11月12日 洋服記念日『植毛服条例』(文字数:1654字)
「本日より『植毛服条例』を施行します!」
僕が区役所の記者会見で宣言すると、カメラのフラッシュがいくつも光った。
「快適性向上のため、すべての服に、最低二センチ以上の毛を植えることが決まりました」
記者たちは一斉に手を挙げ、質問した。
「市長! その毛は、どこから調達するんですか?」
「ペットショップ、牧場、どこでもいいです。毛であれば問題ありません」
「市長の毛は使わないんですか?」
僕の耳がピクリと動いた。
「僕の毛? なぜですか?」
「だって市長は『幸運を招く猫』として有名じゃないですか。市長の毛なら縁起が良いから人気が出ますよ」
僕は元々、商店街の看板猫だった。僕が店先にいると売上が上がると評判で、僕がくしゃみをすると宝くじが当たると言われた。そんな噂が広まり、一年前、僕は市長選に担ぎ出され、圧勝したのだった。
「僕の毛に幸運の力などありません。迷信ですよ」
「でも実際、市長就任後、この街の経済は──」
「偶然でしょう」
僕は会見を打ち切ると、秘書が青ざめた顔で待っていた。
「市長! 大変です」
「何だ?」
「市民が『市長の毛を服に植えたい』と殺到しています」
窓を開けると、広場が人で埋まっていた。
「市長ー! 毛を分けてください!」
「就活のスーツに植えたいんです!」
「うちの店の制服に!」
僕は窓を閉めて、秘書に伝えた。
「断ってくれないか。条例はあくまで『植毛』であって、『僕の毛』とは言っていない!」
「でも市民は──」
「却下します!」
その日から、僕の受難が始まった。街を歩けば追いかけられ、役所に行けば待ち伏せされた。ついに僕は自宅に引きこもった。
「市長、三日目です。そろそろ出てきてください」
「外に出たら、毛をむしられてしまう……」
秘書がタブレットを見せた。
「ネット通販で『市長の抜け毛』が高値で取引されています」
「誰が売ってるんだ!?」
「清掃業者です。役所の床に落ちていた毛を集めて売ってるようです」
「もう辞任する!」
「待ってください! 実は提案があります。『市長の肉球タッチ認定制度』はいかかですか?」
「何だそれ?」
「市販の服に市長が肉球でタッチするんです。そこに『市長の肉球型』認定シールを貼れば、『幸運の服』として売れるんじゃないでしょうか?」
「僕がタッチするだけでいいのか?」
翌日、『市長の肉球タッチ認定会』が開催されると、市民が列を作って待っていた。
「次の方、どうぞ」
男性がスーツを差し出すと、僕はそれを肉球でタッチした。
「はい、認定です!」
スタッフが肉球型シールを貼ると、男性は涙を流して喜んだ。
「ありがとうございます! これで面接、受かります!」
次は女性が広げたワンピースにタッチした。
「はい、認定です」
「きゃあ! ありがとうございます!」
次々と服が運ばれ、認定の数は、一日で二千枚を超えた。
一週間後、街に異変が起きた。
「市長! 大変です!」
秘書が飛び込んできた。
「『認定服』を着た人たちから、次々と幸運の報告が! 就職が決まった、恋人ができた、宝くじが当たった……」
「まさか、本当に効果があるのか……?」
「分かりません」
僕は考え込んだ……これはきっとプラセボ効果だ。『幸運の服』だと信じるから、自信を持って行動ができ、その結果、成功したんだ!
僕は急遽、記者会見を開いた。
「皆さん、いいですか。僕の認定に魔法の力などありません。皆さんの頑張った努力が、成功へ繋がっているのです!」
記者が手を挙げた。
「では市長、なぜ認定制度を続けるんですか?」
「背中を押すためです。人間は時々、きっかけが要るのです。『これで大丈夫』と思えるきっかけを、僕は提供しているだけなのです」
会場が静まり返った。
「条例を改正します。『植毛服条例』は廃止し、代わりに『市長の肉球タッチ認定制度』を推進します」
その日から、僕は毎日、ありとあらゆる服に肉球タッチを続けた。
半年後には、『市長の肉球タッチ認定服』は世界的ブームになり、世界中から服が送られてくるようになった。
「はい、認定です!」
『幸運を招く猫市長』として、今日も僕は『肉球タッチ』に勤しんでいる。
11月12日
1872年(明治5年)11月12日に、太政官布告により、それまでの和服礼装が廃止され、洋服が礼服として採用されることになりました。この布告は、日本の衣装文化に大きな変化をもたらし、ファッションの多様化の始まりとなりました。「洋服記念日」は、1929年(昭和4年)に東京都洋服商工協同組合によって制定されました。全日本洋服協同組合連合会も1972年(昭和47年)にこの記念日を制定しています。

2度目のコングラボードをいただきました!
ありがとうございます♪
1度目のコングラボードは、残念ながら残っていないのですが……
下記の記事でいただきました!
いつも読んでくださり、ありがとうございます=^_^=
