カウンセリングの探し方──大学附属相談室・外部心理センターの上手な使い方
こんなこと、ありませんか
「主治医から『カウンセリングを受けたほうがいいですね』と言われた。
帰宅して、近所のクリニックを探した。
『心理士さんがいるところ』って書いてあったけど、聞いてみたら『当院では月1回・15分のみです』。
別のクリニックは『心理士は退職して、いまはいません』。
病院の予約サイトを見ると、心理カウンセリングは数か月待ち。
やっと電話がつながったところは『1回1万円』。
『え、こんなに大変なの?』
『どこに行けばいいの?』
『そもそも、いいカウンセラーってどう選ぶの?』
『大学院生のカウンセラーって、ちゃんとしてるの?』
カウンセリングを始める前に、心が折れそう。」
これは、子どものカウンセリングを探そうとした保護者が、ほぼ全員ぶつかる現実です。
私は児童精神科の診察室で、カウンセリングを必要とするお子さんに出会うたびに、ご家族に説明します。
「日本では、子どものカウンセリングを継続的に受けられる場所が、本当に少ないんです。だから、複数の選択肢を組み合わせて使う必要があります。今日は、現実的に活用できる場所を一緒に考えましょう」
今日は、カウンセリングをどこで受けるか、どう選ぶか――現実的な情報をお話しします。
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※本記事は児童精神科医の臨床経験に基づく一般的な情報提供であり、個別の症例について断定するものではありません。お子さんの診断・治療・支援については、必ずかかりつけ医・スクールカウンセラー・特別支援コーディネーター等の専門職にご相談ください。
この記事の内容は、執筆者である児童精神科医が日々の診察で実際に保護者・本人に伝えている内容を、個人情報を完全に取り除いた上で再構成したものです。
1. カウンセリングを受けられる場所の選択肢
1) 医療機関(児童精神科クリニック・病院)
メリット: 保険診療、医師との連携がスムーズ
デメリット: 心理士が常勤でない場合が多い、頻度が限られる(月1回程度)
医療機関でのカウンセリングは、「あれば最高」ですが、現実には枠が限られています。
心理士が常勤しているクリニックは、全国的にも少数派。
あったとしても、新患が入れる枠がないことが多い。
2) 大学附属の心理相談室
メリット: 費用が安価(30分1,000〜2,000円程度)、質の管理がある
デメリット: 担当者が1〜2年で交代することが多い、地域による
大学院の臨床心理学専攻が運営している相談室。
大学院生(修士・博士課程の学生)が、教授の監督のもとでカウンセリングを行います。
「大学院生に頼るって大丈夫?」と思われがちですが、
修士課程・博士課程の心理学専攻者
教授が定期的にスーパーバイズ(指導)
ケースカンファレンスで複数の専門家が検討
質は意外と高い
費用が1回30分1,000〜2,000円と、医療外カウンセリングの中では破格に安い。
継続的に通うのに、最も現実的な選択肢の一つです。
ただし、担当者が修了とともに交代する(1〜2年で)のは難点。
長期間の関係性を築きたい場合、これは考慮が必要です。
3) 私立の心理センター(臨床心理士・公認心理師の開業)
メリット: 担当者が長く続く、専門性の高い心理士に当たることがある
デメリット: 高額(1回50分で5,000〜15,000円が相場)
民間で開業している臨床心理士・公認心理師。
質は施設・人によって大きく差があります。
値段が高い=質が高い、ではないので、評判を確認してから利用するのが大事。
4) スクールカウンセラー(SC)
メリット: 無料、学校の中で完結する、学校との連携がスムーズ
デメリット: 週1〜2日のみ、深い心理療法は難しい、人によって質が大きく違う
公立学校に派遣されているスクールカウンセラー。
最初の窓口として優秀です。
ただし、深い心理療法を継続的にできるわけではありません。
5) 自治体の教育相談センター
メリット: 無料、地域に根ざした支援
デメリット: 待ち時間が長い、頻度が限られる
自治体の教育委員会が運営する相談機関。
無料で利用できるのが最大のメリット。
ただし、月1〜2回など頻度が限られます。
6) 保健センター・児童家庭支援センター
メリット: 無料、生活全般の支援も含む
デメリット: 心理職が常駐しない場合がある
自治体の保健センター・児童家庭支援センター。
発達相談、子育て相談を受けられます。
7) 県立の「心のケアセンター」「精神保健福祉センター」
メリット: 専門性が高い、トラウマ治療など特殊な治療
デメリット: 医療機関からの紹介状が必要な場合が多い、待機が長い
深刻なトラウマ、愛着障害、虐待後の支援などには、こうした専門機関が対応します。
かかりつけ医からの紹介状を経由しないと利用できないことが多い。
2. 「どこを選ぶか」の判断ポイント
「費用」と「継続性」のバランス
子どものカウンセリングは、1〜2年継続することが珍しくありません。
