三題噺ショートショート_記念
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「記念」まいりましょうか。

陸は、野球の腕も凄かったが、なにせ、文才があった。
高二の春、ホームルームで、市の留学生募集の論文選考の話があり。興味深げに聞いていた横顔を思い出す。
果たしてその夏、陸は、選抜されてアメリカへの夏期休暇短期留学が決まった。
夏の合宿がすっぽり抜けたのだ。さぞや腕が落ちているだろうと思ったが、何のことはない。すぐにレギュラーに返り咲いた。
ところが。
大晦日に、陸の家に集まって鍋をつつき。翌朝みんなで初日の出を拝みに山に登り。首尾良く日の出に柏手を打ち終わった後、しんみりと陸は言った。
「俺、留学する」
陸は、今やグローバルで有名な劇作家になった。
俺の机の上には、その時みんなで撮った写真が飾られている。
他のみんなは今、どうしているんだろう。
あれから俺は趣味でカメラを続けていて。何者にも成らずに還暦を超えた。
何枚も何枚も、それこそ数え切れないくらいの写真を撮ったのに。どうしてか、この写真が、今でも一番心に残る作品なのである。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、最近マッサー(注1)、短くない?」
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。ムズい。ムズすぎる。笑


