オルゴールの起源は「カリヨン」|教会の鐘から生まれた自動演奏の歴史【オルゴールと京都 vol.3】
オルゴールの起源「カリヨン」
オルゴールの起源をたどると、教会の塔に据えられた鐘の楽器「カリヨン」に行き着きます。
オルゴールは1796年頃、スイスの時計職人アントワーヌ・ファーブルによって発明されたといわれています。
当時はまだ蓄音機もレコードもなく、音楽を聴くには演奏会へ足を運ぶしかありませんでした。そのため、機械が自動で美しいメロディーを奏でるオルゴールは、当時の人々にとってまさに「音楽を持ち歩ける発明」として大きな驚きをもって迎えられました。
そして、そのオルゴールのルーツこそが、教会の塔などに設置されていた鐘の演奏装置「カリヨン」だったのです。
教会の塔から始まった音楽の自動演奏装置
もともと教会の鐘は、人々へ時刻や出来事を知らせるための合図として鳴らされていました。ところが15世紀頃になると、音の高さが異なる複数の鐘を組み合わせ、旋律を演奏する「カリヨン」が各地で作られるようになります。
カリヨンには、人が紐を順番に引いて鐘を鳴らすものや、鍵盤やペダルを操作して演奏するものがあります。一方で、筒状の「ドラム」をハンドルで回し、自動で演奏する仕組みも発達していきました。

カリヨンとオルゴールの違いとは──大きな鐘から、小さな櫛歯へ
この自動演奏型カリヨンでは、ドラムが回転し、植え込まれたピンが、鐘を叩く打撃レバー(クラッパー)を順番に動かすことで、美しいメロディーを奏でます。
この仕組みをさらに小型化し、より複雑な音楽を演奏できるようにしたものが、オルゴールなのです。
オルゴールには大きく分けてシリンダーオルゴールとディスクオルゴールの2種類がありますが、最初に広く普及したのはシリンダーオルゴールでした。
このシリンダーオルゴールの「シリンダー」は、カリヨンのドラムとほぼ同じ考え方で作られています。筒状の金属に無数のピンが植え込まれ、そのピンが音楽の情報を記録しています。
そしてゼンマイの力でシリンダーを回転させると、ピンが音源となる櫛状の金属板「コーム」の櫛歯(弁)を順番にはじき、美しい音色を奏でます。

つまり、「ピンで演奏する」という基本構造は、カリヨンとオルゴールで共通しているのです。
もちろん、鐘ではなく金属の櫛歯を振動させるため、装置は飛躍的に小型化されました。さらに櫛歯の数を増やすことで、カリヨンでは難しかった複雑で繊細な旋律も演奏できるようになりました。
巨大な教会の鐘が、卓上で楽しめるオルゴールへ――。
そこには、数百年にわたる機械技術の進化が息づいています。
今も街に響く、オルゴールのルーツ
オルゴールの起源となったカリヨンは、現在でも街や広場のモニュメントとして、日本各地でその音色を響かせています。
京都府内では、宇治市役所前にある「平和の鐘」が有名です。20個の鐘を使い、毎正時にさまざまな曲を演奏しています。また、JR亀岡駅前にも15個の鐘を備えたカリヨンがあり、時間ごとに異なるメロディーを楽しむことができます。


実は、ニデック オルゴールショールームから徒歩約20分の場所、四条烏丸の大丸京都店の敷地内にもカリヨンがあります。
残念ながら2024年に演奏は終了してしまいましたが、それまでは毎時「諸人こぞりて」などの美しいメロディーが街に響いていました。現在はYouTubeなどで当時の演奏を聴くことができ、その音色を知る人にとっては懐かしい思い出となっています。

カリヨンは大型の設備であるため、維持管理や修理には多くの費用がかかります。そのため、惜しまれながら姿を消したものも少なくありません。
それでも、全国には今なお時を告げ、美しい旋律を奏で続けているカリヨンが数多く残っています。
旅先で街を歩く機会があれば、ぜひカリヨンを探してみてください。
そして、その鐘の音色に耳を傾けながら、「この仕組みが、やがてオルゴールへと受け継がれていったのだ」と思い浮かべていただければ、普段とは少し違った景色が見えてくるかもしれません。
(A.Hisada)
▼シリーズ「オルゴールと京都」
京都でアンティークオルゴールに出会える「永守コレクションギャラリー」【vol.1】
オルゴールの音色を支える「金属」の物語|京都・御金神社との意外な関係【vol.2】
#オルゴール #カリヨン #京都 #宇治 #亀岡 #大丸京都店 #ニデック #音楽の歴史
