よねさんと妖精🧚〜一億円の小切手とシャンパンゴールドの奇跡〜【プロローグ】
──これは、どこか遠く。
けれど、あなたのすぐ隣にもあるのかもしれない。
そんな、小さな奇跡の物語。
あたたかな陽だまりが、縁側をやさしく包んでいた。
一人の老婆が柱にもたれかかり、小さく「コテン」と頭を預ける。

その顔には、長い人生を生き抜いた者だけが浮かべられる、穏やかな笑みがあった。
その姿を、一人の若い女性が涙ぐみながら見つめている。
「……今まで、本当にありがとう」
サワッ
風に乗る震えた声が
そよ風に溶けていく。
すると、黒いタキシードを纏った青年が、静かに女性へ手を差し伸べた。
「さあ、行こうか。……長らく待たせてしまったね」
その瞬間。
純白のウェディングドレスを纏った女性は目を見開き、
堪えていた涙を溢れさせながら青年の胸へ飛び込んだ。
青年もまた、泣き出しそうな笑顔で彼女を優しく抱きしめる。
やがて──
パカパカ、と軽やかな蹄の音が響き始めた。
白馬に引かれた純白の馬車が、雲海を切り裂くように夜空へ駆け上がっていく。
車輪が巻き上げるのは、シャンパンゴールドに輝く無数の星屑。

「うわぁぁ……綺麗っ……!」
女性は少女のように瞳を輝かせた。
御者台では、麦わら帽子をかぶったカカシが見事な手綱さばきで白馬を操っている。
その肩には、金色の羽を持つ小さな妖精。
胸を張り、誇らしげに行き先を指差していた。
隣に座る青年が、そっと尋ねる。
「楽しかったかい?」
女性は目尻に涙を浮かべ、大きく頷いた。
「そりゃあ、もう!」

シャンパンゴールドの光を降らせながら、白い馬車は眩い輝きの中へ消えていった。
誰もが、そんな美しく切ない伝説の始まりを予感した。
──……ハズだった。
「すー……すー……」
穏やかな寝息が聞こえる。
舞台は再び、陽だまりの縁側。
柱にもたれかかっていたお婆さんは、口を少し開けたまま、実に気持ちよさそうに居眠りをしていた。
店内には、懐かしい駄菓子や日用品、古びた道具がところ狭しと並んでいる。
一見すると、どこにでもある小さな商店。
けれど、ときおり訪れる訳ありの客人たちが、いったい何を買いに来ているのか──
近所の誰一人として知らない。
そう。
ここは、知る人ぞ知る不思議な店。
『よね店』
今日もまた、誰かが小さな
奇跡を買いにやって来る。
(つづく)
🌸次回予告
【第1話】
一億円の小切手と胃袋の作戦会議。
駆け込んできた男が差し出したのは──
本物の一億円。
「行方不明の娘を探してくれ!」
よねさんが差し出したのは、たった一粒の飴玉だった。
『好きにしな』
半信半疑で口に放り込んだ、その瞬間──
男の胃袋の中で、小さな笛が鳴り響く。
一億円の依頼人を救うのは──胃袋に住む妖精たち!?
(第1話へつづく)
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