建設DXに絞って3年、One Technology Japan は12期目へ ―― 猪突猛進、そして「磨穿鉄硯」
建設DXに絞って3年、One Technology Japan は12期目へ ―― 猪突猛進、そして「磨穿鉄硯」
いま、成田エクスプレスの中でこれを書いています。窓の外を景色が流れていく。これからベトナムへ向かうところです。
そして今日は、私たち One Technology Japan にとって、少し特別な日でもあります。本日から、私たちは12期目に入ります。
正直に言うと、いま、とても晴れやかな気持ちでいます。手放しで「うまくいった」と言える段階では、まだありません。それでも、この朝の空気は、悪くない。今日は、その理由を、少しだけ書かせてください。
この3年、「建設DX」に、すべてを絞りました
いろいろなことをやってきた会社でした。でも、この3年は、思い切って、「建設DX」の一点に絞りました。
現場を、iPhoneやスキャンでデータにして、図面やBIM、検査や記録に活かす。その一本に、会社の力を集めていく。あれもこれも、を手放して、ここで勝負する、と決めた3年でした。この方向は、イメージどおりに進んでいます。私たちのソフトウェアエンジニアも、試行錯誤しながらいくつものプロダクトを作る過程で、建設という業界の業務知識を、着実にためてきました。
ただ、ごまかさずに書いておくと、まだ、PMF(プロダクトが市場にしっかり刺さった、と言い切れる状態)には、届いていません。まだ、途中です。
この1年で、「AI駆動」が、必須になりました
もうひとつ、この1年で、はっきり変わったことがあります。AIを使い倒すことが、当たり前になった、ということです。
私自身は、3年前から、AIをバリバリ使ってきました。でも、1〜2年前は、社員のみんなは、正直、懐疑的でした。「本当に仕事で使えるの?」と。それが、今はどうか。AIを使う人と使わない人で、生産性に大きな差が出るようになりました。 一年で、空気が完全に変わりました。建設業でも、「ChatGPTやGemini、Claudeを使って、こんなことができた」という声を、たくさん聞くようになっています。
でも、「AIをパイプラインに組み込めている」事例は、まだ少ない
ただ、ここに、私たちが狙う“余白”があると思っています。
展示会に行くと、見出しに「AI」と入れていない会社を、ほとんど見かけないほど、AIだらけです。でも、AIを、プロダクトの中に、きちんとパイプラインとして組み込めている事例は、まだ少ないと感じます。
議事録の作成、要約、資料づくり――こういう「部分的な活用」は、もはやツールで当たり前にできる。すごいことです。でも、たとえばAIビジョン(画像認識)との組み合わせや、3Dモデルへの応用となると、話が変わる。プロトタイプでは動くけれど、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を抑える設計や、出力を検証する仕組みがないと、継続して使うには、まだ足りない。
そこを、AIのパイプラインとして組み上げて、地に足のついた“エージェント”にしていく。ここには、需要の手応えがある、と私は見ています。とくに、点群やBIMの処理は、高度な計算と制御が要ります。だから、その分野にこそ、時間=リソースを突っ込んでいく。 そこが、私たちの目指す場所です。
形は、確かに見えてきました
この絞り込みの3年で、輪郭は、はっきり見えてきました。
いま、私たちは、3つのサービス(SaaS)を並行して育てています。住宅の検査――国の制度でいう「既存住宅状況調査(インスペクション)」――を声で支える「Smart Home Inspection」、配管の点群を図面・BIMにする「insightScanX for Pipe」、そして「HOUSECAN」。この秋から冬にかけて、順次、提供開始を目指しています。
受託の側でも、手応えが出てきました。ある大手の空調会社さんから、配管の受入検査アプリのお仕事をいただけました。ある設備会社さんとは、現地調査アプリの実現に向けて、具体的な協議が進んでいます。そして、長く取り組んできた技術は、特許の出願まで、たどり着きました(登録されるかは、これからの審査しだいですが、大きな一歩です)。
事業を始めるとき、私は、ベスト・中間・ワーストの、3つのシナリオを描いていました。いま立っている場所は、正直に言えば、中間とワーストの、あいだ。強いて言えば、中間寄り。絵に描いたベストではありません。でも、最悪でもない。そして何より、ここから伸ばしていける“芯”が、ようやく手の中にある。その感覚が、今日の晴れやかさの、正体だと思います。
