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マンガ業界ではほとんど誰も気にしてない。“2025年問題”とクリエイターの人件費増加の話

はじめに

「2025年問題」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、団塊の世代が全員75歳以上となり、高齢者人口が急増することで医療・介護などの社会保障費が一気に膨らむ問題を指します。

ニュースや行政の資料ではよく取り上げられるテーマですが、実は我々クリエイター業界や小規模事業者の現場では、あまり話題にすらなっていません

しかし、この問題は私たちにとって「静かに進行するコスト爆弾」です。特に「人件費」「社会保険料」「国民健康保険」の形で、見えづらいコストが確実に上昇する構造になっているのです。



Chapter1|「2025年問題」とは何か

2025年、日本では団塊の世代(1947~49年生まれ)がすべて75歳以上になります。これはつまり、以下のような社会構造の変化を意味します:

  • 後期高齢者(75歳以上)の人口が激増

  • 医療・介護サービスの需要が急増

  • それを支えるための公的保険料・税負担が現役世代にのしかかる

この問題は**「財政の問題」ではなく「労働コストに直結する問題」です。なぜなら、社会保障費の大部分は社会保険料として企業と個人が直接負担**するからです。

国が払ってくれるわけではなく、企業と個人が“折半で支える”構造。

そして、この「折半」が意味するのは、企業にとっての実質的な人件費増であり、個人にとっての手取り減少です。

Chapter2|人件費の本当の“見えない増税”

2025年問題がもたらす影響の一つに、社会保険料の増加による人件費の上昇があります。これは、企業や個人事業主にとって、見えにくい形での「増税」とも言えるでしょう。

社会保険料の仕組みと負担の増加

社会保険料は、労使折半で支払われるため、従業員の給与が上がらなくても、企業側の負担は増加します。特に、2025年以降は高齢化の進行に伴い、医療・介護費用が増大し、それに伴って健康保険料や介護保険料の引き上げが予想されています。

実際に、2025年度から国民健康保険料の年間上限額が3万円引き上げられ、92万円となることが決定しています。これは厚生労働省が保険財政の改善を目的として実施するもので、現行の89万円からの増額となります。

外注依存のリスク

多くの企業がコスト削減のために外注を活用していますが、外注先のフリーランスや個人事業主もまた、国民健康保険料の増加という形で負担を強いられます。これにより、外注費の見直しや契約条件の再検討が必要となる可能性があります。

さらに、外注先の負担増加は、業務品質や納期に影響を及ぼす可能性があり、結果として企業全体の生産性や競争力に悪影響を及ぼすことも考えられます。

価格転嫁の難しさ

社会保険料の増加によるコスト上昇を製品やサービスの価格に転嫁することは、多くの業界で難しい課題です。特に、価格競争が激しい業界や、消費者の価格感度が高い市場では、価格の引き上げが顧客離れにつながるリスクがあります。

そのため、企業は内部のコスト削減や業務効率化を進める必要がありますが、それにも限界があり、結果として利益率の低下や事業の継続性に影響を及ぼす可能性があります。

Chapter3|それでも価格転嫁できない業界

社会保険料の上昇は、理屈としては「価格に転嫁すればいい話」に見えるかもしれません。実際、大企業や製造業などでは徐々に取引価格の見直しが進められています。

しかし、私たちクリエイター業界やエンタメ業界は、その“価格転嫁”が極めて困難な業界です。


「安くて当たり前」の構造

Webtoon、同人、イラスト制作、動画編集など――これらの仕事の多くは**“価格が最初に決まっている”**か、プラットフォームによって相場が固定化されている構造です。
たとえば:

  • 単価:1ページ○円、1カット○円

  • 原稿料:雑誌連載なら据え置き、再交渉しづらい

  • イラスト:Skebなどで価格競争が起きやすい

こうした構造では、社会保険料が上がったからといって、クライアントに追加請求できる余地はほとんどありません。そのため、実質的な「可処分所得」が減るだけになります。


価格を上げると仕事が来なくなる

個人クリエイターが「来年からは値上げします」と言えば、別の安い人に乗り換えられる可能性が非常に高い世界です。
つまり、「値上げ」という選択肢自体が封じられているような状況。これはすなわち、インフレの影響をまともに受けながら、収入だけが据え置き、もしくは実質減少する状態です。


元請けが値上げできなければ、末端にしわ寄せが来る

仮に出版社・制作会社・動画会社などの元請け側が赤字でも、「発注額を据え置いて外注費だけは削りたい」となれば、
一番搾られるのは「末端の外注クリエイター」です。

  • 社会保険料の増加

  • 電気代、通信費、食費などのインフレ

  • でも、ギャラは変わらない

このような状態で、作業効率やクオリティを維持できるはずがありません。

Chapter4|じわじわと効いてくる“国保の裏側”

フリーランスや個人事業主の多くが加入している**国民健康保険(国保)**ですが、これも高齢化の影響を強く受ける制度です。

国保は:

  • 所得が上がると保険料も連動して上がる

  • 扶養の概念がないため、家族が多いと保険料が高くなる

  • 自治体ごとに保険料水準が異なる(引越しで差が出る)

加えて、75歳以上の後期高齢者医療制度は、国保加入者からの拠出によって支えられています。
つまり、「国保に加入している現役世代」が、急増する後期高齢者の医療費を支えるメイン財源ということです。

そのため、クリエイター業界のように「国保率の高い業種」は、影響を最も受けやすいのです。

Chapter5|今後の対応:企業・個人ができること

現在すでに赤字の企業・業界では、2025年以降、人件費という形でジワジワと支出が増え続ける地獄のフェーズに突入します。

外注依存モデルのまま突き進めば、下請け側にさらなる負担がのしかかる一方で、受け手側もそれに耐えられずに離脱していく。
結果的に**「安く使い倒す構造」自体が維持できなくなる**可能性が高いのです。


対応策①|企業は“未来設計ありき”で組織構築を

  • 一時的な赤字でも、将来的に利益が生まれる構造を持っているか

  • 社会保険料の増加分をどこで吸収できるか

  • 外注への支払いを「値切り」でなく、「付加価値と再投資」で伸ばせるか

ここができない企業は、長期的には採用・協業・取引のすべてにおいて信頼を失っていきます。


対応策②|個人は“数字”と“契約”を見よう

  • 継続依頼される内容に見合う対価かどうか

  • 相場に見えている金額が、「手取り換算で実質減」になっていないか

  • 税や社会保険料を考慮した上での可処分所得ベースで見直しを

「単価は変わってないけど、何となく生活が苦しくなってきた」
これはインフレ×社会保険料増×実質手取り減の三重苦のサインです。


🔚まとめ(結語)

2025年問題は、テレビで語られるような「社会全体の話」ではありません。
今、仕事を請けているクリエイターや、これから事業を拡大しようとしている企業にとって“直撃する現実”です。

なので――
現在赤字のところはさらに人件費がかさみ、外注も負担が増える。
そのため値上げもほとんどできない。

だからこそ、企業選びは慎重に。
構造的に詰んでいるところと、未来を見据えて設計しているところとでは、2年後には天と地の差が出てくるでしょう。

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