ゼロから小説の設定を作る【実例その1:和風ファンタジー編】
前回の記事の中で「ゼロから作品を生み出すスキルを磨く」というのを書きましたが…
今回はその辺を、実体験を元にもっと詳細かつ具体的に語っていきます。
前回記事で触れたものは「ライトなコメディ」で「異世界転生もの」だったため、「ゼロからの創作」でも「元から頭の中にあった知識や小ネタの組み合わせ」といった感じのものだったのですが…
今回は完全なるゼロからの創作――「企画を元に資料を集め、自分の中に無かった知識から設定を組んでいく」タイプの創作の話です。
スキル的にはおそらく「創作者には絶対役立つもの」なのですが…やっている本人がちょいちょいトチ狂っている(※理想が高過ぎる創作狂)ため、ビミョウに参考にならない部分もあるかと思います。
「やり過ぎだよ!」「ムリだよ!」という部分はスルーして、お役に立つ部分だけ参考にしていただければ幸いです。
ちなみに今回の記事の「実体験」はコチラの作品を創った際のもの↓。
別作品(別ジャンル)での「実例」も、そのうち記事にまとめていく予定です。
■企画を立てる(コンセプト・テーマ・目標etcを決める)
最初にざっくり決めるのが「どんな作品を書きたいか」です。
自分の場合、それは「コメディを封じても『おもしろい』作品が書きたい」でした。
物書きとしての経験が浅いうちは「やったことのないこと」に挑戦して引き出しを増やし、スキルを磨く…というのが自分の基本戦略なのですが…
その「引き出しを増やす」の一環で、「そう言えばこれまで、本格シリアスを書いたことがなかったな」とふと気づいたのです。
学生時代に友人に読ませるために書いた作品は、シリアスとコメディが入り交じったものがほとんどでした。
シリアスで重く沈みがちな物語を、コメディでムリヤリ浮き上がらせてバランスを取ろうとする、何かとコメディに頼りがちな作品ばかりでした。
「コメディを抜いてシリアスだけにしてしまったら、おもしろい作品にならないのではないか?」…そんな不安があったのです。
ですが、社会人になって「本格的に小説を書こう」となった時「このままで良いのか?」「シリアスだけでも『おもしろい』作品が書けてこそ、真の物書きなのでは?」と思うようになりました(あくまで個人の見解です)。
…で「じゃあ、とりあえずコメディを一切封じて1作書いてみようか」となったのです。
目標を決めたなら、今度は「どうすればその目標をクリアできるのか?」を考え、企画を練ります。
自分の場合の論点は「じゃあ、コメディの代わりに何の要素で面白くしたら良い?」でした。
まず思いついたのが「シリアスゆえの重く壮大な恋愛模様」だったのですが……
…書き終えてみれば、なぜかコメディの代わりにアクション・バトル要素が爆増して、1章に1回くらいの頻度になっていました…。
シリアスを「静」ではなく「動」で見せることで「おもしろさ」を出そう・増やそうという無意識の執筆行動だったのかな…と何となく自己分析しています。
■舞台となる地域・時代(のモデル)を決める(複数案を比較する)
小説を書くには「舞台」が必要です。
主人公たちが生きて活躍する「世界」が必要です。
なので実際に執筆を始めるためには、その辺りを決めていかなければなりません。
自分の場合、「引き出しを増やす」の一環で、この時はジャンルを「和風ファンタジー」と決めていました。
しかし「和風ファンタジー(日本が舞台)」と言っても、世界観の選択肢は無限にあります。
まず時代をいつ頃にするのか――たとえリアルな日本史ではない「日本っぽい異世界」の話だとしても、基となる時代をいつにするのか(古代か・江戸か・明治大正あたりかetc)で雰囲気はまるで違うものになります。
まずは「ざっくり」と粗くアタリをつけ、「その時代を選んだ場合、どんな世界観になるのか?」をシミュレーションしてみます。
自分の場合、紙のノートに設定の「イメージ」となる「キーワード」を書き出し、いくつかの候補の中から「古代日本」を選びましたが…
実は当初は「江戸時代」頃の「モノノケと人の少女の恋」をメイン設定にしようかと思っていました。
過去記事で「次に書く作品を決める時には“脳内コンペ”を行う」というのを書きましたが…
作品の「設定」を決める際にも複数の案を出し、脳内コンペで競わせることが多々あります。
