【劇評】ロロ『ウルトラソウルメイト』|土佐有明
ロロ新作本公演
『ウルトラソウルメイト』
脚本・演出 三浦直之(ロロ)
出演 亀島一徳(ロロ)、篠崎大悟(ロロ)、荒木知佳、大場みなみ、門田宗大、新名基浩、野口詩央(劇団かもめんたる)
※本劇評ははネタバレを含みます。ご注意ください。
ロロの『ウルトラソウルメイト』には、作・演出の三浦がインタビューで語っているいくつかのポイントがある。まず、長い時間を含むスケールの大きな作品に挑戦した、ということ。具体的には、90年代の終わりから平成の終わりくらいまでを描出したかったそうだ。また、ここ3作ほど、小規模でこぢんまりとした会話劇をつくってきた三浦だが、久々に時空間を大きく動かす作品にしたい、とのことだった。他にもいくつか、インタビューで語られているトピックはあるのだが、本稿ではそれらとはまったく異なる進入角度でこの作品を語ってみたい。逆にいえば、インタビューで既に存分に語られているポイントを語りなおしても発見も驚きもないのではないか、と思う。

本作は祝祭とリリイというふたりの男性の友情が主軸になっており、冒頭でふたりがこんなセリフを言う。「君にとって、サッカーって星座のことで、だからフィールドはいつでも夜空だし、プレイヤーはキラキラ瞬く星のこと」「星と星のあいだをパスで結んでいくつもの星座を作る(後略)」——筆者にはこれが“演劇”そのもののメタファーに思えてならない。太古のひとびとは、星と星を恣意的につないで星座を創った。星と星を結ぶ線にはいくつもの選択肢があるわけだが、それらを見た人が自分なりの結び方で星座を造形する。それは、セリフの断片を繫いで自分なりに物語を想像/創造する観劇という行為にどこか似てはいないだろうか。
そして、牽強付会を承知で言うと、本作には星にあたるもの(=セリフや舞台美術など)がランダムにちりばめられており、それらがするすると容易に繋がってしまうわけでも、繋げづらいわけでもない、絶妙なバランスで成り立っていると思えた。演劇を観ていると、時としてセリフが「状況の表明」になってしまっている作品に出くわす。説明過多なセリフは星をつなぐ想像力を時として疎外するだろう。本作にはそうした野暮さがまったくないのである。

もうひとつ筆者なりに惹かれた要点がある。それは、本作が“音”の演劇である、ということだ。俳優の仕草もセリフのトーンも、過去のロロの作品に較べると、終始、抑制が効いている。そのぶん、微弱な音に耳が行く。通奏低音のように鳴っている鳥のさえずり、メタリックな風鈴の音、時に極端なエフェクトのかかる俳優のセリフ、サッカーボールが弾む音、アンビエント・ミュージックを想わせる電子音やドローン、その他にも様々な音が偏在していた。これらは音響の池田野歩という類稀なる才能によるところも大きいのだろう。
三浦は小説や映画や漫画やアニメについては饒舌に語るが、音楽に関しては、実はさほどでもない。三浦はSMAPが好きで(SMAPの解散が報じられた夜、たまたま彼と一緒にいたのだが、周りがひくほど落ち込んでいた)、カラオケでは岡村靖幸を熱唱する彼は、いわゆる音響派と呼ばれる音楽にのめりこめないことに、劣等感と悔しさを露わにしていたことがある。だが、本作は証明した。彼は非常に“耳のいい”劇作家であることを。これから観劇される方は、セリフ以外の音にもじっと耳を澄ませてみてほしい。

ロロ新作本公演
『ウルトラソウルメイト』
日程:2026年5月15日(金)~24日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
脚本・演出 三浦直之(ロロ)
出演 亀島一徳(ロロ)、篠崎大悟(ロロ)、荒木知佳、大場みなみ、門田宗大、新名基浩、野口詩央(劇団かもめんたる)
筆者プロフィール
土佐有明(とさありあけ)。ライター。音楽評、書評、演劇評、映画評などを雑誌やWEBに寄稿。
単著『イカ天とバンドブーム論』が発売中。来年、日本のジャズのディスクガイドを上梓の予定。Xのアカウントは@ariaketosa
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