【展覧会レポ】鈴木大拙館「世界人ーD.T.Suzuki」
【#281、約3,200文字、写真約25枚】
金沢市にある鈴木大拙館に初めて行き「世界人ーD.T.Suzuki」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
※ 本展覧会はすでに終了しています。
▶︎ 結論
大きな満足は得られませんでした。それは主に、鈴木大拙についての説明が足りず、谷口吉生による素晴らしい建築も消化不良に終わったためです。
なお、鈴木大拙館とセットで「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」「石川県西田幾多郎記念哲学館」への訪問をオススメします。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:世界人ーD.T.Suzuki
場所:鈴木大拙館
会期:4月26日(土)~7月21日(月・祝)
休館日:毎週月曜日
開館時間:午前9時30分から午後5時
住所:石川県金沢市本多町3丁目4−20
アクセス:金沢駅からバスで約10分、その後、徒歩約4分
入場料(一般):310円
事前予約:不要
所要時間:約1時間
撮影:展示室内以外は可能
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

「金沢 / 美術館」で検索すると、どのサイトでも鈴木大拙館が必ずピックアップされていました。建築家・谷口吉生の代表建築としても有名らしいので、行くことにしました。

▶︎ アクセス

金沢駅からバスで約10分。その後、バス停から歩くこと約4分で鈴木大拙館に到着します。近くには、金沢21世紀美術館もあります。
▼ 金沢21世紀美術館の感想
また、鈴木大拙館とセットで、以下2つの訪問をオススメしたいです。
1)谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館:鈴木大拙館を設計した谷口吉生の背景や他の作品の経歴などを知ることができます。
2)石川県西田幾多郎記念哲学館:日本初の哲学家・西田幾多郎だけでなく、彼の親友だった鈴木大拙との関係性や説明などについて、理解が深まります。建物の設計は安藤忠雄です。

▶︎ 禅を世界に伝えた仏教哲学者

私は「鈴木大拙」を存じ上げませんでした。一言で言えば「禅を世界に広めた仏教哲学者」のようです。
まず、名前にインパクトがあります。大きく拙いとは…!(この理由も後からわかりました)
鈴木大拙(本名:鈴木貞太郎、以下、大拙)は、金沢市生まれ(1870年)。中学生の生徒時代や、小学校の先生をしていた時期に西洋哲学などに興味をもちました。その後、義兄が亡くなり、生活の糧が大幅に減少。手に職をつけるためにも、東大(当時の帝大)を目指しました。
そして、早稲田専門学校英文科に入学。当時の早稲田は、東大に入学するための機関としての役割もありました。大拙はそこで英語力を磨き、東大哲学科に入学しました。
大拙は、西洋哲学と仏教にも興味があり、禅僧・釈宗演の講演を聴きました。そして、釈宗演は大拙に円覚寺(鎌倉)での修行をオススメしました。修行の中で法名を授かる習慣により、釈宗演が「大拙」と名付けました。時折登場する「D.T」とは、Daisetsu Teitaroの略です。
その後、大拙は「西洋哲学と仏教の両方に詳しい」x「英語がうまい」ことで、アメリカ人宣教師のオーティス・ケーリーと釈宗演の斡旋により、イリノイ州で翻訳・執筆の仕事を11年間勤めました。
何だかんだあって『禅と日本文化』を含む多数の著作や国際的な活動が奏功ししたことで、文化勲章を受章(1949年)。1966年に亡くなるまで、世界中で禅を解説する活動を精力的に行いました。
人間万事塞翁が馬的な人生の中でも、高い志と継続、向上心で、文化勲章を得た生き方は、見習う部分があると感じました。
…と、鈴木大拙館で見た内容と、後から調べた内容をまとめました。しかし実際、鈴木大拙館での説明や展示を見た時、彼の何がすごいのか、全然わかりませんでした😅

▶︎ 谷口吉生の建築は魅力的だが…

鈴木大拙館に人が来る理由の多くは、谷口吉生による建築だと思います。
もともと、金沢市によって鈴木大拙館の建設構想が出ました。そこで、当時の市長が谷口吉生に依頼、快諾されました。依頼の背景には、谷口吉郎(谷口吉生の父)が金沢市生まれだったことも影響しているのかも。2011年に開館しました(英称:D.T.Suzuki Museum)。
谷口吉生は、鈴木大拙館を設計したことで金沢市名誉市民(2022年)となりました。

建築は「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」を回廊で結び、そのほか3つの庭(玄関、露地、水鏡)があります。来館者がこれらを回ることで、鈴木大拙の考えを知る仕組みになっている…らしいです。


「『無』を形にする。『鈴木大拙館』は、私が設計した美術館の中で、最も難しい課題が与えられた建築だった」
「終わることのない自然界のサイクル。その時間に身をゆだねて生きることを、大拙は『無』と表現したのではないか」


唯一無二で素晴らしい建築です。現実のような非現実のような、ピンとした直線的な建築と、そこにゆらゆら漂う水面。神秘的で諸行無常な世界観は、今まで感じたことがない新鮮な気持ちになりました。


しかし、館内では、あまりに説明を省略しているため、見終わった後の正直な感想は「うーん、消化しきれない謎の施設…」という印象でした。


▶︎ 「世界人ーD.T.Suzuki」感想

職業や地位に関わりなく、さまざまな人々と語り合い、世界的な活躍をしたD.T.Suzuki。同時代を生きた人々がどのように捉えていたのかを当展は着目します。洋の東西を問わず様々な人物が語る「D.T.Suzuki」にかんする言説を紹介しながら、大拙がいう「世界人」とは、どのような生き方であるのかという問いに迫ってみました。
言葉遣いが随所に気になる説明文です。「世界的に活躍した」の方が読みやすい。「さまざま」と「様々」が混同している。「かんする」がなぜか平仮名。「迫ってみました」って、何で動画のタイトル風やねん。

鈴木大拙館は、さまざまなメディアで取り上げられています。その影響で私は、期待していた分、拍子抜けしてしまいました。
館内には、大拙についての文字情報はほとんどありませんでした。入っていきなり、大拙の写真スライドショー(時系列でもないただのアルバム)があり、彼の書などが展示されているのみです。

部屋の端っこに無人レジのような機械が置いてありました。それを使って大拙の生い立ちなどを、タッチパネル形式で知ることができます。内容は、大人用と子ども用を選べます。子ども用を選んでもメリハリのない大量の文字情報だったため、私は消化しきれませんでした。

全体を通して、谷口吉生の建築に頼りすぎだと思いました。鈴木大拙館です。市内外から来た人に「鈴木大拙ってこういう人で、そんな人が金沢市にいたんやなぁ」ともって帰ってもらわないといけません。私が金沢市側であれば、そこに一番注力します。
展覧会の説明文も含め、伝える工夫が不足していると思いました。現状、来館者の大半は、谷口吉生の建築を体験して満足して帰っているようです。例えば「禅を世界に伝えた仏教哲学者」のようなキャッチフレーズがあれば、スッと理解できます。
大拙の背景を理解した上で、建物内を逍遥すれば、もっと違う感じ方ができるのではないでしょうか。現状では、建物の良さも削ぎ落とす結果になっているとも感じました。

▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?期待し過ぎてしまった分、あまり満足できませんでした。鈴木大拙はどういう人なのか、それを分かった上で建築の素晴らしさも堪能したかったです。なお、谷口吉生の「無」を表現した静謐な世界観はここでしか味わえないため、体験する価値はあると思います。
▶︎ 今日の美術館飯

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