デジタルツインの"入口"は、誰が持つのか ―― 箱を作る人は増えた、現実を流し込む人が足りない
デジタルツインの"入口"は、誰が持つのか ―― 箱を作る人は増えた、現実を流し込む人が足りない
「デジタルツイン」という言葉を、最近よく見かけます。現実の建物や街を、そっくりそのままデジタル空間に写しとって、シミュレーションや管理に使う――そんな話です。
ただ、その議論を眺めていて、私はいつも同じところが気になります。多くが「どう作るか」、つまり可視化やシステム連携の話に寄っている。でも、本当に詰まっているのは、そこじゃない気がするんです。「その箱に、何を流し込むのか」。デジタルツインの"入口"のほうが、よほど空いている。今日はそんな話を書きます。
デジタルツインの議論は、なぜか"箱"の話ばかり
デジタルツインと聞くと、きれいに動く3Dモデルや、センサーとつながったダッシュボードを思い浮かべる方が多いと思います。見た目が華やかなので、話題もそちらに集まりやすい。
でも、少し立ち止まって考えると、その"箱"に入れる中身――現実の建物のデータが、そもそも揃っていないことが多いのです。立派な3Dがあっても、それが現実の寸法や状態と一致していて、判断に使えるかどうかは、また別の話。箱は立派になったのに、中身が追いついていない。 これが、私の見ている景色です。
いま効いてくるのは「属性つき」で「使える」ツイン
もうひとつ、最近はっきりしてきた流れがあります。デジタルツインは、ただの"形"では足りない、ということです。
「これは扉」「これは柱」「この配管はこういう仕様」――そうした**属性(意味の情報)**がついて初めて、改修の検討や、維持管理、積算(数量やコストの見積もり)に使えるようになる。ただの3D形状だけでは、そこまで届きません。
こうした「現場のDX」をテーマにした共創も、少しずつ動いています。たとえば、神奈川県が運営するオープンイノベーションの公募「BAK(ビジネスアクセラレーターかながわ)」。県内のベンチャーと大企業・自治体の共創を後押しする県の事業で、建設現場のDXや建築材料のAI評価といった、建設まわりのテーマも実際に扱われています(出典:神奈川県、KANAGAWA STARTUPS)。私自身は、「見えるだけのツイン」から「使えるツイン」へと、関心が移り始めているように感じています。
でも、「図面のない既存建物」という入口が空いている
ここで、大きな壁が出てきます。属性つきの"使える"ツインを作るには、元になる正確なデータが要る。ところが、既存の建物では――図面が残っていない。古い図面しかない。あるいは改修を重ねて、現況と食い違っている。そんなケースが、珍しくありません。
新築なら、最初からBIM(属性つきの3Dモデル)で設計することもできます。でも、改修で向き合うのは、当然ながら既存の建物です。この「図面のない現場」を、どうやってデジタルツインの入口に乗せるのか。ここが、いちばん空いているところだと、私は見ています。
だからこそ、現場をスキャンしてモデルに起こす「Scan to BIM」が効いてきます。ただ、ひとつ補足を。スキャンで取れるのは、主に"現況の形と位置"です。「これは扉」「この配管はこの仕様」といった意味・属性は、別の資料や、人の確認・入力で与える――別の工程になります。形を取ることと、意味を与えること。この二段構えを分けて考えるのが、案外だいじです。
制度の側も、少しずつ動いています。2026年4月には、建築確認でBIMから出力した図書やIFCデータを活用する「BIM図面審査」が始まりました。2026年時点では、IFCは建物の形状把握など審査の参考に活用されますが、建築基準関係規定への適合性そのものを審査する対象ではありません。さらに2029年春には「BIMデータ審査」の実現が目指されています(出典:国土交通省)。箱(ツイン)や制度が動きだしている一方で、そこに現実を供給する"入口"は、まだ追いついていない。そう感じています。

入口は、誰が持つのか
整理すると、こういうことです。デジタルツインの箱を作る人、可視化の基盤を作る人は、ずいぶん増えました。でも、そこに現実を正確に流し込む人――"入口"の担い手は、現場で仕事をしている私の目には、まだ少ないように見えます。
念のため書いておくと、これは「スキャン会社が全部やれる」という話ではありません。制度への対応や、設計・確認の判断は、建築士や確認検査機関の領域です。入口は、あくまで大きな分業の中の一工程。ただ、その一工程が埋まらないと、どれだけ立派なツインを用意しても、中身が入らないまま止まってしまう。
私たちは、"入口"の側をやる
私たちONETECHが賭けているのは、まさにこの入口の側です。図面のない、ぐちゃぐちゃな現場を、どうにかしてデータに変える。現況の形を取り、そこに意味をのせて、BIMや図面につないでいく。派手ではありません。むしろ地味な前工程です。でも、ここが埋まらないと、デジタルツインは絵に描いた餅で終わってしまう。
「入口は誰が持つのか」。この問いに、私は「自分たちがやる」と手を挙げていたい。もし現場のデータ化やScan to BIMで悩むことがあれば、onetech.jp からのぞいてみてください。
華やかな"箱"の話に、つい目がいきます。でも、現実とデジタルをつなぐ地味な入口こそ、これからいちばん効いてくる。今日も、目の前の現場を、面白がってデータに変えていきましょう。
WHAT A WONDERFUL DAY TODAY!
【お知らせ】ベトナム最大級の建設展示会「VIBE 2026」共同出展、募集を延長しました(9月10日まで)
ありがたいことに反響をいただき、日本企業の共同出展企画の募集を、9月10日まで延長しました。
- ベトナム最大級の建設展示会「**VIBE 2026**」
- 日本企業の共同出展企画(まとめて出展するので、初めての海外展示会でも安心)
- 中小企業から参加OK
- 1テーブル 116,000円から
「ベトナムに関心はあるけれど、単独出展はハードルが高い」――そんな中小企業さんこそ、ぜひ。現地のネットワークは、ベトナムのパートナーと一緒にご案内します。詳しくは onetech.jp まで、お気軽にどうぞ。
(参考)
・ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK):神奈川県 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/sr4/cnt/f537611/bak01.html / KANAGAWA STARTUPS https://startups.pref.kanagawa.jp/program/bak-yak/
・BIM図面審査 申請・審査マニュアル(初版 令和8年3月24日版・建築BIM推進会議):国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001990524.pdf
――――――――――
▶ はじめての方へ|なぜ「熱と余白」なのか(自己紹介)
https://note.com/nkawam/n/n8c00e8f6d2bd
▶ 私たちの実例と、共創パートナー募集|図面がない現場から、iPhoneで
https://note.com/nkawam/n/n52cd688f7cce
▶ ほぼ毎日更新|3分でわかる ベトナム建設ニュース(マガジン)
https://note.com/nkawam/m/ma83f297fd0d1
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

