを告げている。
アスラは短剣を構え、耳を澄ませた。
木々の間から響く甲高い笑い声、錆びた武器のぶつかり合う音。
複数──いや、十を超える気配。
「……来る」
リュカが牙を剥き、低く唸る。
フィルが肩の上で炎を揺らし、森の影を赤く染める。
ミリアが一歩前に出て、淡い光で周囲を照らした。
次の瞬間、茂みをかき分けてゴブリンの群れが雪崩れ込んできた。
十数体。錆びた剣や棍棒を振りかざし、汚らしい叫び声を上げる。
「ギギギッ!」
「人間、殺せ!」
一斉に襲いかかるその光景に、普通の新人冒険者なら恐怖で膝が砕けただろう。
だがアスラは一歩も退かず、短剣を振りかざした。
「リュカ!」
「ワンッ!」
子狼は疾風のように駆け出し、一体の足を噛み砕く。
悲鳴を上げたゴブリンが崩れる隙に、アスラが飛び込み、黒銀の短剣を突き刺した。
「フィル!」
「了解!」
小さな火精霊が宙を舞い、火の粉を広範囲に散らす。
乾いた草が一瞬にして燃え上がり、ゴブリンたちは悲鳴を上げて混乱した。
「ミリア、援護を!」
「承知しました!」
翼を広げたミリアが光の矢を放つ。
矢は夜明けの森を貫き、三体のゴブリンを撃ち倒した。
だが、群れはまだ止まらない。
さらに後方から現れたのは、一回り大きな個体──ゴブリンリーダーだった。
肩には骨でできた装飾をかけ、手には血にまみれた槍を握っている。
「グギャアアアッ!」
その咆哮と共に、群れ全体の士気が一気に上がる。
ゴブリンたちは恐怖を忘れ、狂ったように襲いかかってきた。
アスラは息を荒げながらも、必死に短剣を振るった。
だが数の暴力に押され、腕が痺れ、足が泥に沈む。
「……くそっ」
その時、視界の端に光が舞った。
胸の奥が熱を帯び、カードが浮かび上がる。
《追加ボーナス》
描かれていたのは、黒い鎖と、盾の紋章。
「読め……!」
声に出した瞬間、地面から黒銀の鎖が飛び出し、三体のゴブリンを絡め取った。
さらに腕には小ぶりな盾が現れ、槍の一撃を弾き返す。
「これが……!」

仲間を守るための力。
攻撃だけでなく、防御の力すら与えるのが《追加ボーナス》だった。
「行け! 今だ!」
アスラの叫びに応え、リュカが噛みつき、フィルが炎を放ち、ミリアの矢が群れを貫く。
黒銀の短剣が閃き、ゴブリンリーダーの喉を突いた。
巨体が崩れ落ちると同時に、群れ全体の動きが止まった。
残った数体は怯えて逃げ去り、森に静寂が戻った。
「……勝った」
アスラは泥に膝をつき、荒い呼吸を整えた。
リュカが寄り添い、フィルが小さな手で肩を叩く。
ミリアが微笑み、羽根でそっと汗を拭った。
「主君……あなたは確かに最弱ではありません。
そして《追加ボーナス》は、まだその力のほんの一端しか示していません」
アスラは短剣を握りしめた。
その刃は戦いの熱を帯びながら、確かに未来を照らしていた。
あとがき(第6章)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第6章では、アスラが初めて「群れ」との戦闘に挑みました。
かつては逃げるしかなかった彼が、仲間と力を合わせ、リーダーを討ち取る。
《追加ボーナス》は攻撃だけでなく、防御や拘束といった新たな力まで示しました。
物語はここで大きな分岐点を迎えます。
最弱と呼ばれた少年が、確実に「冒険者」としての道を歩み始めたのです。
しかし、噂はさらに街中に広がり、妬みや敵意を呼び寄せることになります。
次章では、アスラに忍び寄る「敵意」と「陰謀」が描かれます。
次回、第7章「妬みの影」。
どうぞお楽しみに!
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