榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』レミゼファン必読のおすすめ漫画!
榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』あらすじと感想~レミゼファン必読のおすすめ漫画!
※この記事には少しネタバレがあります。気になる方はご注意ください。
今回ご紹介するのは2024年10月にKADOKAWAより発行された榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』です。
早速この本について見ていきましょう。
『レ・ミゼラブル』を「ABCの友」の学生たち目線で描く群像譚、開幕。
19世紀フランス、パリ。
貧富の差は広がり、権力は腐敗の一途を辿る。
街角では憲兵の目をかいくぐりながら、
反政府運動が活発化していた。
救済院でボランティアをするお人好しな医学生・コンブフェールと、
積極的に学生運動を行う美しき青年活動家・アンジョルラス。
ふたりの出会いは、哀れな人々《レ・ミゼラブル》の
希望となるか、憂いとなるか──
この作品は『レ・ミゼラブル』ファンにぜひぜひおすすめしたい漫画です。
私がこの作品を手に取ったのはX(旧Twitter)でのこちらのポストがきっかけでした。ポスト内の動画をぜひご覧ください。
「レ・ミゼラブル」に登場する
— AKI(榮恵愛)🇫🇷②巻発売中⇨ルールブルーの友らへ (@a_k_i_511) November 15, 2024
革命を志す男の子たちのお話です。
⬇️試し読み&コミックス情報、特典情報などはこちらから!⬇️https://t.co/UzjKaltp44#グロウルポスト#LesMisérables pic.twitter.com/giOUu9Clb5
『レ・ミゼラブル』ファン、特にミュージカルを愛する方にとって「ABCの友」の存在はとてつもなく大きなものがあります。かく言う私も劇中の「ABCカフェ」の歌が大好きで、そこからの「民衆の歌」の流れや「ワン・デイ・モア」はもうたまりません。最高です。やはりレミゼには彼ら「ABCの友」は欠かせません。
今作『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』はそんな「ABCの友」を深く掘り下げた作品になります。
上のポスト内の動画にありますように、この作品は「ABCの友」結成の前から物語が始まります。レミゼ本編では虚しく散る彼ら革命の学生たちではありますが、その彼らがいかにして集い、結束していったのかが物語られます。本編では彼らはすでに「ABCの友」として完成されていましたが、その前哨譚を見れるのはファンとしても実に嬉しいものがあります。
そして書名の『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』にありますように、この作品は『レ・ミゼラブル』に対する強いリスペクトが感じられます。
そして私がこの漫画を読んで最も心に来たのは、「革命を単に理想化しないこと」でした。言葉にすればシンプルな話ですが、これはなかなかできることではありません。と言いますのも、レミゼのミュージカルでは彼ら革命学生達はあまりに爽やかで好人物たちばかり、しかも理想に殉じて命を燃やし壮絶な最期を迎えます。つまり、彼らの革命はあまりにロマンチックで理想化されたものになっています。このロマンチックな彼らの姿がミュージカルの魅力なのは間違いありません。私もこうしたドラマチックな展開に惹かれている人間の一人です。
ただ、残念ながら一歩引いて現実的に考えると「フランス革命」を理想視して再び王政を倒すのだという考えはあまりに暴力的であり無謀であったというのも否定できません。そもそもフランス革命自体が本当に民衆の自由のための革命で、民衆の生活が良くなったのかという問題があります。こうした問題は以前当ブログでも紹介したG・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』やP・マクフィー『フランス革命史 自由か死か』、『ロベスピエール』などでも語られていました。フランス文学者鹿島茂先生の『職業別 パリ風俗』や『馬車が買いたい!』、西永良成著『『レ・ミゼラブル』の世界』も当時の時代背景を知るのにおすすめの参考書です。
さて、話は少し大きくなってしまいましたが、私個人としては革命を理想視するあり方には危険を感じています。今作『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』も「ABCの友」を描いた漫画ということで、そういう作品かもしれないという警戒心も正直あったのですが、読んでみて驚きました。著者は単に暴力革命を理想視した「ABCの友」を描いていたのではなかったのです。さらに言えば、様々な出自や個性を持った多種多様な学生が集まる多面的な集団を描き出していました。「これはお見事!」と私も感銘を受けました。
特に「自由のために、やつらを断頭台へ!」と暴力革命を純粋に志向するアンジョルラスに対してのコンブフェールの次の言葉は秀逸です。
・・・その志は立派だよ でも 君たちのやり方は英雄譚に憧れているだけに見える
考えてみてほしい
40年前の大革命は本当にこの国を変えたのか・・・?