高額な施設に1〜2回行って終わるより、安価な施設に継続して通うほうが効果が高い。
大学附属の心理相談室: 月2回 × 12か月 = 24,000〜48,000円/年
私立の心理センター: 月2回 × 12か月 = 120,000〜360,000円/年
家族の経済状況と、必要な治療期間を考えて選んでください。
「自宅・学校からの距離」
カウンセリングは、通うのが面倒だと続きません。
自宅から30分以内
学校帰りに寄れる場所
親が送迎しやすい時間帯
これが満たせる施設を選ぶことが、継続のコツです。
質が良くても、片道1時間かかると、半年でドロップアウトすることが多い。
「子どもとの相性」
カウンセラーには、人としての相性があります。
男性カウンセラー vs 女性カウンセラー
若いカウンセラー vs 年配のカウンセラー
プレイセラピー(遊びを通じて) vs 言語カウンセリング(話して)
認知行動療法 vs 力動的療法
子どもの年齢、特性、好みに合った形式・人を選ぶことが大事です。
特に、男性への苦手意識がある女子(過去のトラウマ、暴力的な父親など)には、女性担当を必ず選ぶ。
小学校高学年以上は、プレイセラピーより言語カウンセリングが向いていることが多い。
「兄弟姉妹の場合は、別の担当者を」
兄弟姉妹を同じカウンセラーに担当してもらうと、本音で話しにくくなることがあります。
「兄のことを心理士さんは知ってるから、悪く言いにくい」
「妹と比べられるかもしれない」
兄弟姉妹それぞれが、自分専用の心理士を持つことが理想です。
選択肢と判断軸を押さえたところで、これらの場をどう組み合わせ、医療とどう線引きしていくか――次に診察室での具体的な使い方をお話しします。
出典・参考情報
こどもの心の診療ネットワーク事業(厚生労働省/中央拠点:国立成育医療研究センター)(https://kokoro.ncchd.go.jp/)「精神保健福祉センター」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所(https://www.ncnp.go.jp/nimh/)
公益社団法人 日本公認心理師協会(https://www.jacpp.or.jp/)
こどもの心の診療ネットワーク事業(厚生労働省/中央拠点:国立成育医療研究センター)(https://kokoro.ncchd.go.jp/)
3. 診察室で私がしていること
ここまで読んで、「カウンセリングの場には7種類くらい選択肢があって、費用と継続性のバランスで選ぶというのは分かった。でも、医療機関ですでに通っている場合、外部のカウンセリングと『どう組み合わせる』のが正解なんだろう」と感じた方も多いのではないでしょうか。
「医療と心理士、それぞれに何を相談すればいいのか線引きがつかない」「紹介状をどう使えば早くつながるのか」「いまのカウンセラーが合っていない気がするけれど、変えていいものか」「療育・SST も視野に入るが、何から手をつけたらいいのか」――カウンセリングの選択肢を前にして、保護者は組み合わせ方が分からず立ち止まります。
私は診察室で、カウンセリングを始める前に、まず「医療と心理士の役割分担」を保護者と共有することから始めます。
紹介状を上手に使ってカウンセリングへつなぐ手順、効果が出ないときに「変える勇気」を持つこと、半年〜1年で見極めるという目安、療育・SST も外部機関の選択肢として視野に入れること、そして「クリニック内のカウンセリングには限界がある」――そのことを最初に正直に保護者に伝えること――。医療と外部機関の役割分担を可視化したうえで、家族の経済状況や通いやすさも踏まえてカウンセリングの場を選んでいきます。
ご家族で「うちの子のカウンセリングをどこにお願いしようか」と話すとき、主治医や担任に「どこに相談すべきか」を聞くときの「下敷き」として読んでもらえたらと思います。
3-1. 「医療と心理士の役割分担」を保護者と共有する
私は、カウンセリングを始める前に、保護者にこう伝えます。
「私の役割は、診断と薬の管理、そして家族のサポートです。心理士の役割は、お子さんの気持ちを丁寧に聴いて、考え方や対人関係の整理をすることです。両方が同じ人だと、混乱します。役割を分けて、両方を活用してください」
医師は時間が短い(再診10分〜15分)。
心理士は時間が長い(50分など)。
それぞれの強みを活かして使うのが、お子さんにとって最も効果的です。
3-2. 「紹介状」を上手に使う
外部のカウンセリング・心の専門機関を利用するとき、医師の紹介状があると、
受け入れ側がお子さんの状態を理解できる
引き継ぎがスムーズ
緊急時に医療と連携しやすい
私は、外部のカウンセラーに繋ぐ場合、紹介状を必ず書きます。
そして、定期的に医師と心理士で情報を交換するようにします。
3-3. 「効果が出ない時、変える勇気」
カウンセリングは、始めた以上は続けないといけないものではありません。
担当者と相性が合わない
通っていても本人がしんどそう
半年経っても変化がない
こういう時は、変える勇気を持ってください。