会社の中に、「ハイブリッドエンジニア」が育っています
もうひとつ、この3年で、静かに、でも確かに起きていることがあります。
プロダクトを作る過程で、私たちのソフトウェアエンジニアたちに、建設の“暗黙知”が、移り始めているんです。ソフトウェア開発の力と、建設現場の知識。その両方を持つ人材――私たちが「ハイブリッドエンジニア」と呼んでいる人たちが、社内に、一人、二人、三人と、増えてきています。
これは、私が前から重要だと考えている、FDEという働き方に、まっすぐつながる道です。FDEは Forward Deployed Engineer の略で、もとはアメリカのソフトウェア企業で生まれた言葉。オフィスでコードを書くだけでなく、お客様の現場に深く入り込んで、その場で課題を掴み、実際に使えるものを届けるエンジニアのことを、私はそう呼んでいます。
だから、目標は、はっきりしています。いずれは、エンジニア全員をFDEに。 そして、職種を問わず、全員が“現場起点”で考えられる組織に。その力で、Scan to BIM(現場のスキャンから、使えるBIMへ)の領域に、イノベーションを起こす。 これが、私たちの旗です。

正直に書いておきたい、この3年のこと
きれいごとだけでは、終われません。
この3年、私は、自分の身も、会社の身も、かなり引き締めてきました。一点に賭ける、という選び方をしてきた。その分、会社のみんなには、かなりのストレスをかけてしまったかもしれません。 そこは、代表として、認めておきたいのです。
それでも、みんなは、走ってくれました。一人ひとりが、それぞれの持ち場で、Curiosity(好奇心)と Challenge(挑戦)を、絶やさずにいてくれた。私たちが大事にしてきたこの2つの言葉を、私が旗を振るまでもなく、みんなが体現してくれていた。一人では、何一つできませんでした。 いま形が見えてきているのは、まぎれもなく、みんなのおかげです。感謝は、言葉にしきれないほど、あります。
そのうえで、あえて書きます。熱量は、緩めるつもりはありません。 ただ、同じやり方で量を増やすのではなく、やり方そのものを磨いて、持続的に走れる会社にしていく。ここは、次の一年の宿題です。
最近、「磨穿鉄硯」という、いい言葉を知りました。読みは「ませんてっけん」。強い意志を持ち、成し遂げるまで志を変えないこと、そして、たゆまず励むことを表す言葉です。中国五代の桑維翰(そうい かん)が、鉄の硯(すずり)を示して勉学への覚悟を貫き、最終的に念願の試験に合格した、という故事に由来するそうです。

猪突猛進で、まっすぐ突っ込む。でも、ただ突っ込むだけじゃない。一点を、鉄の硯に穴があくまで、磨き続ける。いまの私たちの気持ちに、これほど合う言葉はないな、と思いました。
成田エクスプレスの中で、考えていること
電車は、もうすぐ空港に着きます。これから向かうベトナムでは、現地の仲間たちが待っています。彼らと顔を合わせられるのが、素直に、とても楽しみです。ワクワクした気持ちと、同時に、ここからだ、と身の引き締まる気持ちと。その両方を抱えて、飛行機に乗り込みます。
不思議なもので、こうして移動している最中、私の頭の中で回っているのは、経営の数字でも、来期の計画でもなくて――**「どうやったら、あのアプリが実現できるだろう」**という、ただそれだけです。現場の、あの面倒を、どうやったら軽くできるか。あの検査を、どうやったら、もっと速く、正確にできるか。
たぶん、これが、私という人間の、いちばん芯にあるものなんだと思います。12期目の朝に、それが変わっていないことが、少しうれしい。
まだ道の途中ですが、絞り込んだ先に、確かに光が見えています。一緒に走ってくれる仲間に、支えてくださるお客様に、あらためて感謝を込めて。12期目も、猪突猛進の勢いと、磨穿鉄硯の覚悟を胸に、進んでまいります。ベトナムの空の下で、また一つ、現場を少し前へ進める方法を、見つけてきます。成田エクスプレスはそろそろ成田に到着です。
WHAT A WONDERFUL DAY TODAY!
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▶ はじめての方へ|なぜ「熱と余白」なのか(自己紹介)
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