【僧侶上田隆弘の世界一周記】世界の宗教と歴史を巡る旅~僧侶の私がなぜ旅に出たのか
私は「宗教とは何か」をテーマに2019年3月末から80日をかけて13カ国を巡る世界一周の旅に出ました。 そのルートはタンザニア→トルコ→イスラエル→ポーランド→チェコ→オーストリア→ボスニア・ヘルツェゴビナ→クロアチア→イタリア・バチカン→スペイン→アメリカ→キューバです。
「僧侶なのに仏教誕生の国インドに行かないの?」と思われた方もおられるかもしれませんが、私にとって「宗教とはそもそも何なのか」を問うた大切な旅です。
この時の体験が当ブログの原点になっています。これから先2019年当時の私の記事を再構成した旅行記を紹介していきます。今読み返してみると若さを感じる文章で私も恥ずかしさを覚えるのですが、当時の私のありのままがそこにあります。今の私との違いも感じて頂けたら幸いでございます(笑)
普段なかなか見ることのない宗教の聖地や現地の様子を僧侶の視点から綴った旅行記です。普通の旅行記とは一風変わった視点の旅行記となっていますのでぜひ楽しんで頂けましたら幸いです。
では、本編に入っていきましょう。
はじめに
突然ですが私、上田隆弘は今月3月26日(※2019年当時)に日本を出国し、
タンザニア→トルコ→イスラエル→ポーランド→チェコ→オーストリア→ボスニア・ヘルツェゴビナ→クロアチア→イタリア・バチカン→スペイン→アメリカ→キューバ
と13か国を巡り6月14日に帰国する予定です。
「いきなりどうしたの?」とお思いになられる方もおられるかもしれませんが私にとっては1年半ほど前から準備を重ねてきたとても思い入れのある旅になります。
と言いますのも、私は大学時代、文学部で宗教学を学んでいました。
その時から仏教だけではなくキリスト教や文化人類学、心理学など様々なことに興味を抱くようになっていきました。
そして大学院で浄土真宗を専門に学んでいくうちに、ますます他の宗教や文化に目が向くようになっていきました。
私は、お寺が何なのかをもっと知りたい。
自分の信じる仏教が何なのかをもっと知りたい。
お坊さんとして生きていくとは、そもそもどういうことなのだろうか。
私はどうやら、納得いくまで考えてみないと気が済まない性分なようです。
私は浄土真宗の僧侶として納得した上でその職を全うしたい。
そしてそれに満足して終わらずに考え続けていきたい。
私はそう思うのです。
そして自分という「こちら側」を知るためには、他者という「あちら側」の存在が不可欠だと私は思います。
私たちは「私たち自身」だけで独立して出来上がっているわけではありません。
「あちら側」がなければ「こちら側」も存在しないのです。
だからこそ、他の宗教や世界の歴史を学ぶことで仏教という「こちら側」もより鮮明に見えてくるのではないでしょうか。
違いが分かればより仏教や日本というものの見え方も変わってくるのではないかと私は思います。
ユダヤ・キリスト教の『聖書』やイスラム教の『クルアーン』を読んでみますと、面白い発見が次々と現れてきます。
地域や時代、文化が違うと、ここまで考え方も変わってくるのかとわくわくさせられます。
また、私たちと似た面や共通するところが見つかると思わず「う~んなるほどなぁ」とうならざるをえない興奮を味わう時もあります。
私はこれまで、それらの大部分を本によって学んできました。
私にとってそれらは本当にかけがえのないものになりました。
ですが、だからこそ、私はこう思ったのです。
「本で学んできたことを現地で見てみたい!」
「これまで本の上で得てきたものを私は現地でどう感じるのだろうか!」
私は現地に行ってみたくてしょうがなくなってしまいました。
それが今回私がこの旅を決めた理由です。
今回私が巡るルートは選びに選んだルートです。それぞれの地に私の思い入れがこれでもかと詰まっています。
この旅の経験を通してその国ごと、都市ごとに宗教や歴史、文化を
「日本人」、「僧侶上田隆弘」
という視点からお話しさせていただけたらなと考えています。
私はヨーロッパに行ったこともなければ、1週間以上の長期旅行の経験もございません。不安ももちろんありますが、この旅を本当に楽しみにしています。
これからもお付き合いいただけましたら嬉しい限りでございます。
旅の最初の目的地「タンザニア」ってどんな国?
