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なぜ、スピカコンサルティングは「インセンティブ制度」を廃止するのか。

こんにちは。
スピカコンサルティング代表取締役社長 CEOの渡部 恒郎です。

不定期ですが、経営や組織のあり方について私の考えを発信するnoteを始めます。

今回は、当社のこれからのあり方についてお話しさせてください。

スピカコンサルティングは、インセンティブ制度(個人の売上のみに応じた成果報酬制度)を今期で廃止することを決定しました。

これまでは一般的なM&A業界同様に、コンサルタント個人の業績に連動した報酬体系をべースに敷いてきましたが、これを取りやめます。なぜ、この業界の「当たり前」であり、強力な成長エンジンとも言われるインセンティブ制度を止めるのか。その理由と、私たちが目指す組織の姿について、私の本音をお伝えします。

※インセンティブ制度は廃止しますが、業績賞与制度はあります。この違いについても当社の考えを記載しているので「ボーナスないのかよ」とページを閉じるのではなく、読み進めていただけると幸いです。



20代の営業時代から抱いていた、ひとつの疑問


実は、私自身が20代の営業職だった頃から、インセンティブ制度に対してずっと小さくない疑問を抱いていました。

当時、ありがたいことに私はトップクラスの営業成果を上げており、それに見合うインセンティブを受け取っていました。

しかし、心のどこかでいつもこう思っていたのです。

「この成果は、本当に自分一人の実力なのだろうか?」と。

ひとつの案件が成約する背景には、会社のブランドや歴史、所属するチームの部長や上司、社内の公認会計士や弁護士といった専門家による高度なサポートがあります。そして、私たちがリスクを恐れずに前線で動けるよう、完璧に体制を整えてくれている人事や経理などの間接部門のメンバーがいます。

フロントに立つ人間だけがスポットライトを浴び、多大なインセンティブを手にする構造は、組織全体の本当の貢献度を正しく反映できているのだろうか。

その違和感が、私の原体験としてずっと残っていました。


報酬が「何を評価しているか」という構造的な課題


M&Aは、企業の未来や社員の雇用、そして経営者の人生を左右する極めて重大な意思決定です。だからこそ我々のようなM&Aコンサルタントは、本来はどこまでも誠実で、慎重であるべき立場です。

しかし、インセンティブ制度が、時としてその現場に歪みを生み出す原因になり得ると考えています。

では、そもそも「インセンティブ」とはなんなのか。当社が採用している「業績賞与」との違いを書き出してみました。

◆ インセンティブ「案件直結(スポット)型」の報酬

ひとつの契約(スポット)に対して、あらかじめ決まった割合や金額をその都度支払う仕組みです。会社全体の業績や周囲の支えとは切り離され、成約という「結果」のみにフォーカスする性質があります。

この構造上、どうしても目先の成約を急ぐ心理が生まれやすくなると感じています。

これが、時にプロセスにおける潜在的なリスクの見落としや、強引な交渉といったトラブルに繋がってしまうのではないか、という懸念を持っています。

◆ 業績賞与「総合貢献(プロセス・品質評価)型」の報酬

会社全体の成果を原資に、個人のスキル、チームへの協力、そして何より顧客への向き合い方など「全体の貢献度」を総合的に評価して配分する仕組みです。

全社員が、原資と評価を最大化できるよう「会社が善とする行動(例えばスピカであれば「目の前のお客様にとって、本当に正しい判断は何か」や「学び続ける勤勉さ」など)」に集中し、プロフェッショナルとして最高品質の役務を提供できるようになります。


「インセンティブ第一主義」がもたらす、M&A現場での歪み


インセンティブ制度の構造は、実際の現場で深刻な問題を引き起こすことがあります。

例えば、以下のようなトラブルです。

  • 成約を優先するあまり重要なリスク事項を隠してしまう

  • 成約を優先するため、成約直前になって合理的な理由なく株価の大幅な引き下げを要求する

  • 成約を優先した結果、M&Aが完了してからも売主の連帯保証を外さないような買い手企業を仲介してしまう

こうしたリスクや危険 な兆候は、本来であればコンサルタントが徹底的に調査し、未然に防がなければならないものです。しかし、「早く成約させてインセンティブを得たい」という思考が働くと、こうした危険な情報を見落としたり、あえて目を瞑ったりしてしまうリスクが高まります。