この作品の場合、物語のキーが「命の在り方が異なる人外主人公と人の少女の恋」ということは決まっていたので、問題はその「人でない主人公」を「何者にするのか?」ということだったのですが…
江戸時代ベースでの主人公案は「烏天狗」でした。
ですが対立候補を検討してみた時、古代ベースで主人公が「八百万の神のうちの一柱」の方が、より世界観が壮大になって良いな…ということになったのです。
自分は1つ設定を思いついても、まずは「もっと魅力的な設定案が無いか?」と他の案を検討してみることが多いです。
そうして検討を重ねていくことにより、設定をより“おもしろい”ものへとブラッシュアップしていくのです。

ここでは「複数の案を競わせること」の意。
ちなみに日本の「妖怪」は古代の「八百万の神様」が時代を経て変化したもの、とする説がよく語られています。
(古事記にも登場する「天探女(アメノサグメ)」という女神が「天邪鬼」のルーツだと言われていたり…。)
なので何となく自分の中で「時代が遡れば遡るほど、人外の存在が強力になっていく」イメージがあります。
■資料を読み漁って「魅力的なネタ(使えるネタ)」を拾い集める
「時代」が決まったなら、次は「どの史実・伝承を取り入れるのか?」「どの文献を基にするのか?」を決めていきます。
たとえば「古代日本の資料」と一口に言っても、「日本の歴史」などのざっくりしたものから「古事記」「日本書紀」などのガチな文献まで様々あります。
また舞台となる「地域」が決まっているなら、その土地に伝わる「伝説」「伝承」「由来」なども資料になり得ます。
そんな資料の数々から、小説に使えそうな「史実」「人物(神様)」「エピソード」などを拾い集め、設定を編み上げていくわけですが…
自分は当初「古代日本」に関する知識が全く無かったため(一応、高校では「日本史」選択でしたが、教科書の内容さえ「うろ覚え」でした)、資料を読む時間はたっぷり取りました。
具体的には半年です(とは言え、勤め人で残業も土曜出勤も普通にある身の上のため、半年間をフルに使えたわけではありません)。
この作品を書くにあたって、自分は「1つの分野の資料だけで設定を作りたくない」と思っていました。
たとえば「古事記」を題材にするなら、「古事記」本体やその解説書だけでもある程度ネタは拾えると思います。
しかし「古事記」はあくまで「後の世に書かれた歴史書」。
誇張や美化もだいぶ含まれ、当時の「リアルな歴史」というわけではありません。
それに歴史書に書かれているのは宮廷での愛憎劇や権力闘争が主で、当時の「衣食住」や「暮らしぶり」はあまりよく分かりません。
その辺りの「生活感」を知るには「古代遺跡の研究調査」に関する資料や、実際に発掘された出土品を見ていく必要があります。
実際自分は書籍を読むだけでは飽き足らず、上野の東京国立博物館へ行って出土品(レプリカ含む)をこの目で見てきました。

ちなみにこの作品のヒロインのモデル(人物造形の元ネタ)は実在の埴輪「腰掛ける巫女(腰に五鈴鏡を吊るした巫女の埴輪)」です。
しかし、発掘資料から分かるのは、あくまで当時の暮らしの「形」。
「当時の人々の心のあり方」までは、なかなか読み取れません。
その辺りを知るには「万葉集」など、当時の人々の残した「ことば」を読み解いていく必要があります。
…という感じで、読む資料のジャンルを拡げに拡げていった結果、気づいたら半年ほど経ってしまっていたのです…。
さらに言うなら、資料をだいたい読み終えた後に自分がまず行ったのは「万葉集」や「古語拾遺」から「小説に使えそうな素敵ワードを拾い集めていくこと」でした。

まずはざっと書き出して、その中から「実際に使えそうなもの」を取捨選択し、物語の小ネタ(エピソード)を練り上げていきました。
自分は「作品に合わせて文体を変える派」のため、小説に使う語彙もこうやって予めカスタマイズしていくことが多いです。
コスパが悪いにもほどがある作業ではあるのですが…作品の「雰囲気作り」にはとても役立ちます。
執筆するにあたって読んだ「参考文献」はサイトの方にも一部まとめてあります↓。
この作品を書くにあたっての資料リサーチ目標は「日本古代史を学ぶ大学生にも『おっ』と思ってもらえる程度にマニアックな知識を目指す」でした。
とは言え「古代史素人が付け焼刃の知識で書くものだから、どうせそこまでマニアックにはならんだろう」と高を括っていたのですが…
結果としては、想定以上にディープになり過ぎた気がします…😅
