【短編】心残り人の街 -5
幸せな生活
メリーとキヨシのワイン作りは、軌道に乗ってきた。常時働いてくれる人を3人ほど雇う余裕も生まれて来た。その時には、ワインの出荷量も五万本を超え、熟成された樽で過去人手不足で出荷できなかった分がプレミアムなワインとして追加出荷できるようになり、十二年サイクルでワインの出荷を計画できるようにまでなっていた。そして、待望のジュニアも誕生した。男の子だった。二人は、この男の子にケンと名付けた。
「そういえば、あれ以来ケンから連絡が無いけど元気で旅行しているのかな」
「そうね、また帰りに寄るっていってもう四年も経ってしまったわ」
「僕らがこうなることができたのはケンのおかげだからな。礼をいいたいよな」
「本当にそうね。おかげで家族もできたのだから」
月日が流れるのは早く、それから十八年が経過し、ケンは立派な青年に育っていた。家の手伝いも率先して実施していた。ワイン工場もさらに大きくなり、葡萄畑も広くなっていた。それに比例して出荷量も二十万本にまで膨らみ、経済的な余裕も生まれていた。日本の酒屋はヨウジが切り盛りしていたが、順調に大きくなり、特にインターネット経由の取引が急速に増加し、年商も二百億円近くにまでに達していた。兄弟共に順調な成長を遂げ、フランスでのワイン生産と日本の酒屋からの販売というビジネスは盤石なものとなってお互いに幸せを噛み締めていた。
そんなある日、息子のケンが提案して来た。
「お父さん、お母さん、周りの土地を散策してくるよ。もっと葡萄も増やせればもっともっとワインを作れるようになるだろ。それには畑が必要だ。まず山の向こうを確認してくるよ。もしかしたら、手付かずの畑もまだあるかもしれないし」
「おお、そうか。もうそんなことを考えてくれるようになったか。じゃあ、寝泊まりができるような荷物を持って、そうだなぁ、ひとりで2週間くらいの旅をして来なさい。一応、念のためにスマホとバッテリーは持っていきなさい」
一人で行動するようになったんだという喜びとともに、キヨシとメリーはケンを送り出した。田舎で育っていてここから一歩も出ずに育っているから、少しは周りを知るのは悪くないなと思って送り出したのだ。
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