詩人は「ろくでなし」というイメージを作ったフランスの天才たち! ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボーってなにが凄いんだっけ?【『世界近代詩十人集』をちゃんと読む②】
メンバーシップ限定記事ではこれまで近代文学を中心に分析を重ねてきました。今月はSNSのつぶやきは詩の復活であると仮定した上で、いまこそ近代詩を代表する10人を読んでおこうという教養回になります。
前回は伊藤整がまとめた傑作訳詞集『世界近代詩十人集』について解説した上で、ハイネとホイットマンの代表的な作品を取り上げました。
今回は、詩人は「ろくでなし」というイメージを作ったフランスの天才たち、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボーってなにが凄かったのか、確認していきます。
ちなみに過去のメンバーシップ記事が溜まってきたので、各月の買い切りプランも始めてみることにしました。メンバーシップならすべての記事を読むことができるけれど、お試しとして、興味のある月だけでも是非是非。
とりあえず初回の『嫌われる勇気』の話だけでも!
☆シャルル・ボードレール
美と快楽を追求し、孤独と破滅を引き受けて
平凡な人生よりも一行の詩に価値を見出した
シャルル・ボードレール(仏・1821-1867)

ボードレールは1821年、パリで誕生。6歳のとき、父親が亡くなります(晩婚で68歳で老衰)。翌年、母親が軍人と再婚。ボードレールは義父を激しく憎み、孤独感を深めていきました。
20歳のとき、素行不良を心配した家族により、インド行きの船に乗せられるが途中で帰国。翌年、実父の遺産を相続し、パリで贅沢にボヘミアンな生活を始めます。その後、混血の女性ジャンヌ・デュヴァルと出会い、生涯にわたる愛憎関係を築いていきます。が、浪費が祟り、わずか2年で遺産の半分を消費。家族に財産管理権を奪われ、以降、貧乏に。
24歳で美術批評に関する文筆活動をスタート。高い評価を得ます。やがてエドガー・アラン・ポーを知り、深く共鳴、その翻訳に心血を注ぎます。36歳で代表作となる詩集『悪の華』を出版、当時の社会道徳を揺るがす内容だったため、公序良俗を乱したとして裁判にかけられ、一部の詩が削除処分(発禁)となってしまいます。
その後は阿片や梅毒で健康悪化、借金苦に苦しみ、起死回生を狙いベルギーへ移住するも、45歳で脳卒中に倒れ、失語症となり、翌年、パリの療養所で母親に見守られながら逝去。
象徴主義の元祖『交感』
五感を通して現実世界と精神世界の境界を乗り越え
理性では捉えられない世界を詩を通し
見えないものを可視化する象徴主義の元祖『交感』
自然は神の宮にして、生ある柱
時をりに 捉へがたなき言葉を洩らす。
人、象徴の森を経て 此処を過ぎ行き、
森、なつかしき眼相(マナザシ)に 人を眺む。
長き反響(コダマ)の 遠方に混らふに似て、
奥深き 暗き ひとつの統一の
夜のごと光明のごと 広大無辺の中に
馨(カオリ)と 色と 物の音と かたみに答ふ。
幼童(オサナゴ)の肉のごと新鮮に、木笛(オオボエ)のごと
なごやかに、草原のごと緑なる、薫あり。
- あるは、腐れし、豊なる また ほこりかの、
無限のものの姿にひろがりて、
竜涎、麝香、安息香、焼香のごと、
精神(ココロ)と官覚(ニク)の法悦を歌へる、薫。
(鈴木信太郎訳)
かっこ悪さを引き受けた『信天翁』
詩人である自分を惨めなアホウドリに喩え
才能を美化せず、社会性のなさを弱点と認め
芸術家のかっこ悪さを引き受けた『信天翁』
慰みに、船乗りたちは、時折 巨大な
海鳥の 信天翁(アホウドリ) を 生け捕りにする。
航海の これは 呑気な道連れで、塩辛い
海を渡って滑つて行く船の後から 従(ツ)いて来る。
船乗りたちが 甲板にこれを据ゑると、忽ちに
蒼空の王者も とかく不器用で 恥かしさうに、
真白な大きな翼を 櫂のやうに
その両脇に 憫れにも 曳摺(ヒキズ)つてゐる。
翼あるこの旅人の なんとぶざまな意気地なさ。
今まで美しかつたのに、滑稽極まる醜い姿。
短い煙管(キセル)で 嘴を 一人の水夫は 突つ突くし、
天翔る身の成れの果の跛(ビッコ)を真似するものもゐる。
この雲霄(ウンショウ)の王侯に詩人は似てゐる。
暴風雨(アラシ)の中を往来し 射手を嗤つてはゐるが、
地上の嘲罵のただ中に 追放(オイヤ)られると
巨人の翼は 歩くのを 邪魔するだけだ。
(鈴木信太郎訳)
醜さにすら美を見出す『腐れ肉』
醜いはずの動物の死体を
解釈で美へと転じさせることで
なにを描くかではなく、いかに描くかで
芸術を定義し直した革命的な詩『腐れ肉』
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