見出し画像

【人材育成 組織論】 プライドが、人を小さくする

子供が小学生で中学受験の勉強をしていた頃の話である。

特定の算数の問題がなかなか解けず苦戦していた。
明らかにおかしな解き方をしていたので、
私がやり方を教えたところ、息子は逆切れした。
お父さんとは話し合わないと宣言し、私を無視した。

子供は、自分のやり方が正しいことを証明するために
塾の先生のやり方が書いてあるメモを持ってきた。

そのメモは子供が先生のやり方をメモしたものであったが、
メモ自体が誤っていた。
私はその点を指摘したが、子供は自分の誤りを認めず、
私に怒り続けた。
先生が間違うはずはない、と。

後日、塾で問題の正答が配られ、
結局私の指摘が正しかったことが証明された。
それでも、子供はいつまでも
自分が正しかったということにこだわっていた。

実害はなかった。子供は後日その問題をマスターしたから。

しかし、家族は息子との心理的対応にかなり消耗した。


人は、間違いを指摘されたから怒るとは限らない。

自分より詳しくないと思っていた相手から、
自分の得意分野で間違いを指摘されたとき、怒る。

息子にとって、私はその分野では門外漢だった。
その門外漢から、自分の判断の誤りを指摘された。

それが、耐えられなかったのだと思う。

間違いそのものよりも、
「自分が負けたように感じたこと」の方が痛かったのではないか。


この構造は、子供に限った話ではない。

大人も、同じことをする。

いい年をした部下に、彼が自信を持っている分野の
仕事の判断ミスを指摘したことがある。
逆切れして怒り、説明を一切無視した。
後日、自分の判断が正しいことを正当化する説明を
持ってきて、私を納得させようとした。

息子と、まったく同じだった。

その部下は、自分が得意な仕事では
絶対の自信を持っている。
その場所では彼はキングだ。

知識がある。経験がある。人より早く気づける。
そこでは、自分の価値を確認できる。

小さい場所に閉じこもり、
外から批判が来ないように、
負けないように、必死で守っている。

だから、キングのプライドを
傷つけられることには、
異常なほど敏感に反応する。

本当には自信がなく、背伸びして生きている。
特定の分野における自信だけが、拠り所だ。
そこを崩されることが、一番痛い。
だから死に物狂いで防御する。

逆に、自分が詳しくない分野での指摘には、
それほど反応しない。
そこはもともと守るものがないから。


同じような問題を、
その部下は一年に一度くらい起こす。

同じ問題を繰り返すのは、
自分が悪いとは思っていないからだ。
いつも、周囲の側に問題があると、
思っているか、思い込もうとしているのだろう。

自分の問題に気づけないのは、
気づいてしまうとプライドが保てないからだ。

自分は間違っていたかもしれない。
自分は思っていたほど優れていないかもしれない。
自分が悪かったのかもしれない。

それを認めることは、
自分が守ってきたものを壊すことでもある。

成長とは、知識や技能を増やすことだけではない。

自分が間違っていたと認めても、
自分の価値まで失われるわけではないと知ることでもある。

でも、その感覚を持てない人はいる。


得意な仕事に関しては頼れる存在である。
リーダーのそばで細かいところに気づき、
支える役割なら力を発揮する。
そういう人間だ。それが持ち味であり、生き方だ。

ただ、それ以外には手を広げようとしない。

新しい分野に踏み出せば、また初心者になる。
人に教わる側にも回る。
そこでは、キングではいられないのが耐えられないのだろう。

しかし、小さな場所でキングであり続けることを
選んでいるので、いつまでも幅は出ない。
せっかくの得意分野とのシナジーも生じない。
お客さんのかゆいところに手が届くような提案もほぼ出ない。

結局、自分の得意分野だけでは越えられない場面で、
天井にぶつかることになる。


友人、上司、部下、同僚、取引先、親、子ども。

いろんな人を見てきたが、人は、案外変わらない。
変われないのではなく、変わらないのだと思う。

変わるためには、自分が今まで守ってきたものを、
一度壊さなければならない。

自分のプライドを守ることの方が、
成長することより、ずっと大事な人がいる。

その人は、自分を守るために、小さな場所にとどまる。

そして、その場所ではキングでいられる。

ただ、その生き方には、天井がある。


関連記事


いいなと思ったら応援しよう!

しくみノート よろしければ応援お願いします。記事作成の励みになります!