たくさんの血を流して社会を混乱させた その結果が今のパリを生んだんじゃないのかな・・・?
僕たちは 変革を求めるべきだ
でも 暴力に頼るべきじゃない
国が弱い者を見捨てるなら
僕らが手を差し伸べる
僕らが団結して助け合うことはこの国を変える第一歩になる
1789年にとどまる必要はない
僕らは新しい方法でこの国の未来を・・・
この言葉にアンジョラスは「ハッ」と目が開かれることになります。このアンジョルラスの変化、いや成長はこの漫画の大きな魅力となっています。理想に忠実で完璧な美男子たるアンジョルラスではありますが、やはり彼はどこか人間味を感じさせない大理石のような存在でありました。ですがそんな彼の未熟さや堅物ぶりが仲間との出会いから少しずつ変わっていくのは彼のファンならずとも心奪われること間違いありません。
また、『レ・ミゼラブル』は「惨めな人達」というタイトル通り、原作はかなりダークな雰囲気が漂う作品です。ミュージカルでは明るい「ABCの友」やコメディータッチのテナルディエの存在でその悲惨さは大幅に中和されていますが、レミゼの舞台背景は実はかなり暗いものがあります。
この漫画でも主人公のコンブフェールは第一部から過酷な体験をさせられることになります。そんな重くなりがちなレミゼの空気を著者は絶妙なバランスで描いています。そのため私達読者は舞台の深刻さを理解しつつも暗くなりすぎずに読むことができます。まさに絶妙。個性豊かなキャラクター達がうまく生かされています。すでに私も何度も読み返しているのですが、読めば読むほどその見事さに気づくことになりました。セリフやカット割りの細部にまで著者のこだわりが見えてきます。
いやあ、これは素晴らしい漫画です。『レ・ミゼラブル』のミュージカル開演まであとわずかになりましたが、これは嬉しい出会いとなりました。この漫画を読んでレミゼへの熱量がどんどん上がっていくのを感じます。レミゼファン必読です。この漫画を読めばもっとミュージカルが楽しくなること間違いなしです。もちろん、原作ファンにとってもこの作品が非常にリスペクトに満ちていることもお伝えしたいです。実に本格的な作品です。私もこの作品には感嘆の念でいっぱいです。
『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』は現在も連載中です。第1巻では「ABCの友」のひとりひとりがいかにして仲間になっていったのかが魅力的に描かれましたが、この後の展開も実に楽しみです。もちろん、最後の結末は私達もよく知るところでありますが、やはり私達はそこまでの過程を知りたいわけです。原作やミュージカルではすでに「ABCの友」が出来上がっている所から一気に戦いへと突入し、散ってしまいます。あの魅力的な学生達ひとりひとりの個性を深く味わえるこの作品はとても貴重です。ぜひぜひこの作品はおすすめしたいです。
祝 第2巻発売!いざバリケード戦へ!
2025年4月、『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』の第2巻が電子書籍版で発売されました!

