心と言葉の日本語文法(18)日本語文の分析(9)ビジネス文章の日本語を分析する(2)「貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます。」(前)
(↑のつづきです)
問1
次の手紙文のなかの文をそれぞれに「認識」「判断・態度」「伝達」の3層に分けてください。
貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます。山田商事 営業部の山田太郎でございます。
さて、おかげさまで小社は来る○○月○○日に創立○○周年を迎えることとなりました。これもひとえに皆様方のご高配の賜物と厚く御礼申し上げます。
そこで、創業以来前進して参れましたことを皆々様方に深く感謝し、下記の通り心ばかりの記念パーティーを催したいと存じます。ご多用中のところ、まことに恐縮ながら、何とぞご光来の栄を賜りますようお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもちましてご案内申し上げます。
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貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます。
認識=命題:なし
対事的モダリティ(判断・態度):なし
対人的モダリティ(伝達):「貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます」(儀礼)
【解説】
「いつも世話になります。」「どうぞよろしくお願いします。」のように、日本のビジネスやあらたまった手紙などに書く慣用表現では、相手への気遣いを表している文が冒頭や末尾にしばしば現れる。
これらは言語表現としてみると具体的な命題内容(いつもお世話になっていること、なにかをお願いしたいこと、相手がよい状態にあること)が含まれているようにみえるが、書き手の実際の心の働きとしては、そうした実際の命題内容を表現しようとする意図は基本的に存在しない、と私は考える。
したがって、これらの表現における認識(命題)の部分は存在しないと考える。
命題が存在しないのであるから、命題に対する判断・態度(対事的モダリティ)もない。
したがって、「貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます」という言語表現が持つ働きは、相手への伝達(対人的モダリティ)の働きだけだと私は考える。
しかしながら、「いつも世話になります。」「どうぞよろしくお願いします。」と手紙に書くときには本当にそう思って書いているのだ、という人も中にはいるのかもしれない。
その場合には、「いつもお世話になります。」「どうぞよろしくお願いします。」などの言語表現のなかには、それなりの認識(命題)が存在することになる。
その場合には、
認識=命題:「あなたの会社が繁栄している」「それが喜ばしい」
対事的モダリティ(判断・態度):「ます」(その命題に対する断定)
対人的モダリティ(伝達):「貴社」(相手に対する尊敬)、「ご清栄」(ていねい)、「大慶」(ていねい)、「存じ上げます」(ていねい)
などと、なるだろう(まあ、言葉通りの意味として「貴社ますますご清栄のことと大慶に存じ上げます」という言語表現を使う人など実際にはほぼいないだろうが)。
(↓に続く)
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