大犬空港物語(1)「出向って、つまり島流しだよね?」
あらすじ
大企業の本社勤務で出世コースにいた大谷浩平は、会社上層部との口論をきっかけに、北東北の小さな地方空港「大犬空港」へ出向を命じられる。妻子を東京に残しての初めての単身赴任。大谷はその辞令を左遷だと受け止め、赴任先の環境にも戸惑う。しかし、秋田犬や空港で働く人々、地域の人たちとの出会いを通じて、彼は少しずつ変わっていく。都会では見えなかった仕事の意味、人に喜ばれる手応えを知った大谷は、奈落の底だと思っていた場所で、肩書きではない自分自身を取り戻していく。
俺の名前は、大谷浩平。
空を飛ぶ、そこそこ大きな会社に勤めている。
総理官邸にも何度か出入りした。東京・日本橋で妻、娘との暮らし。
自分は会社の中枢にいるのだと、出世コースだと、勝手に思っていた。
そんな俺が今、北東北のとある空港の事務所で、雪かき用スコップを握っている。気温は氷点下。
そう、俺は今、“この世の果て”にいる。
理由? うん、会社でちょっと偉い人と口論したんだよな。
気づいたら辞令が出ていた。
都心の高層ビルの一室で、俺はその辞令を受け取った。
「大犬空港に出向を命じる」
頭が真っ白になった。
おおいぬくうこう?
え?なんで俺が?
その場所には、30年前、仕事で一度だけ行ったことがある(はずだ)。
ほとんどなにも覚えていない。
ただ寒かったことと、方言が英語以上にわからなくて孤独だったこと、
何の肉か分からない料理を出されて、愛想笑いで無理やり飲み込んだことだけは覚えている。
いたたまれなさで、息がうまくできない。
俺に田舎は似合わないだろ?だれか笑ってくれよ。
冗談だって、言ってくれよ。
妻に聞いてみた。
「一緒に行かない・・・よね、やっぱり」
「そうね、私も仕事があるし。ごめんね。」
軽い。
娘にも聞いてみた。
「まさか」
単身赴任決定。
初めてだ、家族が誰もついてきてくれないなんて。
いやだ、行きたくない、誰か助けて。
作者のひとりごと
はじめまして。
大犬(おおいぬ)空港にたどりついてくださってありがとうございます。
大犬空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。
これから、転勤サラリーマンのドタバタと、生き方を見つめ直す物語を書いていきます。どうぞ気楽にお付き合いください。
そして実は、私の“本業”は、そのモデルとなっている空港のファンクラブ会員を増やすこと。この小説をきっかけに、空港や地域のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。
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