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碧の海から雪の街へ ― 石垣島の一週間後、札幌で出会った冬




一週間で越えたふたつの季節


機材変更で現れた最後のプレミアムシート


石垣島から戻って、まだ一週間しか経っていない。
南の光と潮の匂いが記憶に新しいまま、今度は雪の降る地元の空港に立っていた。空は低く垂れ込め、滑走路の向こうは白く煙っている。石垣で見ていた青の濃淡とは、まるで別の国のような景色だった。

悪天候の朝は、まず運航状況を確かめるところから始まる。
フライトレーダーで追ってみると、自分が乗る予定の便に入るはずの機材はすでに遅れを抱えていた。予約時点では国内線仕様のボーイング767、普通席で向かうつもりだった区間である。

ところが画面を追っているうち、ふいにプレミアムクラスに空席が現れた。しかも、最後の一席。機材変更が入ったのだと直感した。

国内線仕様B787のプレミアムクラス。近距離国際線仕様と同じクレードルシート。

実際、差し替わったのはボーイング787だった。
ANAの国内線787のプレミアムクラスには、一部機材で国際線仕様の「ANA BUSINESS CRADLE」が採用されている。国内線でありながら、近距離国際線の名残を感じさせる少し特別なシートだ。

雪による遅延も覚悟していたが、便は拍子抜けするほどきれいに運び、定刻通り羽田へ到着した。地方発のプレミアムクラスでは、幹線のような加熱式の食事ではなく弁当や軽食になることが多い。そんな違いもまた、路線ごとに表情があって面白い。

地方路線では弁当形式の機内食が提供される。

羽田の遅延と北へ向かう777

羽田では到着が沖止めとなり、バス移動。


定刻到着の安堵のあとに、次の便の遅れが待っていた。

今回の乗り継ぎ先は新千歳空港。
案内表示には約1時間遅れの文字が出ている。

出発地のフライトは夕方の便だった。
羽田での乗り継ぎは当初1時間半ほどの予定。地方空港からの接続としては、特に慌ただしいわけでもなく、ラウンジで少し休めばすぐ次の搭乗になるような感覚だった。

ところが、搭乗予定機の到着遅れが発生しているとの案内が入る。
結果として出発はさらに1時間ほど後ろにずれ、羽田でのトランジット時間は合計で2時間半ほどに伸びることになった。

移動の旅では、こうした時間の伸び縮みもまた日常の一部だ。
予定より長くなった乗り継ぎ時間を眺めながら、ラウンジへと足を向けた。

ANA SUITE LOUNGEに入るが、長居する気分でもない。
飲み物だけで時間をやり過ごす。

旅の途中のラウンジは、くつろぎというより態勢を立て直すための待避所のような場所だ。

次の新千歳行きはボーイング777-200。
こちらもプレミアムクラスを確保していた。前方キャビンに設けられた落ち着いた空間で、2-3-2配列のシートが並ぶ。

羽田から新千歳へはB777-200

満席のはずだった客室で、なぜか自分の隣だけが空席のままだった。
遅延の夜に与えられた、小さな余白のようにも思えた。

羽田発のプレミアムクラスでは、札幌・福岡・那覇といった幹線では温かい食事が提供される。
その一皿が差し出されると、不思議と気持ちが整っていく。

羽田発の幹線では温かい機内食が提供される

新千歳に到着したのは22時30分を回った頃。
空港から札幌へ向かう快速エアポートの最終は23時21分だが、その一本前の列車に間に合った。

4号車には指定席「uシート」が連結されている。
夜遅い到着でも確実に座れる安心感は大きい。

新千歳空港から札幌へ。快速エアポートの指定席Uシート

窓の外には、灯りに照らされた雪だけが見える。

車窓には北海道の雪景色が広がっていた


先週までいた石垣島の海の色とは、まるで別世界だった。

地下鉄に乗り換え、すすきののホリデイ・インへ。
ホテルに到着したのは、日付が変わる寸前だった。


第二章 冬の札幌を歩く

ササラ電車と雪ミク電車

札幌に着いた翌日は、移動を入れず、この街で一日過ごす予定にしていた。
前夜は遅い到着だったため、朝は急ぐ必要もない。ホテルのレストランで朝食をとり、そのあと昼近くまで部屋でゆっくりしていた。

外は時折吹雪くあまり良くない天気。
石垣島は20度近かったが、札幌は氷点下。たった一週間で季節を越えてしまったような感覚だ。

昼前になってホテルを出て、すすきのへ向かう。
巨大なニッカウヰスキーの広告が掲げられた交差点は、札幌を象徴する風景のひとつだ。

雪のすすきの。ニッカの看板が札幌の街を象徴する

そのとき、目の前をササラ電車が通り過ぎた。

路面電車の線路を除雪するササラ電車


竹製ブラシを回転させながら線路の雪を掃く、札幌市電の除雪車である。通常は深夜や早朝に走ることが多く、昼間に見られるのは珍しい。

続いて現れたのは「雪ミク電車」。


北海道の冬の観光キャラクター「雪ミク」のラッピング車両だ。

冬の札幌で食べる一杯

すすきののランドマークであるCOCONO SUSUKINOの大型ビジョンにも、期間限定で雪ミクが時報キャラクターとして登場する。

その姿を見ていると、ふと昔のことを思い出した。
雪まつりの時期、友人と札幌で現地集合してイベントを巡ったことがある。あれから十年以上が過ぎた。

最近はホテル料金の高騰もあり、雪まつりの時期に訪れることは少なくなってしまったが。

昼過ぎになると、身体が冷えてきた。
昼食は、いつもの店へ向かう。

「175°DENO担担麺 本店」。

四川山椒と花椒が効いた担担麺

四川山椒と花椒が効いた、シビれる担担麺の店だ。
地元の友人に教えてもらってから十数年、札幌に来るたびに立ち寄る、自分にとってはすっかり定番の店である。

雪の街を歩いたあとに食べる一杯は、身体の芯まで温めてくれる。


第三章 北へ続く旅の計画

石垣島から続いている一本の線

店を出ると、空はまだ重たい雲に覆われていた。
細かな雪が横殴りに舞う。

だが天気予報を見ると、明日は晴れ。
札幌の冬は、天気ひとつで景色がまるで変わる。

その瞬間、頭の中にひとつの計画が浮かんだ。

先週、石垣島で思いついたこと。
南の島から北へ、日本列島を縦につなぐような旅の構想だった。

点と点を結びながら、日本の中を移動していく。
少し無茶だが、やってみたくなる計画でもある。

旅はまだ続く

札幌にいる今なら、その続きを実行できる。
むしろここからが本番なのかもしれない。

すすきののネオンの下を歩きながら、ホテルへ戻る。

部屋に入るとスマートフォンを取り出し、列車の時刻や移動手段を確認する。
レンタカーの手配、行程の調整。

準備が整うと、旅の輪郭がゆっくりと形を持ちはじめた。

石垣島から札幌へ。
そして、さらに北へ。

こうして翌日の計画を整え、静かな札幌の夜は更けていった。




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