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心と言葉の日本語文法(9)日本語文の分析(1)「昨日の試合はペンギンズがベアーズに勝ったようですね。」

日本語文の分析

ここからは、日本語文の三層構造とベースとして、日本語での思考を分析する。

日本語での思考を正しく分析することによって、これまで見えていなかった日本語のさまざまな特性が明確に見えてくる。

また日本語の思考を正しく分析できる能力は、日本語から英語への翻訳の際の重要な基盤ともなる。

以下、いくつかの例題をつうじて、日本語文の特性をみてみることにしよう。

【例1】

昨日の試合はペンギンズがベアーズに勝ったようですね。

【解説】
この文の構造を「認識=命題」「対事的モダリティ(判断・態度)」「対人的モダリティ(伝達)」という3層の入れ子構造として分析してみると、次のとおりである。

「認識」=命題:「昨日の試合でペンギンズがベアーズに勝った」
「判断・態度」=対事的モダリティ」:「昨日の試合は」「ようだ」
「伝達」=対人的モダリティ:「です」「ね」

以下、各要素について簡単に説明をしていく。

認識(命題/叙述内容)

この日本語文で「認識」されている内容(命題)は「昨日の試合でペンギンズがベアーズに勝った」ことである。

判断・態度(対事的モダリティ)

「明日の試合は」の「~は」は、「~」の部分をその文のトピック(主題)として扱うという話し手/書き手の対事的モダリティ(判断・態度)を表している部分である。

同時に、この「~は」は、「昨日の試合で」の「で」の役割も兼務しており、「認識」での役割の一部も担っている。

「~は」が、「認識」(命題/叙述内容)」と「判断・態度」(モダリティ)の両方の役割を担っているというのは、日本語が持っているユニークな特徴のひとつである。

「~ようです」に含まれる要素「~ようだ」は、「認識」(命題/叙述内容)に対する話し手/書き手の「判断・態度」を示している。

ここでの「ようだ」は、「昨日の試合でペンギンズがベアーズに勝ったこと」が断定できずに類推しているという話し手/書き手の判断・態度を示している。

伝達・態度(対人的モダリティ)

「~ようです」のなかの「~です」の部分は、相手に対する「伝達」の部分である。この「~です」は、相手に対する丁寧な気持ちを伝えるという役割を担っている。

日本語では、人に対する「伝達」の部分までを必ず表現しなければならない。

たとえば、「~ようです」のかわりに「~ようだ」にすると、それによって中立的な伝達表現になるのではなく、相手に対する丁寧な気持ちがないという気持ちを伝達する表現になる。

この「伝達」(対人的モダリティ)の不可欠性が日本語という言語の最大の特徴のひとつである。

なお英語では、この伝達(対人的モダリティ)の部分は不可欠な要素ではない。

したがって、話し手/書き手の「認識」「判断・態度」を中立的なかたちで表現することが可能である。

最後に付加する「~ね」も、相手に対する「伝達」(対人的モダリティ)の部分である。

ここでは、相手に対して確認を求める役割を持っている。この部分は不可欠な要素ではないので、別になくてもかまわない。


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