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地球での重力感覚は、地表からの抗力の加速を感じているに過ぎない。

子供の頃に一般相対性理論を一般向け科学雑誌で知ったとき、大きな衝撃を受けました。もちろん当時はその数式を丁寧に追いかけることはできませんでしたが、物体の重さで時空が曲がり、それが重力を生み出しているというアインシュタインの考え方は、若い私にも、とても魅力的に思えたのでした。

アインシュタインは、自身で実験や観測もせずに、いくつかの自然な仮定だけから、ノートと鉛筆を使った計算だけで一般相対性理論を完成させました。その仮定で一番重要だったのが、「等価原理」です。

地球上に立っている我々は重力を感じますが、上空で自由落下する人々はその重力を感じません。むしろ宇宙空間をふわふわと漂うような感じがします。アインシュタインはこれを深く捉えて、実は自由落下する観測者にとって、地球の重力は存在していないと考えたのです。つまり重力は観測者の運動によって、消去できるものだとしました。また将来の大型宇宙ステーションでは、その自転運動で内部に人工重力を生み出します。アインシュタインの観点では、この人工重力も、本物の重力と区別がない等価なものだとしたのです。これが等価原理です。この原理を用いて、アインシュタインは重力の理論としての一般相対性理論を完成させたのです。

ただこの話を知ったとき、若い私の中には何か釈然しないものが残りました。宇宙ステーションの人工重力はわかりやすいけれど、実際の地球の重力の場合には地面があり、そこに静止している我々には加速運動をしている実感がないなと思ったのです。丸い地球の上で、日本に居る人間と真裏のブラジルに居る人間の距離は一定です。普通の加速をしていたら、その二人の間の距離はどんどんと離れていくはずです。しかし、実際にはそうなりません。当時の若い私には、何か腹落ちしないものが残りました。

しかし、一般相対性理論をきちんと学んだ今では、確かに瞬間瞬間、我々は加速し続けているということを理解しています。若い私の直感に合わなかったのは、まだ平坦な時空のイメージに固執していたためでした。たとえば、平坦な時空中に2つの電子を用意します。すると電気的なクーロン力によって、その2つは互いに反発します。これによって図1のように加速度を得て、速度も変わり、時間とともに2つの電子の間の距離は長くなります。

図1:平坦な時空中の2つの電子の加速運動

ところが、一般相対性理論が教えることは、重い地球が時空を曲げているという事実です。下記記事にもあるように、時空自体が曲がると、真っ直ぐ運動する粒子の軌道も、全体としては曲がって見えるのです。

地球にある電子でも、それは同様です。もし電子が電荷を持たなければ、電子は地球中心へとどんどん進んでしまいます。これはニュートン力学では、重力が作用して起きた落下と捉えますが、一般相対性理論では違います。等価原理から、この電子にとって重力は存在せず、電子は何も力が掛かっていない運動をしているのです。加速度運動は、電子に固定された座標系では起きていません。

実際には電子には電荷があり、地球を作っている電子や原子核からくる電気的な反発力、つまり抗力が働きます。そして地表に電子を止めることもできます。でも実は、地表によるその抗力が電子を加速させている状況なのです。図2のように、この抗力による加速を、「重力」によるものと勘違いしているだけなのです。

図2

地表の抗力があっても、日本とブラジルに置かれて、加速しているはずの電子の距離が変化しないのは、その時空が曲がっているからです。2つの電子は地表から押されて、絶えず加速を続けているのですが、地球によって時空が曲げられているために、全体としての2つの電子間の距離には変化がなかったのです。このようなことを正確に理解できることも、物理を学ぶ楽しみの1つです。

ただ、ここでの電気力も、高次元重力の一般相対論から導くことが可能なのは重要な視点です。

電磁場のゲージポテンシャルは、高次元重力場の計量テンソルの一部として記述が可能なのです。すると、上で述べた4次元時空としてのブラックホールでの、粒子の重力と電気力の拮抗の話も、高次元時空の一般相対性理論では統一的に書けてしまいますし、また重力がそうであったように、電磁気力も時空の幾何を起源にしていることにもなります。このような見方も、地上に立って重力を感じている我々にとって、とても重要なことなのです。


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