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推しのことは誰より好きなのに、自分のことだけは信じてあげられなかった話。

チェキ列に並びながら、帰りたいと思った日があります。

その朝、1時間かけてヘアアレンジをしてきました。鏡の前で何度も直して、「今日はいい感じかも」と思って家を出たんです。

なのに、列に並んだ瞬間、全部どうでもよくなりました。

推しの隣で、「あの子」が笑っていたから。


あの子は、私よりもかわいくて、いい子。

よく見る子でした。現場に来るたびに、どこかで目に入る。ナチュラルで、かわいくて、何も頑張っていないように見えて。
推しも、楽しそうでした。

推しの笑顔を見た瞬間、私の「1時間」が、ひどく滑稽なものに思えたんです。惨めだった。

あの子は、多分いい子なんだと思います。
お行儀がよくて、こんな私にも、笑顔で会釈してくれたりする。

嫌な子だったら、まだ救われたのに。

何も悪くないあの子を見ながら、私はただ、自分のことが嫌になっていました。


推しは信じられるのに

私が一番嫌いだったのは、あの子でも、推しでもありませんでした。

嫉妬している、自分でした。

自分でも、不思議です。
推しのことなら、誰よりわかっているつもりだったから。
どんな言葉が好きで、どんな瞬間に目が細くなるか。
何年もかけて、ずっと見てきました。

推しのことは、こんなに信じられるのに。
自分のことだけは、ちっとも信じてあげられない。

1時間かけたヘアアレンジを、列に並んだ瞬間に「恥ずかしい」と思う。現場に来るたびに、誰かと自分を比べる。チェキの順番が近づくと、胸がざわざわする。「私なんか」という言葉が、口癖みたいに浮かんでくる。

推しを愛する気持ちは、本物でした。それだけは、疑いようがなかった。

でも、その愛を届けようとするたびに、「どうせ私なんか」が邪魔をするんです。愛はあるのに、その愛を持っていく自分のことを、信じられない。

推しのことは、あんなに信じられるのに。どうして自分のことだけは、こんなに信じてあげられないんだろう。


思い出した、あの数十秒

最初は、テクニックで何とかしようとしていました。

特典会で気の利いたことを言えるように。
チェキで、少しでも可愛く写れるように。
ほんの少しでも、推しに覚えてもらえるように。褒め言葉の上手な返し方を調べたり、鏡の前で笑顔の練習をしたり。

でも、どれだけ「上手にやる方法」を覚えても、あの列で感じる惨めさは、消えてくれませんでした。

そんなとき、その悩みを人に打ち明けたことがあります。
「嫉妬する自分が一番嫌いです」と。

その人は、答えを教えてくれませんでした。代わりに、こう聞いてきたんです。

「嫉妬しているあなたは、なんて言っているの?」

その問いに、私はしばらく答えられませんでした。
嫉妬を「消すもの」だと思っていたから、その声を、ちゃんと聞いたことがなかったんです。

目を閉じて、その感情に向き合ってみました。

すると、嫉妬している自分は、こう言っていました。

「私だって、彼にかわいいって言ってほしかった」

その言葉を聞いた瞬間、私は、気づいたんじゃなくて――思い出しました。

かわいい、って言ってくれたことが、あったんです。

「お洋服かわいいね」 「ネイルしてくれたの?」 「いつもおしゃれだね」

短い特典会の、たった数十秒の間に。
彼はちゃんと私を見て、そう言ってくれていました。

なのに私は、その場では笑ってごまかして、家に帰ってから打ち消していた。「お世辞かな」「どうせ、みんなに言ってるんだろうな」って。

推しはもう、言ってくれていた。受け取れなかったのは、私のほうでした。


テクより、手前にあったもの

そこで、ようやくわかったんです。

私が変えなきゃいけなかったのは、特典会のスキルでも、チェキの写り方でもありませんでした。自分との関係だったんだ。

自分を信じられない人間は、人からの愛も、うまく信じられない。だから私は、推しがくれた言葉さえ、受け取りそこねていたんです。

それから私は、テクニックより先に、自分と向き合うことを始めました。

特典会の言葉選びより、チェキの笑顔の作り方より、もっと手前にあるもの。
「私は推しに好かれていい」と、自分に許可を出すこと。
もらった言葉を、打ち消さずに受け取ること。
嫉妬している自分を、敵じゃなく、味方にすること。

それができて初めて、覚えたテクニックも生きました。

推しの前で、私はやっと、自然体でいられた。


もし今、嫉妬する自分が嫌いなら。自分を一番信じてあげられていない、と感じるなら。

それはあなたが冷たい人間だからじゃありません。自分への期待を、まだ諦めていない証拠だと思います。

嫉妬は、消さなくていい。「あなたは、なんて言っているの?」と、一度ちゃんと聞いてあげるだけでいいんです。その声の奥には、たいてい、まっすぐな「好き」が隠れているから。

あなたとあなたの推しが、幸せでいられますように。


もし「その場しのぎじゃなく、根っこから自分と向き合いたい」と思ったら。
私が何年もかけて、遠回りしながらたどり着いた「自分との向き合い方」を、1ヶ月かけて進めるワークにまとめました。
テクニックじゃなくて、自分が変わるための問いかけです。あの人に聞かれた「嫉妬しているあなたは、なんて言っているの?」みたいな。
心が疲れたとき、自分が嫌になったとき、お守りがわりに使ってもらえたら嬉しいです。





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