9.何でもない日記【平穏は二人の世界】
朝、長女は誰よりも早くに起きて、私を起こした。
次女と妻はまだ寝ており、起きる気配がない。
『誰も起きてくれないから4才ちゃんも起きれなかったんだよ!』
話を聞くと、もっと早くから起きていたようだ。
けれどまだみんなが寝ているから、静かに誰かが起きるのを待っていたらしい。
私を起こしたのは君だろう?
というツッコミはやめておいて、私達は二人だけで寝室を出てきた。
部屋はまだ冷えている。
私はエアコンの暖房をつけ、電気カーペットをつける。
そしてあぐらをかいて座ると、娘はまだ眠そうに、私の膝の上にもたれかかってきた。
『ブルーイ見たい。』
娘はブルーイが大好き。
録画しているので、1日に2回は見る。
娘を膝に乗せて、私たちは一緒にブルーイを見た。
中華料理屋さんのようなお店で、今日のごはんをテイクアウトをするパパが、ブルーイとビンゴに振り回されて必死に頑張るエピソードだ。
分かるなあ、この感じ。
パパっていつも、こういう役回りなんだ。
ブルーイのパパ解像度に感心しながら、ふと思う。
こんなに穏やかに、長女と朝を迎えるのは、いつぶりだろうか?
いつもは次女もいて、ママもいる。
次女はお姉ちゃんが大好き。
何でもお姉ちゃんの遊んでるものを欲しがっては、貸してもらえなくて泣く。
諦めた次女は別のおもちゃで遊び始めると、今度はお姉ちゃんがおもちゃを取り上げる。
そしてまた、次女は泣くんだ。
私はいつも、
『仲良く遊ぼうよ!』
『貸してあげなさい!』
『人が遊んでるものを取らないの!』
などといった注意ばかりをする毎日なんだ。
ブルーイを見終わった頃には、お部屋は十分に温まっていた。
私たちは二人で、朝ごはんを食べる事にした。
支度をしていると、食卓に座る娘が、何やら一人遊びをはじめる。
『トントントン。』
娘はテーブルの上で、右手をトントンしている。
お料理のまねっこらしかった。
私も一緒になって、
『じゃあ今から、大きいお魚を料理しまーす。』
40cmほどの魚がある体で、まねっこ遊びに参加する。
『まずはウロコを取ってー、バリバリ。』
『ばりばり!』ニコニコ
『頭を落としまーす。ドン!』
『どん!』ニコニコ
『内臓を取りまーす。』
『あっ、お腹には赤ちゃんがいたんだよ!』
『えっ!じゃあ戻しまーす。』
『頭もくっつけてー。』
『海に戻しまーす!』
『バイバーイ!』
『ねー、ごはんまだ?』
『ああ、ごめんごめん。』
そんなやりとりをして遊んだ。
食後、私はドリップコーヒーを淹れ、座って飲む。
窓の外を眺めると、強めの風が吹いている。
今日は子どもたちを、どこに連れていこうかな?
私がくつろぎ始めたと見て、娘は一人でお絵描きを始めたようだった。
後ろ姿を眺めながら、コーヒーを口にして、ふと思う。
魚のお腹に赤ちゃんはいないな。
程なくして、妻と次女が起きてくる足跡が聞こえる。
私は残っているコーヒーを、グッと飲み干す。
そして、次女が食器で遊び始める前に、テーブルの片付けをするんだ。
ああ、今日も忙しくなるぞ。
