神話物語 | 霧の女⑤
前話はこちら(↓)

「あなたは昨日図書館で見かけた方ですよね」
「そうですよ。図書館員のフリをしていただけですが」
この女の目的はなんなのだ?
「あなたが『霧の女』の正体なのですか?図書館に伝言を投函したのもあなたですよね」
そういうと、女は怪訝そうな表情を浮かべた。
「私は『霧の女』でもなければ、その伝言のことも存じ上げません」
「では、なんのために図書館員のフリをして私に近づいたのですか?」
女はアッサリとこう答えた。
「ただ、なんとなくですよ」
「なんとなく?なんとなくとは?」
「文字通りの意味ですよ。なんとなく、です。私は以前、この街にも『霧の女』が現れたという噂を聞きました。私は信じてはいませんが、面白そうでしょう?だから、霧の女に成りきって遊んだだけです」

「遊びにしては念入りじゃありませんか?そんなことをやって、何が楽しいんですか?」
ふふふ、女は突然笑い出した。
「そうやってあなたのように、都市伝説的な話に熱心にのめり込む人がいるのが楽しいんですよ。だって『霧の女』なんて本当にいると思いますか?」
女はだんだん私を嘲笑するような口調になっていった。
「私は疑問を抱えつつも、『霧の女』はいると信じています。確実に存在することを確かめるために、調査をつづけているんです」
「そうですか。私もいると思いますよ。あなたの言う意味合いとは違いますけどね」
「違う意味合いとは、どういう意味ですか?」
「私は、『霧の女』というのは、サンタクロース的な意味ではいると思っています。サンタクロースという人間はいません。あえて言えば、一人一人のお父さんがサンタクロースです。サンタクロースは表象に過ぎませんが、実在していると言えば実在していると言えます。それと同じで、『霧の女』というリアルな肉体を持った女などいないということです。いるのは、『霧の女』という表象だけです。では、私はこれで失礼します」
「ちょっと待ってくれ!!」
私に背を向けて歩き出した女の腕をつかもうとして私は叫んだ。
しかし、私の手は空しく青い霧をつかんだだけだった。確かに女がいた場所にあったは、ただ青白く輝く虚空だけだった。
…つづく
第6話はこちら(↓)

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