医師に相談しながら、別の心理士、別の機関に移ることを検討する。
「我慢して続ける」ことが、必ずしも本人のためになるわけではありません。
3-4. 「半年〜1年で見極める」
新しい心理士・新しい機関を始めたら、半年〜1年継続して、変化があるかを見ます。
子どもが施設に慣れたか
心理士との関係性ができたか
家庭での様子に変化があるか
学校生活に変化があるか
これらに少しでも改善があれば、続ける価値あり。
全く変化がなく、本人もしんどそうなら、変更を検討。
3-5. 「療育・SST も、外部機関の選択肢に」
ソーシャルスキルトレーニング(SST)、ペアレントトレーニング、療育などが必要な場合、医療機関でできない場合は、外部の療育センター・大学心理センターを活用します。
民間療育施設(児童発達支援、放課後等デイサービス)
大学の心理センター(SSTを実施しているところ)
自治体の発達支援センター
これも、医師から紹介状を出すか、家族が直接申し込みます。
3-6. 「クリニックでのカウンセリングには限界」を、伝える
私が運営しているクリニックを含め、多くの精神科・児童精神科クリニックでは、長時間のカウンセリングを継続提供することが構造的に難しい現実があります。
保険診療の枠組みでは、心理カウンセリングの収益が低い
心理士の常勤雇用が経営的に難しい
1日に診察できる人数が限られている
こうした事情から、クリニックは「診断と薬の管理」、外部機関は「カウンセリング」という役割分担になることが多い。
これを家族に正直に伝えて、「うちでカウンセリングまで完結させようとしないでください、外部とのチームで支えましょう」とお願いします。
4. 家庭でできる「カウンセラー探し」
「最初の電話で確認するポイント」
カウンセリング機関に最初に電話するとき、確認しておきたいこと:
対応年齢(児童・思春期に対応しているか)
頻度と料金(月何回、1回いくら)
アプローチ(認知行動療法、プレイセラピー、家族療法など)
担当者の継続性(交代の可能性)
医師との連携(紹介状を渡すと連携してくれるか)
電話対応の感じ(これも重要)
最後の「電話対応の感じ」は、意外と大事です。
電話に出た人が冷たい、対応が遅い、説明が雑――こういう機関は、現場のカウンセリングも質が低いことが多い。
「初回面談で確認すること」
初回面談では、
カウンセラーの雰囲気(子どもが安心するか、緊張しないか)
説明のわかりやすさ
子どもの話をどう聴いてくれるか
家族との連携の仕方
を観察してください。
初回で「合わない」と感じたら、そのまま続ける必要はないです。
「複数の機関を組み合わせる」発想
一つの機関ですべてを賄おうとしないでください。
例:
主治医(児童精神科クリニック): 診断、薬の管理、家族相談 — 月1回
大学心理相談室: カウンセリング — 月2回
自治体の発達支援センター: 療育グループ — 週1回
スクールカウンセラー: 学校での相談 — 隔週
これらを組み合わせて、お子さんを支えるチームを作る。
一つの機関が完璧でなくても、組み合わせで補える部分があります。
「続けることそのもの」を目標にしない
カウンセリングは、続けること自体が目的ではありません。
「お子さんが、自分なりに気持ちと付き合えるようになる」が目的。
カウンセリングを始めて1年で卒業できる子もいる
継続的に何年も通う子もいる
一度卒業して、思春期にまた通う子もいる
お子さんに必要な期間だけ通えばいい。
「ずっと続けないとダメ」と思い詰めないでください。
5. 最後に──ちょうど良いカウンセリングを、一緒に育てる
カウンセリングは、お子さんと心理士の二者の関係であり、家族と医師がそれを支えるチームです。
完璧なカウンセラーを探そうとすると、見つからないことが多い。
それより、「いま、お子さんと相性がそこそこ良くて、続けやすい場所」を見つけて、そこから関係を育てていく。
そして、必要に応じて変えていく。
変えることに罪悪感を持たない。
お子さんの状態と段階に合わせて、適切な支援を組み合わせていく――これが現実的なカウンセリングの使い方です。
私は、診察室でカウンセリング探しに悩む保護者に、
「『いいカウンセラー』を一発で見つけようとしないでください。何回か試して、続けられそうな場所を見つけて、そこからお子さんと一緒に育てていく――そういう感覚で大丈夫です」
と伝えています。
そして、
「カウンセリングを使ったことで、お子さんが家族以外に『自分のことを話せる大人』を持てた、という経験そのものが、大きな財産です。そこから先のことは、ゆっくりついてきます」
ともお伝えします。
カウンセリングは、子どもに「家族以外の信頼できる大人」を作る手段でもあります。
これは、思春期、成人期を通じて、子どもの人生を支える力になります。
家族とは違う視点を持つ大人と、長く関わる経験。
それが、自立した大人になっていく道を支えます。
カウンセリング探しに苦労している家族の方々――焦らず、組み合わせを探しながら、お子さんに合う支援を一緒に作っていきましょう。
私たち児童精神科医も、その伴走者の一人です。
