5.何でもない日記【桜と娘とチョコバナナ】
家族みんなで夜桜を見に行った。
そこでは桜祭りが開催されていて、お祭りみたいな屋台が出てたり、桜の木がライトアップされているらしかった。
妻、長女、次女、私の4人で車に乗り込み、何十分か車を走らせて、会場にやってきた。
私は妻に対して、
『あんまり桜って興味ないけど、こんな密度で咲いてると壮観だねー。』
と感想を述べた。
妻は、
『そうだねー。みんなで写真撮ろう。』
と言って、私たちは写真を撮った。
長女は早くも歩くのが嫌になったようで、私に抱っこを求める。
一方の次女は、芝生の上を走り回ることが楽しいらしく、どんどん走って遠くへ行ってしまった。
『ママ!2才ちゃんを追いかけて!』
妻は歩くより早いけど、走るより遅い、そんなスピード感でのんびり次女を追いかけはじめた。
私はいつもこんな時、
(あの人だかりに巻き込まれたら…!)
(知らない人があの子を抱き上げて走り出したら…!)
という事ばっかり考えてしまって、過保護気味に目を光らせ、子どもの自由を妨げてる。
一方の妻は、
『怪我してもしょうがないよ。のびのびしたいんだよ。』
というノリなので、私はいつもハラハラ心配してしまう。
そんな心配をよそに、妻は次女に追いついて、一緒に歩きはじめた。
私が長女を抱っこしたまま、早歩きで二人に追いつく頃には、チョコバナナの屋台があと10mくらいに迫っていた。
すると、これまでは私から絶対に降りないという覚悟さえ決めてそうだった長女が、
『はやくおろして!』
と騒ぐ。
多分チョコバナナが世界で一番好きなんだ。
妻がお財布から小銭をだして、二人分のチョコバナナを買い、子供達は嬉しそうに食べはじめた。
すると長女は、
『私は桜なんかよりもチョコバナナが食べたかったんだー。』
と上機嫌な様子だ。
食べ終わったらまた抱っこ。
今度はママに抱っこを要求する。
次女もまた、チョコバナナを食べ終わった後に、一人で遠くに走り出した。
妻とは違い、私は常に3m以内の距離をキープして子供を追いかける。
それを面白がった次女は、ニヤッとイタズラっぽく笑って、全くスピードを緩める気配がなかった。
『ママのところに戻るよ!』
私が声をかけると、今度はくるりと180度方向転換し、今度はママに向かって走りはじめた。
私たちが走ってたのもあるが、二人がついてくるのがやけに遅い。
何をしているのかと思えば、長女が散った桜の花びらを手のひらいっぱいに拾い集めていた。
高い所で咲いている花には興味がないけど、自分の側に落ちてきた花には反応する。
大人も案外そうだよなーと、なんとなしに思った。
みんなで車に戻り、家路につく。
助手席の妻がこっそり、
『子供達がすぐ寝てくれたら、コンビニでアイス買おうよ。』
と言った。
いいね、と答えて車を運転する。
でも子供達は、車のモニターに映し出されているトムとジェリーに夢中だ。
夜も遅いのに寝る事はなく、残念ながら私たちはアイスを我慢せざるを得なかった。
家に着くと、長女は拾ってきた桜の花びらを、元々お菓子なのかなんなのかが入っていたと思われる、白い箱にしまった。
庭で摘んだ花も、全てそこにしまっている。
中の花はしわしわで、娘はよく匂いを嗅いでは、
『くさい!』
と言う。
じゃあ捨てろ。
次女はまだ小さいのにお姉ちゃんとおなじ量のチョコバナナを食べたもんだから、覚醒してしまって寝る気がない。
もうその時点で21時半を過ぎており、4才と2才には長すぎる夜だった。
私たちは自由奔放な子供たちにげんなりして、時々叱りながら歯磨き、着替えをさせて、ようやくベッドに横になったんだ。
翌日、まだ眠気がとれず、ぼんやり座り込む私に、妻が言う。
『昨日は楽しかったね、やっぱ夜に遊びにいくと、翌日は子供たちも満足してるのかおとなしいよね。』
私は全然頭が回らないながら、何か答えないと悪いので、
『そうだねー。』
といい加減な返事をした。
その数分後に、改めて、本当にそうだったのかを思い出してみた。
私は少し思い出して、そうだな、確かに楽しかったな、と思った。
