【創作大賞感想#2】『鏡の揺らぎの共犯者』|鏡はいつも見ていた
その揺らぎには、意味がある
6~7月は「創作大賞2026」を読者として応援すべく、応募作品の感想文を書かせていただいています。
今回は、ぷっくさんの『鏡の揺らぎの共犯者』。
ビジネス部門に応募されている作品です。
『鏡の揺らぎの共犯者』は、数字を手放した美容室の、5年間の旅をとりあげた作品です。
そして、ぷっくさんは、美容室の経営者でいらっしゃいます。
『鏡の揺らぎの共犯者』は、ぷっくさんが経営されている美容室の、実話です。

見えていたようで、見えていなかった世界
『鏡の揺らぎの共犯者』で取り上げられるテーマは、店版。
私は「店版」という用語に今回はじめて出会ったのですが、第一章を読んで意味を理解しました。
どの美容室に行っても、確かに陳列してある。
でも、私は過去に1度しか購入したことがない。
施術とは違う、もう1つの商品の話でした。
『鏡の揺らぎの共犯者』は、普段は見えない美容室の裏側を、私たちに見せてくれます。
「そうか、だからあのとき、美容師さんはあんなことを言っていたんだ」
物語を読み進めるなかで、そんな風に自分の過去の経験と物語がつながるような瞬間がありました。
『鏡の揺らぎの共犯者』は、美容室をおとずれたことのある私たち1人1人に、新しい視点を提供してくれる作品だと感じています。
鏡は、陰の立役者
『鏡の揺らぎの共犯者』の要所要所で登場するものは、鏡です。
舞台が美容室なので、確かに鏡はたくさんあります。
鏡がうつすのは、人の外見だけではありません。
見ようとしていなかった、あるいは気づいていなかった内側の姿も、うつすことがあります。
鏡にうつしだされた内面の揺らぎが、物語に深みを与えているように思います。
そして、
そういえば、前回鏡が出てきたときはどうだったかな
そんな風に、以前の章を思い出すきっかけを読者に提供してくれているようにも感じています。
私の個人的なお気に入りは、第八章ですね。
ぷっくさんの一言で、一旦はとじてしまった夢。
その夢が、ぷっくさんの一言でまたひらきます。
現状でも十分な成果が出ている。
でも、さらにその先へ進む。
夢がとじて一旦セピア色になった世界に、再び色が戻ってくるような、鮮やかな変化がつまった章でした。
おわりに|この読後感は、貴重ですね
『鏡の揺らぎの共犯者』は、1人の経営者が向き合った、経営改革の物語です。
でも、読み終わった後に最初に出てきた感想は、私にとって意外なものでした。
ぷっくさんの美容室に、お邪魔してみたいな
ぷっくさんの美容室はきっと、あたたかい場所なんだろうな
私はそんなことを思ったのです。
「ビジネス部門」と聞くと、私たちは身構えてしまいがちです。
『鏡の揺らぎの共犯者』は、良い意味でビジネス部門らしくない柔らかさと、ポカポカとした読後感のある、素敵な作品でした。

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