すれ違いと月のブランコ【3つのお題に空想のひらめきを】
ファンタジーに挑戦しました。
第48回のファンタジーのお題で書いた『空飛ぶ喫茶店アナザースカイ』の物語が非常に使い勝手がよく、いろんなお題でも書いていました。
そんなわけで、3,000字越えです(;´・ω・)
お時間ある時にお読みいただけると嬉しいです。
合わせて、過去の喫茶店アナザースカイの物語も読んでいただけるとうれしいので、最後に記事貼らせていただきます!
よろしくお願いします。
🎈お題①:「月のブランコ」
🐾お題②:「雨上がりのドラゴン」
⏳お題③:「七色の扉」
空飛ぶ喫茶店アナザースカイの店主・レイラは、今日も元気に店を切り盛りしています。
そこにびしょ濡れのドラゴンがやってきて、シュルシュルと体を小さくして店内に入ってきました。
「いや〜急に降ってきて、かなわんわぁ〜。
レイラ、ちょい雨宿りさせてや〜。
あと星くずジュースも、一杯頼むわ」
レイラはドラゴンの体を拭きながら聞きます。
「どっか行く途中なん?
仕事??」
「おう、仕事や。
ほれ、もうすぐ三日月やろ?
月のブランコが始まるんや。
『七色の扉の向こうには月のブランコ--
夢のような空間へあなたをお連れします』
ってキャッチフレーズで宣伝してるの、知らん?
あれの地上から七色の扉までの送迎の仕事や。
でも、雨降ってきたから、今日は客、少ないかもなぁ〜」
レイラは労いの気持ちを込めて、星くずジュースをドラゴンに渡しました。
すると今度はこの国の王子が公務の合間にやってきました。
レイラはパッと笑顔になり王子のそばに駆け寄って言います。
「あ、王子、いらっしゃい!
いつもの?
後、雨、大丈夫やったん?」
「おう、傘持ってたから、濡れずに済んだわ。
そうそう、いつものやつで頼むわ〜。
はぁ、疲れた!」
小さなドラゴンが座っている隣の席に座って、うーんと伸びをする王子。
レイラは軽やかな足取りでカウンターに戻り、星くずコーヒーを丁寧に淹れ始めます。
小さなドラゴンはニヤニヤしながら言います。
「……聞いたで、王子。
婚約おめでとう。
疲れてんのは、式の準備で忙しいからか?」
店内がシン……となります。
小さなドラゴンは、その空気に気づいて
「……えっ…わし、なんか、変な事言うたか……?」
「い、いや……変な事…ではないねんけど……そ、その、ちょっとややこしいっていうか、なんというか……」
王子はチラチラとレイラの方を見ながら、歯切れの悪い返事をします。
レイラは、ポカンとした顔をしたまま、手だけは動かし、星くずコーヒーを淹れると、王子のところへ持っていきます。
「……お待たせしました……。
……王子、婚約したんや……。
へぇ……。」
「レイラ、ちょっと待ってくれ。
ちゃんと説明させて欲しい。
あんな……」
王子が話し始めようとしたその時、側近の人が近づいて、何やら王子に耳打ちします。
王子は即座に立ち上がり、星くずコーヒーをぐいっと飲み干すとレイラに向かって
「急用が入ってもうた。
レイラ、また後で、説明するから!」
と言って風のように店内から出ていった。
その後のレイラはポンコツだった。
星くずオムライスは焦げ、星くずコーヒーは苦くなったり、薄味になったり。
見兼ねた小さなドラゴンが言います。
「……レイラ。
今日はお店閉めて、ちょい休みぃな……」
レイラはドラゴンの言うことを聞いて、お店を閉めました。
外の雨は止んでいたので、小さなドラゴンはシュルシュルと体を元の大きさに戻して、レイラに言います。
「今から、月のブランコ、乗りに行こうか」
レイラは小さく頷いて、ドラゴンの背中に乗ります。
ドラゴンが大きく羽ばたき、空に舞い上がると、雨上がりの湿った風が柔らかくレイラを包みます。
レイラは王子と過ごした日々を思い出しているうちに、ポロポロと涙が流れます。
(なんで、こんなに涙出るんやろ……
あたし、おかしなってもうたんかな……)
七色の扉の前に到着し、ドラゴンは泣いているレイラに静かに言います。
「レイラ。
七色の扉を通ると、自分の本当の気持ちが浮かび上がってな、月のブランコに乗ったら、その思いが溢れるから、今はそれを感じてみ?
