大犬空港物語(5)「秋田犬との出会い」
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俺の名前は、大谷浩平。
今日は遅番。10時半出社だ。
シフト勤務だから早番・遅番がある。早番は7:30から16:30、遅番は10:30から19:30まで。それぞれ8時間勤務(休憩1時間)。早番と遅番を組み合わせ、俺を含めた7人で365日、12時間体制を回している。
空港の敷地に入ると、見えてくる小さなターミナル。もちろん、俺の家よりはずっと大きいですが(第3話では過小評価してしまってすみませんでした)。
えんじ色の丸い屋根と、歩道のひさし。夏の陽ざしを受けて、静かに続くアスファルト。
歩道のひさしの下に、茶色いと白の毛のかたまりが見える。ん?あれは犬・・・か・・・?
ゆれている白い毛は、犬のしっぽ・・・か?
いや、ゆれているどころじゃない。ぶんぶんだ。
ぶんぶんぶんぶん、これでもかってくらい嬉しそうに。
いなり寿司にも似た、こんがりおいしそうな茶色。ふわっふわの白毛。
車を運転している俺には気づかずに、飼い主さんを見上げて一心にしっぽを振っている。
そうか、あれがそうか!秋田犬か!
瞬間、心臓が大きく脈打ち、そのはずみで左手の指先までビリビリと痛みが走った。雷に打たれたよう、とはこのことか。体中の血が心臓に流れ、また一気に全身に戻っていった。
駐車場に車を停め、秋田犬のところへ近づいた。
「おはようございます!」
高校球児時代に叩き込まれた発声で、思わず全力の挨拶が出た。
飼い主さんの顔が曇った。
と、思った瞬間、秋田犬のしっぽも止まった。
しまった。俺はもう少年じゃないんだ。この会社の役員なんだ。思いだせ、渋い声を。
「はじめまして。このたび取締役に就任いたしました大谷と申します。どうぞよろしく」
「あぁ、はじめまして。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。」
飼い主さんが丁寧におじぎしてくれる。
そばにいた秋田犬は、また、ゆっくりとしっぽを振り始めた。
飼い主さんの気持ちが、わかるんだな。
なんて賢いんだ。
秋田犬は少し首をかしげ、つぶらな黒い瞳がつややかに俺を見つめている。
俺はもう一度、体中の血液が心臓に集まっていくのを感じていた。
作者のひとりごと
第5話を読んでくださって、ありがとうございます。
大犬(おおいぬ)空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。そして私の“本業”は、そのモデルとなっている空港のファンクラブ会員を増やすこと。小説の主人公と一緒に、秋田犬の魅力にふれていただけたらうれしいです。
ついに秋田犬に出会った主人公。
秋田犬は第6話にも登場します。ぜひ会いに来てください!
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