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運慶仏をつくる【第2話】 やはり玉眼でいこう

【実物は彫眼だが、キットは玉眼のまま修復したい】

東京国立博物館の特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」を記念して、海洋堂の「四天王像 持国天」(ノンスケール)を完成させるという話の続き。

修復に失敗し、真っ赤になってしまった両眼の白目を、なんとか白というか透明に戻そうとしたのだが、どうにもうまくいかない。溶剤で拭き取ったり、リューターで軽くさらったりしても赤いままなのだ。

LEDを点灯させたキット造立時の持国天(左)と、第一次修復に失敗して赤目になってしまった持国天(右)。
仮組みしただけの海洋堂の持国天。なんとも見事なモールドで、無塗装のまま飾っておけるほどだが、古美術ファンとしてはともかく、モデラーとしてはそうはいかないだろう。

気分転換でもしようと、久々にLEDを点灯させてみると、なんと白目がちゃんと白く輝いている。
ああ、そうか。
眼球全体が赤に見えたのは、眼球の黒目の部分をいったん赤色で塗ったため、その赤色が透過もしくは反射していたのだろう。

ということなら対策も立てられそうだ。
さぁ、第二次修復だ。

まずは、玉眼がわりに埋め込んだ透明プラの周りに、アクリジョンの白(光沢)をちょとずつ流し込んでみた。塗りつぶしてしまったとしても、実物は彫眼なのだからと腹をくくった。電源を入れたときに、うっすらとでも光ってくれれば御の字だ。
これはうまくいき、眼球全体が赤色に見えることはなくなった。

次の試練が、黒目の塗装だ。
赤い輪郭の真ん中に黒目を描くのだが、眼球の中央に直径1mmほどの黒円をきれいにまるく描くのは厳しい。
フィギュアの制作記事を読むと、目の塗装に苦労しているモデラーは少なくない。なかには1/35の兵隊さんにリアルな眼を描いている超絶技巧の作例も見かけるが、筆者にはムリな相談だ。
キットを造立したときも、中心を外したり、ゆがんだ楕円になったりと、何度も描き直してある程度のところで妥協したのだが、今回もなかなかうまくいかない。

面相筆で塗るのはあきらめ、0.3mmの油性ペンも試してみたが、あまり効果はなかった。
他にいい方法はないものかとあれこれ考えた末に、ピンバイスで眼球に穴をあけ、そこに黒色の塗料を流し込むことにした。眼球の中央に針でガイド穴をあけ、あとはピンバイスの0.3mm、0.4mmと直径を徐々に広げていけば、きれいな円形の穴があく。そこに塗料を流し込もうというアイデアだ。

これでなんとかうまくいくはずと考えたのだが、ドリルで穴を開けている途中で、眼球がわりの透明プラが頭部内に陥没してしまった。
仕方がないので、接着済みの頭部をむりやり外して透明プラやLEDを取り出した。

修復に失敗した持国天。玉眼部分がはずれた頭部と、首の付け根からLED用の配線が出ていて痛々しい胴体部。廃仏毀釈か。

困った。
頭部を縦に分割して、新しいLEDと玉眼がわりの透明プラを組み込むのは難しそうなので、なにか別の手を考えねば。

それにしても、こうやってあれこれ工夫しながら失敗を繰り返すと、慶派の玉眼の凄みにあらためて戦慄する。

蓮華王院の風神雷神像の玉眼。湛慶が造像にかかわったらしい。(©Ismoon (talk)  Statues of Fūjin and Raijin 2021年5月12日クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際 を改変して使用)

よく知られているように、運慶仏とくに天部の仏像は玉眼が多いのだが、きっと慶派の小仏師のなかに玉眼のスペシャリストがいて、運慶や康慶の指示に従い、それぞれの仏像にふさわしい眼を創作したんだろうなと思う。
ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」を制作するときに、ローン・ピーターソンをはじめとする模型制作スタッフが欠かせなかったようにね。

おこがましいが彼らに負けてならじと気合を入れ直す。
その前に、運慶展に行かないと。


【第3話】持国天と1年半ぶりに再開  につづく
【第1話】まずは「持国天 古色彩色」の修復を に戻る


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