POTATO BUSINESS SCHOOL-June 2025 最終回 貯蔵・市場視察編
カルビーポテトは2025年6月中旬、オランダのポテトビジネススクールに3人の社員を派遣しました。このスクールは、世界のばれいしょ産業関係者に実用的な知識を提供する場として毎年6月と9月に開講されているものです。ここでは、4日間のスタンダードコースに加え、市場視察の内容を3回に分けて取り上げます。
入庫中の品温が11℃、17℃、18℃の状態はどうする?
貯蔵から説明します。
案内人を務めたヨハンさんが在籍するTOLSMA GRISNICHは、貯蔵技術を主としたオランダの企業です。TOLSMA社がGRISNICH社を傘下に収め、両社の事業を統合して誕生しました。農産物加工の自動化や効率化を得意としています。
当社との関連では、北海道の更別支所や芽室支所坂の上、幕別支所に同社製の貯蔵設備があります。「ビジョンコントロール」という制御装置や冷凍システム、送風機などを導入しています。
ヨハンさんはまず、貯蔵に関する歴史と原理・原則を次のように解説してくれました。
「昔は、バラ積みのばれいしょの上にわらを敷き、その上からシートを被せて重しを置いて管理していました。そこから貯蔵の歴史がスタートしたんですね。
ばれいしょの減耗は、菌類、細菌、脱水、呼吸の四つの要素で起こります。もちろん、温度と相対湿度も大きく影響しますね。これらの条件をすべて踏まえたうえで設計されているのが当社の貯蔵設備です。
ここで問題です。貯蔵庫にばれいしょが次々と入庫されているとします。品温は奥から11℃、17℃、18℃です。このとき、どういうオペレーションが適切でしょうか?
答えは、吸気口を閉じ、扉を一定程度開放した状態で(ヒーターは15℃設定)、送風機を稼働させることで倉庫内での循環を行なうというものです。つまり、品温の差をなくすことが重要になります」
工場では手作業で組み立て
次は工場見学です。
てっきり製造が自動化されていると思っていましたが、まったく違いました。ラインごとに職人が立ち、手作業で一つずつ組み立てていました。さながら町工場のようです。送風機1台を造るにしましても完成まで非常に時間がかかり、予約が数カ月先まで埋まっていると話していました。
送風の効率化と換気の最適化に「エアカーテン」
最後はユーザーのジョンゲさんの倉庫を視察しました。
1棟が4部屋に分かれた倉庫の内訳は、ばれいしょのバラ貯蔵、タマネギのバラ貯蔵、ばれいしょの冷蔵用コンテナ貯蔵、タマネギの乾燥用コンテナ貯蔵になります。1部屋の容量は750~1,000tのため、貯蔵能力としては3,000tを超える計算です。

コンテナ貯蔵の管理手法は大いに参考になりました。送風の効率化と換気の最適化が実現していたからです。
木箱を2列ペアで積み重ね、隣のペアとの間に緑色の「エアカーテン」(写真)というものが垂れ下がっています。

送風機を回す際、そのエアカーテンをポンプで膨張させることで2列ごとに密封状態を作り出します。これによって2列ごとに細かく送風管理することで適切な空気の循環を行なうことができるのです。当社の仕組みとは違うこともあり、興味を持ちました。
スーパーで生食用がキロ120円
市場視察は2カ所を訪問しました。
一つは、「Albert Heijn」(アルバートハイン)というオランダ最大のスーパーマーケットチェーンです。国内に約700店舗を運営しており、売上高のシェアは3割程度だそうです。
もう一方の「JUMBO」(ユンボ)は約400店舗展開の国内No.2スーパーマーケットです。特徴として割引の禁止やタンパク質を植物由来のものへ変更していくといった社会的問題への取り組みが消費者に支持されています。
小売店をくまなく歩くことで、その国の独自性やこだわりが見えて非常におもしろいです。
加工品のうち、ポテトチップの棚は10~15段が主流でした。アイテム数にして120品ほどです。日本での棚は標準的に5段、多くて10段前後と、倍近い品ぞろえであることがわかります。ポテトチップのほか、コーンスナックの品ぞろえも多く、米国の売り場に似ていることも特徴的でした。
生食用については10~15アイテムで、袋入りで大容量、安価、品種の記載が少ないといった特徴がありました。2~3kgの容量ながら日本円で300円(キロ120円)とかでしたのでとても安いです。また、日本のような品種売りはなく、消費者が用途で選ぶスタイルが浸透しているようでした。

所感
①かん水の目的は塩害回避
オランダでは、6~7月の日照時間が長く、光合成のための良好な環境が整っています。かん水も含めて条件が良ければ、反収が5tは取れるそうです。
スクールの開催地であるエメロールトの圃場には石灰の微細なくずが散乱しているようなところがあり、聞くと土壌pHは7.0以上とのことでした。海水や貝殻といった干拓地の影響を色濃く受けたものです。
当地ではかん水が盛んですが、その目的は主に塩害の回避です。かん水しないと、地下水として海由来の塩水が上がってきて塩害が発生してしまいます。ちなみに、エメロールトから離れた普通の農地ではかん水設備が未整備だそうです。
②コントラクターに全委託の生産者も
エメロールトではコントラクターの仕組みが整っており、収穫だけではなく、播種から防除も業者が代行していました。なかには作業工程すべてを委託する生産者もいるようです。
コントラクターに費用がかかっても、農業従事者に対して1戸当たりの経営面積が非常に大きいため、量でカバーしているのがオランダの経営スタイルだと認識しました。日本との規模感の違いに大きく驚かされました。
③“選択”が経営者である生産者の使命
オランダの生産者は、AGRICO社のような育種兼販売会社が世界各国のバイヤーのニーズを受けて開発した品種を選択しており、売り先も一緒であるケースが多いです。出口戦略がしっかりとしており、栽培から販売に至るまでロスがないに等しいと考えられます。買い手市場主義といえるかもしれません。
ただ、生産者の独自性があまり感じられず、品種や出荷先、コントラクター業者といった会社選びにだけ終始している印象を持ちました。責任の所在ははっきりとしており、経営判断を含め、自身が関与する部分を全うするイメージです。品質が価格に反映される構造のため、高品質生産に向けてどうマネジメントするのかが生産者に課された使命なのだと思います。(おわり)
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