■物語の「中心」となるモチーフ(テーマ)を決める
たくさんの資料を読み、多くのネタを集めることは、一見「良いこと」のように思えますが…
情報量が増え過ぎると、今度は「それを1つの作品にまとめるのが難しい」という問題が発生します。
また、設定が雑多でネタがあちこちへ飛ぶ作品は、読者から見ると「全体的にとっちらかっていて、何を書きたいのか分からない」という感想を抱かれがちです。
物語作りにおいて重要なのは「メインは何か?」をちゃんと決めることです。
物語の中心となるテーマやモチーフを、最初にしっかり決めておくことです。
そして、エピソードがどんなに脇道に逸れようと、設定がどれほど壮大に膨らもうと、最終的には全てその「メイン」に収束するようにしておくのです。
具体的には、数あるネタ・設定の中から「メイン」となるものを決め、後のものは「サブ」とし、優先順位をハッキリつけます。
「メイン」には「伏線」を張り巡らせ、常にちょこちょこ作品に顔を出すようにしておきます。
(そして起承転結の「転」でその伏線を回収するようにプロットを作ります。)
「サブ」は「メイン」を邪魔しない程度に、小ネタや場面エピソードの「使い捨ての設定(一度出たら次はほとんど登場しない設定)」として設定していきます。
そうやって優先順位をつけて組み合わせていくことで、作品に「統一感」や「まとまり」ができ「完成度」が上がるのです。
ネタバレになってしまうため、詳しくは書けないのですが…この作品の場合は「花」を最も重要なモチーフとして使っています。
タイトルから、ヒロインの名前から、ヒロインの祖国の名から、キーアイテムから…ありとあらゆる設定に「花」を絡めています。
(ヒロインの名前や祖国の名は「花」から逆算してネーミングしています。)
そして物語のプロットも、花の木の下から始まり、花の木の下で終わるように作っています。
■集めたネタを「設定」に落とし込む
資料からネタを集めても、「そのまま」ではなかなか作品に使えません。
本格的な歴史小説なら「そのまま」+「想像による補完」で書けるかも知れませんが…オリジナル要素のある小説やファンタジーではそうもいかないかと…。
集めたネタを作品に取り入れるには、作品の世界観に合わせてある程度「アレンジ」していく必要があります。
自分の場合、古代日本風な世界で「魏志倭人伝」の記録のように「国が幾つにも分かれて争っている」ところまでは「そのまま」なのですが…
主な舞台は西日本ではなく東日本で、いくつかの国は「鎮守の神」を擁し、その加護の力で栄えている…という設定にしています。
(地名は実在の地名から漢字だけアレンジしてネーミングしています。茨城・千葉・埼玉あたりがメインで出て来ます。)
ある程度「世界観」が固まってきたなら、「物語に必要な設定」から逆算して資料を漁り、ネタを集めるのもアリです。
たとえば自分の作品に登場する「神」は「古事記」や「風土記」に記述されている神々なのですが…
「この国は水属性の国にしたいから、水属性の神を探そう」「刀剣や鍛冶に関係する神様の特徴って、どんなのかな…?」という感じで「物語からの逆算」で登場させる神々を選んでいきました(一部、特徴だけ似せてオリジナルにした神様や、漢字表記を変えた神様もいますが)。
資料のネタから「設定」に落とし込む際のポイントは、バランスを考えての「取捨選択」です。
小説の設定作りは、様々な資料に載っているバラバラの知識・情報を、パッチワークのように縫い合わせ「1つの世界」として繋いでいくようなものです。
パーツの1つ1つがどんなに魅力的でも、バランスを考え上手く組み合わせなければ、全体の仕上がりがメチャクチャになります。
…とは言え、そのためには「バランス感覚」が必要となりますので、そのスキルを磨いていく必要もあるわけですが…。
同じ世界観に入れてチグハグにならないように、プロットが破綻してしまわないように、慎重にネタを選び(時には作品に合うようアレンジして)設定に取り込んでいきます。
(ただし、コメディなら「あえてチグハグ」もアリだとは思います。)
ちなみにこの作品、「コメディを封じる」が目標だったわけですが…
完全に一切「コメディ無し」というわけではなく、「ほほえましい」程度の「コミカルさ」は入っています。
(主人公とヒロインがお花畑でキャッキャウフフしている辺りなど…。)
※今回の記事で利用させていただいたイラスト素材はコチラ↓。