言葉にして、今の自分の立ってる位置を確認するんや。」
レイラは、七色の扉の前で立ち止まり、しばらく動けません。
ドラゴンは静かに見守ります。
レイラは何度か七色の扉のドアノブに手をかけては、また降ろしを繰り返します。
(……もう、わかってんねんけど……。
言葉にするのが……辛い……。
でも……このままじゃ、あかん…!)
レイラは七色の扉を開けて、中に入ります。
胸の辺りがギュッと締め付けられます。
月のブランコに乗り、ゆっくり、ゆっくり動かしていくうちに、またポロポロと涙が溢れてきて、ついに「わーん」と大泣きし始めました。
「わーん……
あたし、王子のこと好きやったんやーー
当たり前のようにお店に来てくれて、たわいもない話して……そんな日がずっと続くって思ってしもてた……
わーん、わーん……」
ひとしきり泣いて、レイラがぼんやりしていると、七色の扉がギィと音を立てて開き、そこから王子がやってきました。
びっくりしたレイラは思わず
「えっ!?
王子??
なんでここに……」
と言うと、王子はまっすぐレイラの方に向かって歩き、真正面からレイラを見つめて言います。
「婚約者の件。
ちゃんと説明したかったから、お店行ってん。
でも……お店閉まってたから、常連のカラスとスズメに聞いたら、ドラゴンと月のブランコに向かったって聞いたから来た。
説明、聞いてくれるか?」
レイラは、ブランコの紐をギュッと握りしめて
「……き、聞こうやないの!
ど、ど、どんなノロケ飛び出しても、こっちは平気やで!!」
と言い放ちます。
王子は、少し息を吸って静かに言います。
「……婚約者は……レイラ、君のことやねん」
「……えっ?」
王子は顔を赤くして言います。
「……オレが、君の喫茶店に頻繁に通うから、側近たちから何しに行っているのか聞かれたんや。
最初は、星くずコーヒーがうまいからって言うてたけど……それにしても行き過ぎやと言われて……。
だから、店主のレイラを口説いてる最中なんやって言うたんや。
……そしたら、なんや、尾ひれついてもうて、オレに婚約者おるって話になってもうてて……。」
王子とレイラの間に沈黙が流れます。
「……それって、つまり……」
王子はさらに顔を赤くして言います。
「ああ!
オレは、レイラのことが好きや!!
喫茶店に頻繁に通ってるのは、レイラが好きだからや!!」
レイラは一瞬、時が止まったような気がしました。
(……ほんまに?
これ、夢ちゃうん……?)
胸の奥が熱くて、何か言いたいけれど、言葉が出てきません。
王子は少しだけ視線をそらして、続けます。
「ずっと、言えんかった。
ただの常連やと思われるのも嫌やったし……」
一呼吸置いて、もう一度レイラを見ました。
「勘違いされたまま、終わるのも嫌やった」
その言葉で、レイラの中の何かがほどけていき、ようやく小さく笑いました。
涙のままの顔で、ブランコの紐を握り直しながら言います。
「……あたし、さっきまで、めっちゃ泣いてたんやで」
王子は少し困ったように笑います。
「知ってる。
目とか鼻とか赤いし、めっちゃ泣いた跡あるし」
「……やっばー!!
すごい顔なんちゃう?あたし」
レイラは顔を隠すように俯いて、ゆっくり息を吸って、吐いて……そして、ポツリと言いました。
「……そっか。
……気づくの遅くて、ごめんな。」
頬がじんわりと熱くなっていきました。
「……謝らんでええよ。
レイラがこういうことに鈍いのは、最初からわかっとたからな!」
「あ、そうですか。
苦労しますね~」
「ほんまやで」
月のブランコが、また静かに揺れ始めます。
レイラと王子の視線が合い、2人は笑います。
王子はひょいとレイラの隣に座って大きく足を振り出し、ブランコを漕ぎながらドラゴンに向かって言います。
「なあ、もう少し乗っててもええやんな?」
ドラゴンはあくびをしながら
「ごゆっくりどうぞ~。
王子の特権で今日は貸し切りにしたらええんちゃう?
わしものんびりできるし」
と言ってグーグー寝てしまった。
「ほな、起きるまでブランコ堪能しようか、レイラ!」
「ええな、それ!」
月のブランコは大きく揺れます。
王子とレイラは星空に吸い込まれそうなほど、大きく揺らしてブランコを楽しむのでした。
おしまい。
過去の投稿作品はこちらです。
