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【読者連動】コーラルピンクな休日(アトラと虹色の本④)

~企画参加者さんたちとつくる、アトラの物語~

あらすじ

友達がいないことに悩む高校1年生のアトラは、図書室で色の変わる不思議な本を見つける。しばらくたった梅雨のある日、アトラはと男の子と出会い、2人で作品の世界を共有する。男の子はアトラの初めての友達になってくれるのか。

放課後の図書室は、曇りガラス越しの柔らかな午後の光に包まれていた。今日はたくさんの本を借りてしまった。でも、一番気になるのはあの本。アトラはいつもの席に、コーラルピンクに輝く本をそっと広げる。どんな作品が読めるんだろう。

「文野アトラさん、だよね?」

棚の向こうから聞こえた声に、アトラは驚いて顔を上げた。そこに立っていたのは、放課後のバス停で出会ったあの男の子だった。

「どうして私の名前を……?」
息を呑むアトラに、男の子は柔らかく微笑んだ。
「図書カードでよく見るから。高1でこんなに本をたくさん借りる子、ほかにいないし」
アトラの胸の奥に暖かいものが込み上げてくる。
「本、好きなんだ?」
「もちろん」
アトラにも思い当たる人がいた。好きな本の貸し出しカードにはいつも1人男の子の名前があった。今日借りている本にも確か。

「もしかして、岡野昴くん?」
借りていた本に挟まっていた図書カードをひらひらさせて、アトラは尋ねた。
「そうだよ」
昴は顔いっぱいの笑顔で応じた。

「次の休みに、一緒にカフェに行かない?」
最近楽しい作品ばかり読んでいるからだろうか。アトラは勇気を出して誘った。

「……うん、行こう」
ちょっと恥ずかしそうに、昴はうなづいた。

土曜の午後、木漏れ日が揺れるカフェで、アトラと狩野昴は、テーブルに開かれたパッションピンクの本を覗き込んでいた。

「この招待状を受け取られたあなた様、おめでとうございます。」

素鼠和季『名前のない休日からの招待状』

横に昴がいる。ページをめくっているだけだけど、何もしていないけれど、間違いなく特別な休日だと感じた。

アトラ
:「何もしない贅沢ってあるよね。遠くにいくのも疲れちゃうし、カフェとかリラックスできる場所でダラダラしてたい」
:「確かに。バイトも勉強もサボってのんびりできたら楽しそう」

昴君は何のバイトをしているんだろう?なんで働いているんだろう?尋ねたかったけれど、彼の読書の時間を邪魔したらいけない気がした。

曇りガラスをゆっくりと拭く
まだ温い空気に
静かな音を重ねながら

naru『ある喫茶店の休日』

猛暑だからだろうか。カフェの中にはアトラと昴、店長の3人だけ。店主はゆっくりとカップやグラスを拭いている。

:「このお店本当にいいね。自分たちだけの時間に浸れる感じ」
特製のサンドウィッチを頬張りながら昴はつぶやいた。
アトラ:「そうでしょ、コーヒーゼリーも、香ばしくて美味しいんだよ」

おしゃべりを求めてる
草や木の葉に
さわさわと
無限の風たちを 
そよがせている日なの

みっちゃん「麗しい日」

アトラと昴が息を潜めると、窓の外の木の葉を風が揺らす音が聞こえた。アトラは窓に近づいてそっと手をかざす。

僕はみかん家の飼い猫ヒョヌです。

僕の悩みを聞いてくれますか?

みかんは最近僕と遊んでくれないのです。

片桐 みかん「名前のない休日」

アトラの指の隙間から夕焼けの日が差し込む。夕日をバックにひょこりと猫が顔をみせる。
:「家出しているのかな?」
アトラ:「そうかも、でももう飼い主さんちに帰るんだよ」

雲がゆっくりと流れていく。形を変えながら、どこまでも続く青い空を漂っている。いつから、こんなふうに空を見ていなかっただろう。

SKY「お母さんの褻の日」

アトラ:「そろそろ帰ろうか」
:「うん、雲を見ながらね」
アトラは、生まれてから今日が一番素敵な日だと思った。テーマパークに行ったわけでも、映画を見に行ったわけでもない。なんてことのない休日だけど、こんなに近くに誰かがいて、同じ作品を読んでいる。


二人はしばらく言葉を交わさず、カップの縁を見つめた。ページをめくるごとに新たな文字が浮かび上がる。最後に閉じたとき、パッションピンクの表紙はゆっくりとスカイブルーに変化していた。

「次はどんな話が待ってるかな?」とアトラが微笑むと、昴も同じように笑って答えた。
「また一緒に探そう」

二人の帰路を、うさぎの形をした雲が見つめていた。


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