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【第555回】 依存関係 / 影響分析ツール : Marketing Cloud Schema Explorer

Marketing Cloud Engagement の AgentExchange(旧 AppExchange)にSalesforce Labs が提供する Marketing Cloud Schema Explorer という新しいツール が登場しました。

注意:Salesforce Labs の製品は、Salesforce 社員が業務やコミュニティ活動の一環として開発したもので、Salesforce の正式な製品ではありません。そのため、公式のサポート対象外となりますので注意してください。

このツールは、データ構造を可視化するためのツールであり、

  • データエクステンション間の依存関係を可視化

  • ジャーニーとデータエクステンションの関連性を表示

  • 各種影響分析

  • オブジェクト間の参照関係の探索

などを確認することができます。

Marketing Cloud Engagement を長年使っている人なら、

・ 「このデータエクステンションはどこから更新されているんだっけ?」
・ 「この Query を変更するとどこに影響が出る?」

という調査にかなり時間を取られることがあります。
そんなときに、このツールが役に立ちます。

このツールを開発したのは、Alok Behera(アロク・ベヘラ)さんです。

Alok Behera

2026 年 4 月 10 日にリリースされたばかりの比較的新しいツールですが、Salesforce Labs の製品なので「無料」で使えます

インストールをするかは、自己責任にはなりますが、この記事を読んで、このような機能を待っていたという方は、以下の手順でインストールしてください。


設定手順

Marketing Cloud Engagement 側での設定

1. Marketing Cloud Engagement の「設定」画面から、以下へ移動します。

  • Platform Tools > AppsInstalled Packages

2. 新しいパッケージを作成します。

3. パッケージ名は任意です。(例:Schema Explorer

4. 作成したインストールパッケージを下にスクロールして、「コンポーネントを追加」をクリックします。

5. コンポーネントの種類として、「API Integration」を選択してください。

6. 統合タイプとして Web App を選択します。
(※ OAuth 認証に必要な選択です。)

API 統合の設定

Redirect URI に以下を設定してください。

https://schema.somil.org/auth/callback

OAuth スコープの設定

以下の権限を有効化してください。

  • Email:Read

  • Web:Read

  • Documents and Images:Read

  • Saved Content:Read

  • Automations:Read

  • Journeys:Read

  • Audiences:Read

  • List and Subscribers:Read

  • Market Audience:View

  • Data Extensions:Read

  • File Locations:Read

  • Assets:Read

パッケージ情報の取得

設定を保存した後、以下の情報を控えてください。

  • Client ID

  • Client Secret

  • Authentication Base URI
    (例:https://your-subdomain.auth.marketingcloudapis.com)

  • Account ID(Business Unit MID)


Schema Explorer での登録

1. インストール済みパッケージが登録でき、必要な情報を控えたら、インストールを開始しましょう

2. チェックを入れて、Visit Provider をクリックします。

3. サブドメインと MID(ビジネスユニット ID)を入力して先に進みます。

  • サブドメインとは、控えた Authentication Base URI の下記の部分です。
    (例:https://your-subdomain.auth.marketingcloudapis.com)

4. 以下の項目を入力し、登録してください。

  • Organization Name(組織名)

  • Contact Email(自分のメールアドレス)

  • ビジネスユニットの ID(MID)

  • Marketing Cloud のサブドメインに一致する Auth Base URI

  • Marketing Cloud のサブドメイン

  • クライアント ID

  • クライアントシークレット

登録完了後

1. フォームを送信すると、Schema Explorer が OAuth アプリケーションを登録します。ログインに進みます。

2. ログインボタンをクリックします。

3. すでに Marketing Cloud Engagement にログインしている状態であれば、そのまま Schema Explorer にログインできますが、ログアウト状態であれば、Marketing Cloud Engagement のログイン画面に遷移しますので、ここで Marketing Cloud Engagement の認証を使用してログインします。

ログインが完了すると、Schema Explorer のページが開きます。インサイトタブを開くと、ビジネスユニットが確認できます。

https://schema.somil.org/explorer

この URL をブックマークしておくと便利です。今後のログインはサブドメインと本人の Marketing Cloud Engagement の認証で行います。

Object Explorer タブで、アカウントとの同期を開始できます。

30 分程度待つと、データが同期されてきます。

最初は時間がかかります。今後はログインする度に自動で同期されます。


Schema Explorer で何ができるか

データの同期が完了したら、実際に Marketing Cloud Schema Explorer で何ができるのかを見ていきましょう。

Marketing Cloud Engagement を長く運用していると、データエクステンション、Query、Automation、Journey、Email などのアセットがどんどん増えていきます。

その結果、

「このデータエクステンションは、どこで使われているんだっけ?」

「このフィールドを変更しても大丈夫?」

「今日動いている Automation や Journey をまとめて確認したい」

「使われていないデータエクステンションが大量に残っていないかな?」

といったことを調査する機会も増えてきます。

Schema Explorer は、このような調査や日々の運用を支援するためのツールと言うことができます。

このツールの役割は大きく次の 4 つの質問に整理できます。

  • What do we have? ― 何が関連している?

