運慶仏をつくる【第15話】 繧繝彩色をあきらめて
「海住山寺風彩色」に塗りなおしたもうひとつの理由
2体目の持国天像のキットを「復元彩色」で塗ってみたところ、原色があまりにも強烈で、仏像としてはちょっと違和感があった。
そこで造立直後の「復元彩色」ではなく、ほどよく彩色が落ちついた「海住山寺彩色」(海住山寺の四天王像のように彩色がよく残っている状態)に塗りなおすことにして、とりあえずお顔だけ試してみたところなかなかよさそうな雰囲気になったというのが、前回までの話。
じつは、塗り直しを決めた理由は、仏像としての違和感だけではなかった。
雲霓彩色と呼ばれるグラデーション状の精緻な模様に怖気づいたからだ。

実際にどのように描かれているかというと、以前紹介した東京藝術大学の文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室(ほとけ様研究室)の東大寺法華堂執金剛神立像・復元彩色(完全復元プロジェクト)の活動報告の画像がわかりやすい。
繧繝彩色や截金などによる細密表現に圧倒されてしまう。
「復元彩色」で仕上げるとなれば、こんな細かな文様を甲冑や衣装のあちこちにびっちりと描きこんでいくことになる。
さすがに筆者の技量では難しい。
「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……」と呟いてはみたものの、やはりムリなものはムリだ。
逃げるしかない。
そんなわけで、1回目の筆塗りがざっと終わった段階で「復元彩色」の再現はあきらめて、プランBの「海住山寺風彩色」に切り替えたというわけだ。
海住山寺の四天王像は彩色がよくのこってはいるものの、長い年月を経て白っぽく褪色したり、彩色が落ちたりしている部分は多く、文様もほとんど消えている。きれいに仕上げる必要はないというか、いいかげんな退色表現でごまかせる。気持ちはだいぶ楽になる。
しかも、全体に彩度が落ちて原色特有のぎらつき感もなくなって、仏像らしくないという違和感も解消されるはずだ。
さっそく図録 *1 を引っ張りだし、海住山寺の持国天像の画像を見ながら色を重ねていった。
ただ、海住山寺の持国天像は、キットとは甲冑などの意匠が異なっているため、現状の持国天像の彩色そのままというわけにはいかない。執金剛神像の完全復元プロジェクトの画像などを参考にしつつ、あとは想像力で補いながら自由に塗っていった。
現状はこんな感じ。

剥落跡のような白っぽい部分が目立つので、そのあたりを強調したつもりなのだが、どうだろうか。
さらに繧繝彩色や截金などの文様がところどころに残っているので、その再現を目指すために"秘密兵器"をネットで注文した。
次回は、この"新兵器"を使って甲冑や衣装の文様を描いていくことにしよう。
*1 『 特別展 みほとけのかたち -仏像に会う-』(展覧会図録)奈良国立博物館、2013年、63p。および『興福寺中金堂再建記念特別展 運慶』(展覧会図録)東京国立博物館、2017年、196p。
【第16話】文様をそれなりに描きこむ につづく
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【第1話】まずは「持国天古色彩色」の修復を にもどる