さて、ここではまず世界一周の最初の目的地、タンザニアについてお話しさせていただきます。
タンザニアはアフリカの中央辺りにある国で、人口は5700万人ほどの国だそうです。
とはいえ、いきなりタンザニアと聞いてもなかなかイメージが湧いてこないのではないでしょうか。
かくいう私もこの旅を思い立つまでは全く想像もつきませんでした。
ですがみなさん、「キリマンジャロ」という地名ならば聞いたことがあるのではないでしょうか。
コーヒー好きの方なら特にピンとくることかと思います。
そうです、そのキリマンジャロがここタンザニアにございます。
私はこのキリマンジャロをスタート地点にこの国での最大の目的地オルドバイ渓谷へと向かいました。
オルドバイ渓谷とは
オルドバイ渓谷は人類発祥の地と呼ばれています。ここで1959年に約180万年前のアウストラロピテクスという人類の祖先の化石が発掘されました。
この発見によって人類の祖先の研究に一躍世界の注目が集まるようになり、オルドバイ渓谷も名を馳せることとなりました。
(※現在では発掘、研究が進み人類最古の化石は約700万年前にまでさかのぼり、アフリカの様々な地で化石が見つかっています。つまり、正確には人類発祥の地ではありませんが、ここから人類研究が始まったという意味で人類発祥の地と私は考えています)
そしてこのオルドバイ渓谷はンゴロンゴロ保全地域の中にあります。
ンゴロンゴロ。日本人にはなじみのない発音の地名ですが、、、
実はこのンゴロンゴロもとっても有名な場所です。
世界遺産にも登録されていて、動物の楽園と呼ばれているそうです。
そしてこのンゴロンゴロは「水曜どうでしょう」のロケでも訪れた場所として知られています。(水曜どうでしょうファンの私としてはたまらない場所です)
タンザニアでは現地のサファリの会社の方にお願いして旅を進めていきます。私個人ではとてもじゃありませんが行ける場所ではありませんでした。
キリマンジャロからアルーシャという町に入り、そこからサファリカーでンゴロンゴロへ向かいオルドバイ渓谷を目指します。
なぜわざわざオルドバイ渓谷に?
オルドバイ渓谷が人類発祥の地と言われるのはわかったとして、なぜ僧侶である私がはるばるそこまで行かねばならなかったのか。
そのきっかけをくれたのがフランス・ドゥ・ワールという人物でした。

フランス・ドゥ・ヴァール
1948年オランダ生まれ。エモリー大学心理学部教授、ヤーキーズ国立霊長類研究センターのリヴィング・リンクス・センター所長、ユトレヒト大学特別教授。霊長類の社会的知能研究における第一人者であり、その著書は20以上の言語に翻訳されている。米国科学アカデミー会員2007年には米「タイム」誌の「世界で最も影響力のある100人」、2019年には英「プロスぺクト」誌の「世界のトップ思想家50人」のー人に選ばれた。邦訳された著書に、『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『道徳性の起源』『共感の時代へ』(以上、紀伊國屋書店)、『チンパンジーの政治学』(産経新聞出版)、『あなたのなかのサル』(早川書房)、『サルとすし職人』(原書房)、『利己的なサル、他人を思いやるサル』(草思社)ほかがある。
フランス・ドゥ・ヴァールはオランダ出身の霊長類学者で、上のプロフィールにもありますように、世界に非常に大きな影響を与えている研究者のひとりです。
そして私はこの人物の『道徳性の起源』という本を読み、衝撃を受けることになったのです。
この作品はチンパンジーやボノボの研究を通して得た知見を基に人間の道徳性や宗教について語っていきます。
私たちの道徳はどこから生まれてきたのか。性善説、性悪説、人間ははたしてどっちなのか。こうした議論はこれまで、哲学的、思想的な側面から語られてきました。
しかしドゥ・ヴァールはそれらは人間だけにあるものではなく、動物にも存在するものであり、人間だけが特権的に善悪の基準を持っているわけではないことを語ります。
私たちは自分たちのことを「他の動物とは違う存在」であると思ってしまいがちです。
つまり、「言葉を操り、道具を使い、知能も高い存在である我々人間は生物種の頂点である」と考えがちですが、私たちも動物の一種です。私たちと動物を隔てる壁は思ったよりも薄い、いやほとんど壁など存在しないようなものだということがこの本を読めばよくわかります。
人類が知性を発達させたのは厳しい環境下で生き抜くためでした。
もともと人類はアフリカのジャングルの住人でした。広大なジャングルの樹上でひっそりと果物などを食べながら生きていました。
しかし氷河期が始まると、ジャングルが減り、木の少ないサバンナの大平原に世界は一変します。
サバンナにはライオンをはじめ、大型肉食獣が山ほどいます。
さらに果物を実らせる木もなくなってしまいました。食糧難です。
氷河期の前までは、ジャングルの木に登ってしまえばライオンから逃れることが出来ました。しかもその木の上には食料たる果物もたくさんあります。
