【成瀬 日本語・英語・翻訳講座】言語・認識編(25)きわめて難解なセンテンスの「動的理解」について
(↑のつづきです)
ここまでベーシックなセンテンスおよび複雑なセンテンスの「動的理解」のプロセスについて、解説をしてきた。
最後に、
「迷路文」(Garden Path Sentence)
と呼ばれる、理解がきわめて難解なセンテンスの「動的理解」のプロセスについて解説する。
☆☆☆

解説するセンテンスは、以下のものである。
まず読んでみてほしい。意味がとれるだろうか。
The girl told the story cried.
☆☆☆
このセンテンスを、私たちがどのように動的に理解し、その間違いに気づき、それからその間違いをどのようにして立て直していくのかを、ツリー構造図を用いて具体的に分析していく。
では、はじめよう。
☆☆☆
まず、The girlという語がくる。
The girl
これはSubjectと考えて、ほぼ間違いないだろう。

通常私たちは、これに続いてPredicative VerbあるいはModifierがくる、との予測をたてて、待ち受ける。

すると、toldがやってくる。
The girl told
ここで私たちのほとんどは、まず疑いもせず、このtoldをPredicative Verbだと判断することだろう。

そして、つぎにくるものは、Objectか、Modifierか、Periodであると予測して、待ち受ける。

☆☆☆

すると、つぎにthe storyがやってくる。
The girl told the story
ここで私たちは、ほとんど疑いもせず、このthe storyを、Objectだと判断する。

そして、つぎにくるものはModifierかPeriodだと予測して、待ち受ける。

☆☆☆

ところがつぎにきたのは、なんと、criedだったのである!
The girl told the story cried.

☆☆☆
ここで読み手は、一種の思考パニック状態におちいる。
これは、いったい、なんなのだろうか……。

それから、気持ちを立て直したのち、おそらく、ここまでの構文把握が間違いだったのではないだろうかと、判断する。

そして、あらためて前からセンテンスを読み直す。
その際、criedについては、そのかたちからして、おそらくPredicative Verbであろうと予測をつけるのが普通であろう。
とすれば、それに対するSubjectは、なになのだろうか……。
これが、次の予測である。

☆☆☆
たとえば、その直前にあるthe storyをSubjectであると予測するかもしれない。
そうすると、次のようなツリー構造図になる。

たしかに、これも構文的には考えられる。
だが、the story cried(物語が泣いた)というのは、意味として普通ではない。
シュールレアリズム文学のセンテンスなら別だろうが、一般的には考えにくいものである。
そこで、別の可能性を考える。
☆☆☆

すると、
criedのSubjectの別の候補としてThe girlが浮かび上がってくる。
そしてその場合には、真中のtold the storyがThe girlに対するAdjectival Modifier/形容詞的修飾語句ということになる。

そして、
この構文がこのセンテンスにとって意味的にも無理のない最も適切なものであるという判断を最終的に下して、読み手は分析を終えるのである。
それにしても、とんでもなく長い迷い道であった。
☆☆☆
ここからわかることは、
英語センテンスの構文は、じつにいいかげんだ
ということだ。
このことを、しっかりと頭に入れておくと、逆に英語センテンスが理解しやすくなる。
(つづきは↓)
☆☆☆
☆☆☆
「ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室」では、このほかにも日本と日本人、英語・日本語・翻訳その他に関するコンテンツを数多くアップしてあります。総数は1000本を超えています。
いくつものマガジンを設定していますのでぜひチェックしてみてください。