  • What is happening today? ― 今日、何が起きている?

  • What breaks if we change something? ― 何かを変更すると、どこに影響する?

  • What needs my attention? ― 今、何を確認する必要がある?

それぞれ見ていきましょう。


① Object Explorer ― 何が関連している?

まず中心となる機能が Object Explorer です。

Object Explorer では、Marketing Cloud Engagement 内に存在するさまざまなアセットを確認し、それらの依存関係や参照関係を調査できます。

たとえば、

  • データエクステンション

  • Queries

  • Automations

  • Journeys

  • Emails

などのアセットが、どのようにつながっているのかを確認できます。

Marketing Cloud Engagement を長く運用していると、よく問題になるのが「このデータエクステンションを削除しても大丈夫なのか?」というケースです。

一見すると使われていないデータエクステンションでも、実際には Query から参照されていたり、Automation や Journey などで利用されていたりする可能性があります。

そのため、削除する前に関連するアセットを一つずつ調査しなければならず、これが意外と大変です。

Object Explorer を利用すると、データエクステンションやその他のアセットが、どこで利用・参照されているのかを視覚的に確認できます。

つまり、

「このデータエクステンション、本当に削除して大丈夫?」

という調査をするときに役立つ機能です。


② Today ― 今日、何が起きている?

Today は、Marketing Cloud Engagement の今日の運用状況をまとめて確認するためのダッシュボードです。

Marketing Cloud Engagement では、日々さまざまなメール送信、Automation、Journey などが動作しています。

Today では、それらを個別に確認するのではなく、今日の状況をまとめて確認できます。

たとえば、

  • 今日送信されたもの

  • 現在実行されているもの

  • これから実行される予定のもの

  • 今日特に反応の良いメール

などを確認できます。

つまり、

「今日の Marketing Cloud はどうなっている?」

を確認するための画面です。

Marketing Cloud Engagement の運用担当者であれば、毎日の運用状況を確認するダッシュボードとして活用できそうです。


③ Field Impact ― どこに影響する?

個人的に、Marketing Cloud Engagement の運用で特に便利だと思うのが Field Impact です。

たとえば、あるデータエクステンションに次のフィールドが存在するとします。

  • FirstName

このフィールドの名前や構造を変更したい場合、単純にデータエクステンションだけを変更すればよいとは限りません。

そのフィールドが、

  • SQL Query

  • AMPscript

  • SSJS

  • その他の関連アセット

などから参照されている可能性があるからです。

参照されていることに気づかず変更すると、SQL Query が失敗したり、メールのパーソナライズが正常に動作しなくなったりする可能性があります。

Field Impact を利用すると、項目(フィールド)ベースで、どのアセットから利用されているのかを確認できます。

つまり、

「このフィールドを変更したら、どこに影響する?」

を事前に調査するための機能です。

Marketing Cloud Engagement の本番環境で変更を行う際の影響分析として活用できます。


④ Insights / Risk Intelligence ― 何を確認する必要がある?

Marketing Cloud Engagement を長期間運用していると、データエクステンション、Query、Automation、Email などのアセットが増え続けます。

その結果、いつの間にか使われなくなったアセットや、運用上確認したほうがよい設定が残っていることがあります。

Insights / Risk Intelligence は、このような運用上・ガバナンス上のリスクを見つけるための機能です。

たとえば、次のような項目を検出できます。

  • 使用されていない データエクステンション

  • ソース/ターゲットデータエクステンションに問題がある Query Activity

  • Personalization のフォールバックが設定されていないコンテンツ

  • リスク対象として設定されたキーワードを含むコンテンツ

  • 非アクティブな Automation

  • 長期間更新されていないコンテンツ

Marketing Cloud Engagement の環境を人が定期的に確認して、これらをすべて探し出すのは大変です。

Schema Explorer を利用することで、

「今、この環境で確認したほうがよいものは何?」

を見つけやすくなります。

単なるアセットの可視化だけではなく、Marketing Cloud Engagement 環境を継続的に整理・改善していくための機能として利用できます。


番外編:MC Next Readiness ― 移行準備

Marketing Cloud Schema Explorer には、現在の Marketing Cloud Engagement 環境を Marketing Cloud Next へ移行する際の準備状況を分析する「MC Next Readiness」 という機能も用意されています。

