エッセイ丨深夜3時のおかあさん
夜中にふと目が覚める時は、
大体なにかの前ぶれだ。
母になって以来、
熟睡と無縁の生活になった私だが、
たまにぐっすり眠れたな、という時に限って、
夜中3時頃に、ふと目が覚めたりする。
なぜ目が覚めたのかと考える間もなく、
暗闇から小さな声が届く。
「おかあさん…おかあさん…」
おっと、事件の予感がするぞ。
呼んでいたのは下の子だった。
どんなに眠たくても、
子が呼ぶとなぜだろうか、突然に「母」スイッチが入る。
「どうしたん」
「濡れちゃった…」
深夜3時のおねしょ報告である。
トイトレ完了から久しくこんなことは無かったのだが、
なにか怖い夢でも見たのかな。
「まだ出る?トイレいく?」
「ううん、もう出ない」
いわく、パジャマを取り替えてくださいとのこと。
寝ぼけた顔の子どもが、寝ぼけたまま起き上がりもせずに、
器用に服を脱いで布団に転がっている。
あとは回収するだけだからね、おかあさん。
という、涙が出そうな優しさを感じる。
寝ぼけている子を前に、母とは従順な いきものである。
シーツを剥ぎ、
パジャマと一緒に丸めて風呂場に行く。
途中、今夜は添い寝担当を免れた夫の寝室を横切るが、
彼は爆睡しているのでこの事態には気付かない。
夜中にシーツを洗うのも、もう慣れたものだ。
我が家は添い寝担当が隔日で変わるので、
夫がこのクジを引いた時にはもう、
「僕は眠たいのに!」というオーラを全身から発しながらシーツを洗っている。
どんなモードで対応するかはともかくとして、
結局親は「親」スイッチが入ると、そうしなければならないのだろう。
ときに、パジャマの替えがなかった。
いや、あったんだけど、
下のパジャマだけを1枚新しく持っていくのが、なんだかめんどくさい。
ここで下のパジャマを消費すると、
明日の夜(もう今日だが)着せるパジャマがない。
もういいか。下着だけ着せよう。
と横着すると、
痛い目を見るのが育児だ。
母の帰還を薄目を開けて窺っていた下の子は、
いま母が履かせた下着を、小さな手で撫でるようにしてこう言う。
「……ずぼんは?」
あ、やっぱり要りますよね。
結局寝室に近いクローゼットを漁り、
上の子のサイズアウトパジャマを引き出した。
あるなら出せよと言われそうだが、
こちとら眠いのだ。
ギリギリまで追い詰められないと、やる気も湧かない。
それでも不思議と、
真っ暗なクローゼットの中で適当に掴んだ1枚が、
ちょうどパジャマのズボンだったりする。
母とは不思議ないきものだ。
多分、神様か誰かに動かされているんだろう。
その神様を動かしているのもまた、
目の前でパジャマが履きやすいようにと片足を上げる、
この無防備な怪獣なのかもしれない。
ズボンを履かせて、ようやくと今夜の任務は完了。
もう一度丁寧に自分の服を撫でた小さな手が、
「うん、もういいよ」
と言って眠りについた。
fin.

夜の親御さんたち、お疲れ様です。
小さな我が家の怪獣たちの話、まだあります▶
家族をテーマにしたエッセイ、こちらにも書いています▶
大谷(おおたに)
2児の母|整理収納アドバイザー
普段は片付け/捨て活/防災などについてもnoteを書いています。
