見出し画像

んの魔法 | 長編小説 | 第4章 初めてのスポン(第7話)

「トリックとは奇術のことかのう?それとは、ちと違うな。スポンの本は“心の本”なのじゃからな。いわゆる“本心”(ほんしん)なのじゃ!」

第3章 スポンのルール(第6話)より

これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。

始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第3章 スポンのルール(第6話)

本編はここから


早速スプーンを握りしめた僕の指先は、ちょっとだけ震えていた。
「“スポン”って、本当に吸い込まれるんだよね…?」

スポンの本の、次のページを開いてみると、白紙だった。白は、まるで僕を待っているみたいだった。
「いけるニャ。思い切って、唱えるニャ。」

「エッヘン、オッホン、スッポンポン…」

言われた通りに呪文を唱えると、さっきと同じように、眩しい青い光の文字が浮かび上がって、僕の手のひらからスプーンをすくい上げた。
その瞬間に、何かが僕の中から、ふわっと抜け出していったような気がした。

それから、スポン!と本の中に入ると、やっぱり少しだけスッキリした。 

やった!僕にもできた!
トリックなんかじゃない、これは本当に魔法だ!

僕は、ワクワクしながら、まだ少し震えているこぶしを握りしめた。

「初めてにしちゃあ、ちゃんとできたようじゃの?」

ンタンタンが、僕が入れたページを見ながらそう言った。
僕が入れたスプーンは、少しゆがんで見えたけど、ちゃんとスプーンの形が描かれていた。

「心に迷いがあると、うまく描けんのじゃ。」

「ちなみに、絵を元に戻すには、人によってやり方が違うのじゃ。」

「僕はどうすればいいの?」
「本に使い方が書いてあるんじゃが、わしには読めん。お前さんの本じゃからな。だから、わしに聞かれてもわからんよ。」と、ンタンタンが言った。
「もちろん、みゃーもわからないニャ!」と、マフも言った。

「じゃあ、うっかり大事な物を入れたら、大変じゃない?確かに危険な本だね?」
「先に使い方を読んでみてはどうかの?」
そう言うと、ンタンタンはスポンの本の、最初の1ページをめくってくれた。

表紙と同じ「ん」の字が書いてある。僕以外の人にはそう見えているらしい。

でも、本当は1ページ目には、機械についているような、赤い丸いボタンの絵が書かれてあって、その下にこう書かれていた。

「忘却は軽く、混沌は重く、解放は時を待つべし」


※登場人物「んたんたん」の表記を「ンタンタン」に変更しました。物語の世界観により沿うための調整です。過去話も順次修正しております。


次は、第4章 初めてのスポン(第8話)につづきます。

んの魔法 ~深淵の本と心の夜明け~ の固定ページはこちら → いらっしゃいませ!お茶ですか?それともお話ですか?







いいなと思ったら応援しよう!

若菜あずき よろしければ、応援をお願いいたします。 いただいたお気持ちは、今後の創作の種として、大切に育てていきます。 いつか一緒に、大きな花を咲かせられたら嬉しいです。 でも、無理は禁物。自分のペースで、ふわりとどうぞ。