大犬空港物語(6)「忠犬ハチ公のふるさとで」
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俺の名前は、大谷浩平。
あの日出会った秋田犬に、また会えた。
正確には、会う日が決まっていた。毎月8のつく日——8日、18日、28日。
この空港では、毎月8のつく日に「秋田犬のお出迎え」という事業をやっているのだ。
ちなみに8っていうのは、渋谷の忠犬ハチ公に由来するんです。
知ってましたか?忠犬ハチ公って、秋田犬なんですよ。しかも、大館市生まれなんです。
それに、秋田犬は前足を八の字に開いた立ち姿がよしとされていて。
数字の8には、そんな意味も込められているんですよ。——って、昨日聞いたばかりの話をそのまま観光客に説明しちゃう俺。女性ばかり6人のグループが、口々に「へぇ~っ」と言ってくれるもんだから、すっかりいい気分になる。
秋田犬のお出迎えは、8のつく日の午前便に合わせて、午前10時頃から11時頃まで。(※当日の秋田犬の体調・ご機嫌によっては、お出迎えできない場合もございますので、あらかじめご了承ください。)
毎回、犬たちの周りにはたくさんの人が集まる。
もう人がわんさといて犬が見えないくらいだ。
犬たちは簡単な柵の中に入っている。ごく簡単に設営できる、やわやわの柵で、力の強い秋田犬なら、倒すことも、飛び越えることも簡単にできそうだけれど。それでも、犬たちはそこから出たりはしない。おとなしく柵の中に座っている。本当に、お利口さんなんだよ。
リムジンバスがお客様を乗せ終えて空港を出発すると、空港の担当者が柵を片付け始める。犬たちの目がキラキラしてくる。「もうすぐ帰れる」って知ってるんだよな。お客さんに囲まれていたころは背中にぴったりとくっついていた尻尾が、ふわんふわんと少しずつ揺れ出して、飼い主さんが「よし、帰ろうか」って言うと、ぶんぶんぶんぶん。
はじけるように立ち上がって、飼い主さんに飛びつくんだ。
中には、東京から飛行機で何度も通ってくれるお客様もいて、飼い主さんやスタッフと顔なじみになっていく。「会いに来たよ」「また来たよ」と言ってくれる。そういう温かい気持ちに、飼い主さんたちもスタッフも何度も救われてきた。
この「秋田犬のお出迎え」事業は、もう8年も続いている。
初代の犬たちは、いまはもういない。
……まあ、この話もほとんど、さっき聞いたばかりの受け売りなんだけどな。俺、いま来たばかりだからね。
作者のひとりごと
第6話を読んでくださって、ありがとうございます。
この小説のモデルとなっている大館能代空港では、2025年現在、実際に毎月8のつく日の10:00~11:00頃に秋田犬がお出迎えをしています。「柵を片付け始めると犬が喜ぶ」というエピソードも、私が直接、秋田犬のお出迎え担当から聞いたお話です。かわいいですよね。
さて、次回は、もう一人の出向者が登場します。
第7話もぜひ読んでいただけるとうれしいです。
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