私は紙の本派なので最初はそれが発売されるまで待とうかと思ったのですが無理でした(笑)待ちきれません。紙版が出たら改めてさらに購入するつもりです(笑)
さて、『ルールブルーの友たちへ』の第1巻では「ABCの友」の結成が描かれましたが、続編の第2巻ではいよいよバリケード戦へと向かっていきます。
ミュージカルの『レミゼ』では学生達がなぜあのバリケード戦を戦ったのかというのは時間の都合上あまり掘り下げては語られませんが、ユゴーの原作では当時の時代状況や学生たちの動きが詳しく書かれています。
上でもお話ししましたが、ユゴーの原作はとにかく悲惨です。『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』はその原作を基に学生たちの姿を描いていくのですが、1巻に引き続き今作も非常に素晴らしい内容でした。
彼ら学生達が生きた1830年代初頭にはフランス7月革命が起きています。フランス革命といえば1789年のフランス革命が日本人には連想されるかと思いますが、フランスではこの後何度も革命が起きているのです。
私は『BLUE GIANT』というジャズの漫画が好きなのですが、そのシリーズの中でもフランス人ドラマーが「パリの革命は、たった一度しか起きていないけどな(『BLUE GIANT SUPREME』第8巻)」と言っていたのが非常に印象に残っています。
おそらく大部分の日本人にとってフランス革命はこの認識なのではないでしょうか。
かく言う私もフランス史を本格的に学ぶまでフランス7月革命や2月革命のことを知りませんでした。というより、そもそもフランス革命が何年に起こったのか、ナポレオンとは何者なのかもほとんど知らない有り様だったのです。きっと高校で世界史を専攻しない限りこの辺りのことを知っている人はかなり少ないのではないかと思われます。
そんな中この第2巻ではこの1730年の2月革命のことが語られ、そしてそれによる国民への影響も描写されていきます。
しかもABCの友が立ち上がる直接のきっかけとなったラマルク将軍の死も実は単純な話ではなく、コレラが猖獗を極め、貧富の格差が拡大していた現実とリンクしていたのでありました。
私達はミュージカルのレミゼを何の違和感もなく楽しむことができますが、実は彼ら学生たちが生きていたパリはまさに地獄のような世界だったのです。
しかもその地獄で民衆同士も疑心暗鬼になり、ますます事態は悪化していきます。そしてデマを用いて扇動し、「正義」を振りかざす暴力も横行していました。そうしたカオスも著者は丁寧に拾い上げていきます。1巻の時もお話ししましたが、著者は単に理想主義的に学生達や民衆を取り上げたりはしません。そのバランス感覚が第2巻でも感じられます。
そしてやはり思ったのが、『レ・ミゼラブル』の物語なのにジャン・バルジャンがほとんど登場しないというは実に素晴らしいアイディアだということです。
今回の第2巻では、コゼットと共にほんの数コマ登場しますがセリフすらありません。
原作にせよミュージカルにせよ、私達はそれをジャン・バルジャンの物語として見ていくことになります。つまり私達はジャン・バルジャンの生き様や葛藤、救いと同化しながら物語の展開を追っていくわけです。
しかし『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』ではジャン・バルジャン的なものはほとんど混入してきません。これはどこまで行っても彼ら学生達の物語なのです。
「ABCの友」を主役にしているのだから当たり前でしょと言われてしまえばたしかにそうなのではありますが、私としてはジャン・バルジャンやジャベールの人生や物語が投影されない『レ・ミゼラブル』の世界というのはそれだけで目が開かれるような世界観なのです。
『レ・ミゼラブル』を何度も読み返し、何度もミュージカルを楽しんだ人間だからこそ感じ取れるものがこの漫画にはあります。だからこそレミゼファンにこの漫画を特におすすめしたいというのが私の思いです。
もちろん、レミゼを読んだことがない、観たことがない方にもこの漫画はおすすめです。この漫画を入り口にレミゼの世界やフランス文化の世界に飛び込みましょう!フランス文学はものすごく面白いです。私もこの世界を知るまでは全く興味もなく、むしろフランスが苦手ですらあったのですがそれもすっかり変わりました(笑)ぜひフランス文学沼に皆さんをご招待したいです。
以上、「榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』レミゼファン必読のおすすめ漫画!」でした。
※以下、著者の榮恵愛氏のnoteページのリンクになります。こちらに作品情報等も掲載されていますので興味のある方はぜひこちらもどうぞ。
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