この機能では、現在利用しているデータエクステンションを分析し、それぞれを Marketing Cloud Next でどのように扱うべきかを確認できます。

たとえば、データエクステンションごとに以下のような分類が行われます。

  • Sendable

    • Contact Point Email DMO や Contact Point Phone DMO へのマッピング候補

  • Lookup

    • 関連 DMO やカスタムオブジェクトへのマッピング候補

  • Suppression

    • 同意やプリファレンス関連のレコードへの移行候補

  • Transactional

    • フロートリガーやイベント駆動型メッセージへの移行候補

  • Staging

    • Data Stream や計算処理、中間的なフローなどへの再設計候補

  • Transit

    • データ処理の受け渡しに利用されており、Data Cloud や Flow での再設計が必要な候補

  • Archive

    • 移行せず廃止できる可能性がある候補

  • Mixed Use

    • 複数の用途で利用されているため、Marketing Cloud Next への移行前に分割を検討すべき候補

  • Unknown

    • 自動判定するための情報が不足しており、手動確認が必要なもの

さらに、各データエクステンションについて Confidence(判定の信頼度)Readiness(移行準備状況)Recommended Target(推奨される移行先) なども確認できます。

たとえば、送信用のデータエクステンションであれば、

Recommended Target:Contact Point Email DMO

のように、Marketing Cloud Next で利用することが想定されるデータモデルまで提示されます。

また、単純にデータエクステンションを分類するだけではなく、依存関係を考慮して、比較的依存関係が少なく、早い段階で移行できそうなデータエクステンションを Migration Wave の候補として特定する機能もあります。

Marketing Cloud Engagement から Marketing Cloud Next への移行では、すべてのデータエクステンションをそのまま移行すればよいわけではありません。

「このデータエクステンションは Marketing Cloud Next では何に置き換えるのか?」

「そもそも、このデータエクステンションは移行する必要があるのか?」

「どのデータエクステンションから移行を始めればよいのか?」

といった判断が必要になります。

MC Next Readiness は、このような移行前の棚卸しや移行計画を支援するための機能と考えると分かりやすいでしょう。


「依存関係を見るだけ」のツールではない

名前からは、Marketing Cloud のデータ構造や依存関係を確認するためのツールという印象を受けるかもしれません。

しかし、実際に提供されている機能を見ると、それだけではありません。

  • Object Explorer で現在の構造を把握し、

  • Today で日々の運用状況を確認し、

  • Field Impact で変更前の影響を調査し、

  • Insights / Risk Intelligence で潜在的な問題を発見する。

このように、Marketing Cloud Schema Explorer は、Marketing Cloud Engagement の調査、運用、変更時の影響分析、ガバナンスまでを幅広く支援するツールと考えると分かりやすいでしょう。

特に、長年利用して多くのデータエクステンション、Query、Automation、Journey などが蓄積している環境ほど、活用できる場面が多そうです。


セキュリティについて

このような外部ツールを Marketing Cloud Engagement に接続する場合、

「Marketing Cloud のデータが外部に送信されるのでは?」

とセキュリティ面が気になる方もいると思います。

この点について、開発者の Alok Behera さんにも直接確認しました。

Schema Explorer が中心的に扱うのは、顧客や購読者のデータではなく、Marketing Cloud Engagement のメタデータです。

たとえば、

  • データエクステンション

  • Queries

  • Automations

  • Journeys

  • Emails

  • Folders

  • それらの関連情報

などのメタデータを同期し、依存関係の分析や運用上のインサイトを提供しています。

通常の動作として、Schema Explorer 自体がメールを送信したり、Journey を有効化したりするものではありません。

また、コア機能を提供するために、購読者データやトラッキングデータを同期する必要もありません。

認証には Marketing Cloud OAuth が利用され、アクセスできる範囲は、認証された Marketing Cloud のビジネスユニットとユーザー権限に基づきます。

Credentials や Token についてもサーバー側で管理され、ブラウザには公開されない仕組みになっているとのことです。

ただし、Schema Explorer は依存関係の分析やインサイトを提供するために、Marketing Cloud Engagement から取得したメタデータを保存します。

そのため、実際に企業環境へ導入する場合は、Salesforce Labs のツールであることも含め、自社のセキュリティポリシーに従って利用可否を判断してください。

特に企業によって外部サービスへの接続に関するルールは異なるため、必要に応じてセキュリティ担当者などに確認したうえで利用することをおすすめします。


いかがでしたでしょうか。

Marketing Cloud Schema Explorer は、Marketing Cloud Engagement 内の複雑なアセットの関係を可視化し、「どこで何が使われているのか」「変更するとどこに影響するのか」といった、日々の運用で時間がかかりがちな調査をサポートしてくれるツールです。

特に、長年運用してデータエクステンション、Query、Automation、Journey などが増えている環境では、活用できる場面も多いのではないでしょうか。

Salesforce Labs から無料で提供されていますので、興味のある方は、まずは実際に触ってみてください。

今回は以上です。


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