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『鬱病という深い闇を生きる』第3話



第3話

本当に欲しかった言葉は、

言葉じゃなかったかもしれない。




“言葉”って、不思議だ。

心を救うときもあれば、
深く傷つけることもある。
でも、鬱の真っ只中にいたとき──
私には、どんな言葉も届かなかった。

いや、届くどころか、すべてが“音”にしか聞こえなかった。
「大丈夫?」も、「また連絡するね」も、
「いつでも話聞くよ」も──

どこか遠くで、ただ鳴っているだけの“雑音”だった。



“ちゃんと聴くよ”って言われても、
心の奥底では思っていた。

「どうせ分かんないでしょ」
「共感なんかできないくせに」
「優しさのフリは、もう疲れるからやめてよ」って。

だけど──
誰かのせいじゃなかった。
信じられない私が、もう、壊れていたんだ。



ある日、
私は一言も発さずに、病院のベンチに座っていた。
受付の人が、私に話しかけた。
「今日はお天気ですね」
それだけの、どうでもいい一言だった。

でも、心が、ほんの少しだけ動いた。
「あ……“病人”としてじゃなく、ただの人として話しかけてくれたんだ」って。

それが、やけに嬉しかった。



気づいたんだ。
私が欲しかったのは、“正しい言葉”じゃない。
“治すためのアドバイス”でもない。


ただ、そこにいてくれること。
何も言わず、ただ黙って、隣にいてくれること。
それが、どれほど大きな救いになるか。



あの日──
家族が黙って隣に座ってくれた。
スマホも見ず、話しかけもせず、ただ静かに。

それだけで、
「私、ここにいていいのかもしれない」って思えた。

言葉じゃないんだ。
温度だった。
気配だった。
存在そのものだったんだ。



もし今、
誰かが「何を言えばいいのか分からない」と悩んでいるなら──

言葉じゃなくて、その“迷い”そのものが優しさだと思う。
分かろうとしてくれる、寄り添おうとしてくれる、
その“気持ち”が、たしかに伝わることがある。




🔻第4話に続く

治療という戦い──薬と副作用と向き合う日々



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