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7月度サザビーズオークション結果から読む、現代アート市場/画廊/アーティスト

【2026年7月】サザビーズ落札結果分析

約29億円の《ラオコーン》が示した、巨匠の名前より強いもの


2026年7月1日、ロンドンのサザビーズでオールドマスターを中心としたイブニングセールが開催された。

※オールドマスターとは
主に近代美術が成立する以前のヨーロッパで活躍した、歴史的に評価の定まった画家を指す言葉。

絵画・彫刻のイブニングセールと、単独で競売にかけられた《ハミルトンのラオコーン》を合わせた売上総額は、約5,130万ポンド。日本円では約110億8,000万円となった。

今回の主役はレンブラントでもボッティチェリでもない。18世紀の彫刻《ハミルトンのラオコーン》だった。

《ハミルトンのラオコーン》

古代彫刻の名作《ラオコーン群像》をもとに   オーギュスト=ジャン=マリー・カルボノーが制作した大理石彫刻である。
・世界に現存する4つのレプリカの一つ。
・前近代彫刻のオークションにおいて史上2番目の高さ。
・イギリス貴族社会をめぐる遍歴(ハミルトン宮殿)


落札予想価格は200万~300万ポンドだったが、最終価格は1,360万ポンド、日本円で約29億4,000万円に達した。予想下限の約6.8倍である。

約150年ぶりに市場へ姿を現したことに加え、由緒ある来歴、巨大なサイズ、保存状態、そして美術史的な背景が評価された。アジアを含む複数の入札者が競り合ったことも価格を押し上げた。

今回の結果は、単に「彫刻市場が強い」という話ではない。

市場に長期間出ていなかった作品明確な来歴を持つ作品、ほかでは代替できない作品に対して、資金が集中したのである。

レンブラントは約17億円でも苦戦

一方、レンブラントの《幼子たちを我がもとに来させよ》は、800万ポンド、日本円で約17億3,000万円で落札された。

落札予想価格は800万~1,200万ポンド。手数料込みでようやく予想下限に届いた形であり、《ラオコーン》ほどの競争は起きなかった。

作品は近年修復され、制作途中の状態を残す貴重な絵画だった。しかし、作品状態や完成度について判断が分かれた可能性がある。保証が付いていたとみられ、価格としては堅調というより、最低限の着地だったと考えた方がよい。(Observer)

「レンブラントだから高く売れる」のではない。

巨匠の作品であっても、制作年代、保存状態、主題、完成度、市場への出現回数によって、入札の強さは大きく変わる。

メムリンクは作家最高記録

ハンス・メムリンクの《聖母子》は480万ポンド、約7億6,000万円で落札され、作家のオークションレコードを更新した。

このほか、ベルナール・ファン・オルレイが270万ポンド、約5億8,000万円。ボッティチェリの《聖母子と幼い洗礼者ヨハネ》が253万ポンド、約5億5,000万円。コジモ・ロッセリが96万ポンド、約2億1,000万円となった。

セール全体では、11作家のオークション記録が更新されている。(Observer)


絵画・彫刻のイブニングセール単体では、47点で約3,781万ポンド、約81億7,000万円を売り上げた。これはサザビーズ・ロンドンのオールドマスター・イブニングセールとして2019年7月以来の高い総額であり、過去10年間でも3番目の規模となった。



6月のサザビーズでは、英国人コレクター、ジョー・ルイスの旧蔵品セールが開催され、約2億9,630万ポンド、約640億円を売り上げている。

これと7月の約5,130万ポンドを単純比較すると、売上総額は約82.7%減少した。(アート新聞)

ただし、これは市場全体の急落を意味しない。

6月は近現代美術の大型コレクション、7月はオールドマスターが中心であり、出品作品の年代も価格帯も異なる。サザビーズの月次売上は、どのコレクションを確保できたかによって大きく変動する。

前月比というより、「6月に例外的な大型セールがあった」と理解すべきだろう。

11件の記録更新と11件の不落札


今回、11作家の記録が更新された一方、絵画・彫刻のイブニングセールでは11点が不落札となった。(Observer)

この数字は、現在の市場をよく表している。

優れた来歴、希少性、状態、研究上の重要性がそろった作品には、予想価格を大きく超える資金が集まる。しかし、条件が一つでも弱い作品には、巨匠の名前が付いていても入札が入らない。

市場が全面的に回復しているわけではない。作品ごとの選別が、以前より厳しくなっているのである。

7月のサザビーズが示したのは、オールドマスター市場の復活というよりも、代替不可能な作品だけが別格の価格を獲得する市場だった。


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