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POTATO BUSINESS SCHOOL-June 2025 第1回 栽培・概要編

カルビーポテトは2025年6月中旬、オランダのポテトビジネススクールに3人の社員を派遣しました。このスクールは、世界のばれいしょ産業関係者に実用的な知識を提供する場として毎年6月と9月に開講されているものです。ここでは、4日間のスタンダードコースに加え、市場視察の内容を3回に分けて取り上げます。


北海道の半分の国土面積で
ばれいしょを600万~700万t生産

初めにオランダの概要です。

国土面積は北海道の半分くらいになり、約2割が干拓地とされます。緯度は北海道よりも高く、我々が滞在した6月中旬の日の入りは21~22時台でした。

農地面積は、日本の440万haに対してオランダは180万haです。これを国土との対比で見ますと、日本の農地は国土の十数%に過ぎませんが、オランダはなんと国土の半分近くが農地になります。地域や経営類型にもよりますが、オランダでは1戸当たり100~150ha規模で経営する生産者も多いようです。

ばれいしょの作付面積は、日本は7万ha程度ですが、オランダは16万haに達します。生産量は、日本が230万t前後のところ、オランダは600万~700万tにも及びます。

気象データをざっと見みますと、オランダは夏場が涼しくて冬場は暖かく、曇天と小雨が多い傾向にあります。年間を通じて安定した気候といえそうです。

オランダは、EUトップクラスの種イモの生産国であり、アフリカや中東、アジアなどに輸出しています。そうした事情からも、今回の講習では種イモの内容が結構多かった印象です。

スクールの講習は、育種、農薬・肥料、検査などの各分野に携わる協力企業・団体が担当

ポテトビジネススクールにはばれいしょ関連の企業や団体がパートナーとして参画しており、それぞれの専門分野の講習を担当していました。概要は以下のとおりです。

【ばれいしょの育種、種イモ生産、流通・販売を一貫して手がける事業】
AGRICO
TPC
STET
Solana

【農業機械の開発・販売事業】
GRIMME

【農薬・肥料販売事業】
profytodsd

【農作物の種子や種イモの法定検査を実施する一般検査機関】
NAK

【農産物の収穫後処理機械や貯蔵設備の開発・販売事業】
TOLSMA GRISNICH

農薬販売と連動した防除コントラクター

profytodsd社の本業は農薬と肥料の販売です。防除コントラクター業務や生産者への指導も手がけていますが、これらは農薬等の販売促進の側面が強く、業務自体では基本的に利益は求めていないと説明していました。

防除コントラクター事業が成り立つ理由として、農薬を含む環境規制の強化を挙げていました。生産者が煩雑な規制対応の負担を軽減するため、外部委託に活路を見いだした結果によるものだそうです。同社では最新のスプレイヤーを駆使し、受託面積は年間2万5,000haにも上るそうです。

ちょうど講習を受けていたとき、講師の部下が誤って農薬を散布してしまったという連絡が入りました。ただ、講師は比較的冷静で、その後は保険会社が対応するとのことでした。

限られた農薬から構成される防除プログラム

同社の疫病の防除プログラムは表1のとおりです。

表1:profytodsd社の疫病防除プログラム

日本で流通する薬剤と名称が同じだったり、似ていたりしても、成分含有量が異なる場合がありますので参考程度にとどめてください。防除回数は14回と、当社の指導とさほど変わりません。薬剤ごとに散布タイミングが色付けされており、黄緑色は推奨、クリーム色は条件次第、赤色は回避を意味しています。

環境規制との関係で、マンゼブ系殺菌剤は水環境への影響などが懸念されることから使用が禁止されているほか、ネオニコチノイド系殺虫剤や一部のセンチュウ剤についても、使用が禁止、または厳しく制限されているとのことでした。

そのため、防除プログラムは、使用可能な薬剤から選択して構成されています。その代替手段としてバイオ農薬や天然抽出物の活用も進められています。ニンニク抽出液によるセンチュウ防除もその一例ですが、効果の面では化学農薬のほうが高いとのことでした。

かん水が一般化

50tのばれいしょを収穫するには、多くの水が必要だと説明していました。具体的には、降雨とかん水で栽培期間中に350~400ミリリットルの水分が必要になるとのことでした。

そのかん水ですが、オランダでは国中で対応可能なわけではありません。ただ、設備のあるところでは一般的な作業として生産者自身が行なっているようです。

窒素は3分割、カリは2分割施肥を推奨

施肥の講習ではまず、NPKのha当たり要素施用量が示されました。オランダでは、窒素を250kg、リン酸を60kg、カリを300~350kgをベースにアドバイスするそうです。品種との兼ね合いもあってか多い印象を受けましたが、当社や日本国内で教わってきた概念とおおむね相違ないと感じました。

 植物全体や塊茎の主要栄養素の1日当たり吸収量では、生育初期から中期に求められる要素であっても個々に差異があり、それも踏まえた施肥の必要性が説かれました。施肥にも元肥、液肥、ブロードキャスター、葉面散布といろいろな方法がありますが、その選択に際しては要素によって根の吸収可能範囲の違いを理解すべきとのことでした。たとえば、リン酸は数ある要素のなかでもその範囲が最も狭いため、根元に施用しなければ効果が得られにくいとのことでした。

NPKについては、個別に施肥のタイミングに関する解説がありました。

窒素:元肥、生育初期、開花期に3分割で分肥
リン酸:元肥一発
カリ:元肥と開花期に2分割で分肥

カリの分肥は以前、当社の豪州・タスマニアでの研修報告でも耳にしたことがありました。

肥料の種類別販売状況で最も多いのが粒状タイプになり、以下、葉面散布剤(20%)、土壌改良材(10%)、液肥(7%)の順序でした。液肥は日本ではなじみがありませんが、トラクターのフロント作業機の機上にタンクを装着し、土壌に注入する実例が紹介されました。

また、オランダでは「アロエエキス」なるものが流行しているそうです。生育促進や塊茎数の増加などに効果があるとされ、講師も熱心に紹介していました。

生産者の企業指導への信頼

冒頭で、AGRICO社などの民間企業が、ばれいしょの育種、種イモ生産、流通・販売を一貫して手がけていると述べました。個々に市場から求められている品種を開発し、競合他社としのぎを削っています。そのため、品種に競争力があり、生産者からすればいくつもの選択肢がある状況です。

オランダでは生産者は企業からの指導を比較的素直に受け入れている印象でした。育種会社に限らず、企業は大学などから最新の情報収集を行なっていることもあり、生産者は企業こそ最も詳しいとばかりに信頼を寄せています。指導内容や取引条件が合わなければ、他社に切り替えることも可能であり、そうした競争環境が企業側の指導力向上にもつながっているように感じました。

スクールでは、ここで触れた農薬や肥料以外にも多くのことを学びましたが、これまで当社で培ってきた知識とそんなに相違ないことがわかりました。昨今の気候変動に絡んで栽培面での対処法を聞きましたが、特段目新しい内容はあまりなく、むしろ品種で対応を図っているとのことでした。可変施肥は現在テスト中で、衛星画像などとリンクさせるまでには至っておらず、実用化にはまだ時間を要するようです。(つづく)

障害のある塊茎をアルコールに浸し、半年ほど保管するそうです。

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