過去に業界内で、成約直後に売主様の意図と反して企業が即座に転売された際、関係者が「一粒で2度美味しい」と口にしたのを聞いたとき、私は激しい愕然と危機感を覚えました。

他にも、買収側企業とのアドバイザリー契約(買いアド)を締結するとインセンティブが入る仕組みを設けている企業では「業績的に買収が難しい企業とも買いアドを結び、担当営業がインセンティブを得る」。というインセンティブ狙いの契約が発生していると、耳にすることもあります。

「営業」としてどうしてもインセンティブに沿った行動を行われなければならないという苦悩もあると思います。

無理なマッチングをする営業色の強いブローカー業としてM&Aを捉え、目先の利益を追い求めた結果、最も守るべきお客様の利益が損なわれてしまう。これは、この業界が向き合わなければならない課題だと感じています。


採用面接で感じる違和感と、私たちの存在意義


新卒・中途を問わず、採用面接の場でもよくこのような会話があります。

私  :なぜこの業界を目指すのですか?
候補者:成果に対して、正当に評価(報酬)される業界だからです

私  :なにか質問はありますか?
候補者:御社のインセンティブ制度について詳しく教えてください!

ビジネスパーソンとして稼ぐ意欲があることは素晴らしいことです。

しかし「個人の成果=インセンティブ」「インセンティブ=結果と報酬が連動している」という短略的な方程式があまりにも強固になりすぎている現状に、私はどうしても大きな違和感を拭えません。

私たちが求めているのは、個人の利益を最大化したい人ではなく、お客様と社会のために高い付加価値を提供する意欲のあるプロフェッショナルのコンサルタントです。

私たちの仕事は、日々企業同士をマッチングするだけのブローカー業務ではありません。

日本に真に価値のある「M&Aコンサルティング」を広げていく、日本経済の発展のため全体のバリューチェーンの歪みを正していくM&Aコンサルティングファームとしてスピカコンサルティングがあります。

買収した企業がその後さらに成長すること。
譲渡した企業の社員の皆様が、これまで以上に輝いて働ける環境を守ること。
本当の意味で日本経済に貢献した結果として、私たちへの還元があるのではないでしょうか。


これからのスピカコンサルティング


スピカコンサルティングは、現在でも業界内において上位の平均年収(特に間接部門)を実現しています。

今後も、業界最高水準のM&Aコンサルティングを提供をするにふさわしいメンバーのみを集め、それに相応しい最高水準の報酬体系に進化させていきたいと考えています。

スピカは「営業職」ではなく、「コンサルタント職」のみを採用しています。
スピカのコンサルタントの評価は、売上による数字評価だけではありません。

スピカというチームの目指す方向や戦略・戦術への理解、7STARSという私たちの行動規範を守っているか、チームとの連携、スキルの向上(社内テストの点数を含む)、コンプライアンスの遵守、そして「各メンバーがそれぞれプロフェッショナルとして取り組んだ仕事が、本当に社会がより輝いていくためになっているか」「自分の人生に恥ない仕事を誇りを持ってしているのか」というプロセスを、多面的かつ丁寧に評価していきます。

今回の決断は、業界のスタンダードに対する疑問であり、挑戦でもあります。

私たちはこの一歩が、お客様にとっても、働くメンバーにとっても、そしてM&Aコンサルティング業界の未来にとっても、正しい選択であると信じています。


<著者プロフィール>
株式会社スピカコンサルティング 代表取締役社長 CEO 渡部 恒郎

京都大学在学中に起業を経験の上、日本M&Aセンターへ入社。中堅・中小企業M&AのNo.1コンサルタントとして日経ヴェリタスに取り上げられるなどM&A業界を牽引してきた。業界再編M&Aの第一人者。2020年同社最年少で取締役に就任。2023年3月31日に日本M&Aセンターホールディングスの取締役を辞任。その後、3年間にわたり複数の上場企業や成長企業の社外取締役ならびに顧問を歴任し、企業価値/株価の向上に貢献。2026年4月1日よりスピカコンサルティングの代表取締役社長 CEOに就任。その他、株式会社BuySell Technologies 社外取締役、株式会社CyMed 社外取締役、株式会社Lightblue 社外取締役を務める。