しかし氷河期の始まった今、人間は危険なサバンナの大平原に投げ出されることになってしまいます。
そこで生き残るために発達し進化させたのが知能であり、道徳であり、その長い道筋の先に宗教が生まれてきたのでありました。
ここでこう疑問に思われた方もいるかもしれません。
「ジャングルが全部なくなったわけでもあるまいし、サバンナにだって木はあるじゃないか。そこで暮らせばよかったのに」
そうなんです。まさしくその通りです。
ですが、それは出来ませんでした。
なぜなら、そこは私達のご先祖様より強い様々な生物が支配する場所だったからです。
実は人間は自然界において、弱者以外の何者でもなかったのです。
例えばですが、大型霊長類であるチンパンジーを甘く見てはいけません。その戦闘力たるや凄まじいものです。人間の体をいとも簡単に細切れに引き裂く腕力を持ち、鋭い犬歯は骨をも砕く威力を持ちます。
氷河期には樹上の安全地帯は完全に彼らの支配下にありました。数少ない安住の地に、弱者たる人類の入る余地はどこにもなかったのです。
その弱者たる人類が生存のために身につけた能力。
それが知能やそれに基づく集団行動と結束力であり、やがて道徳や宗教へとつながり、人類は今日のように自然界において今の地位に君臨するようになりました。
私たちの中には生物の本能として善悪の基準があり、社会を生きる中でそれが私たちを動かしているとドゥ・ヴァールは述べます。ここに霊長類学者として長年研究を続けた学者の特徴が表れています。
私達人間も動物です。
人間だけが特別じゃない。
道徳も宗教も、動物として生き延びるために生まれてきた。
だとしたら、道徳も宗教もなかなか捨てたものじゃない。
大きな意義がそこにある。
私はそのことにとても勇気づけられたような気がしました。
この本を初めて読んだ時、私は衝撃を受けました。
「自分は動物なんだ・・・」
わかっていたつもりではありましたが、どうやら全然わかっていなかったようです。
人間とその他の動物は何かが決定的に違うのだと思い込んでいました。
ですがそうではなかったようです。
この本は今まで私の中にまったくなかった発想や視点を与えてくれました。
私の中の人間に対する考え方をがらっと変えてしまった瞬間でした。
「見たい!人類の始まりを!その地で人間がそう進化せざるをえなかったという人類発祥の地を!」
衝撃のあまり、このことで私の頭はすっかりいっぱいになってしまいました。
実は人類の発祥の地を訪れたいというこの思いこそ、今回の世界一周の直接のきっかけでした。
オルドバイ渓谷のあるタンザニアに行くには飛行機も乗り継ぎがいくつか必要です。
せっかくアフリカまで行くのにそこだけで帰ってくるならもったいない。
なら他にも行ってみたかったところはたくさんあるぞ?
そうして今まで学んできたことと向かい合わせになりルートを決めていったのが今回の世界一周の旅です。
だからこそ、オルドバイ渓谷から始めなければならないのでした。これが私がわざわざオルドバイ渓谷を選んだ理由になります。
旅のはじまり~日本出国、タンザニアへ
さて、ながながとお話ししてきましたが、いよいよ私の世界一周旅行が始まります。
今現在、私はタンザニアのアルーシャという町に来ています。(※2019年3月当時)
ここはキリマンジャロ空港から西へ1時間ほど車で走ったところにある町で、ンゴロンゴロへのベースキャンプになる場所です。
成田を離陸してからほぼ丸1日をかけてようやくタンザニアに到着しました。

暑いです。最高気温32度!
日差しが強い!
北海道民にはこの温度差はなかなか厳しいです。
キリマンジャロ空港からアルーシャまでの1時間。

ここアルーシャは水の豊かな土地なそうで、畑も多く、水田もあるそうです。
さて、このような美しい景色を眺めているうちに、私はふと思いました。
「この景色を、これから体感することを、できれば自分の言葉で伝えたい。」
「写真もいいけど、言葉で伝えたい。」
私はこの旅行中は写真をメインに、できるだけ簡潔にこの旅の模様を記事にしていきたいと考えていました。
しかし、いざ現地に来てみると、「やはり言葉で伝えたい」という思いが私の中からふつふつと湧いてくるのを感じました。
と、いうことで!
これからの記事はより旅行記風に書いていくことにします!
次の記事から文体がいきなりがらっと変わるので、ご容赦くださいね(笑)
温かい目で見守ってくだされば幸いです。
いよいよ明日ンゴロンゴロへ出発します。
この記事は以前当ブログで公開した以下の記事を再構成したものになります。
この記事は総集編ということで元記事とは内容も多少異なります。興味のある方はぜひ元記事もご参照ください。
以上、「【僧侶上田隆弘の世界一周記】世界の宗教と歴史を巡る旅~僧侶の私がなぜ旅に出たのか」でした。
次の記事はこちら
『世界一周記』記事一覧はこちらのまとめ記事にて
関連記事
