11.何でもない日記【ハルジオンにさよなら】
モクレンの花のほとんどは、すでに花弁を落とし、緑色の葉っぱを広げていた。
それでも、残された3つ程の花に再開できた娘は、愛おしそうに語りかけ、撫でてあげていた。
子ども達の手には、たくさんの草花。
ほんの少し前までは福寿草の花に喜んでいたのに、いつの間にか、あたりには植物がひしめく。
増え続ける新しい出会いに、時に寄り添い、時に戸惑い、そして見落としていく。
私たちの道すがら、カタバミ、チガヤ、シロツメクサが現れては、子ども達の足を止める。

私はカタバミを噛んでみる。
少しだけ酸っぱい。

チガヤの茎を噛んでみる。
これはほのかに甘い。

これはみんな知ってるね。
シロツメクサは口にしなかった。
少し向こう側には、白くて背の高い花がある。
私は知ってる。
あれはハルジオンだ。
若い頃に聞いてた、BUMP OF CHICKENの歌に出てきた花だ。
どんな歌詞だったっけ?
…と少し考えるけど、私が思い出す前に、2才の次女がその花を取ってしまった。
上手く茎をちぎることが出来ず、根ごと引っこ抜いてしまったが、嬉しそうにそれを引きずって走っていく。
あらら…。
私はノスタルジーから一瞬で我に帰り、子どもってほんと何するか分からないな、と思いながら、後を追う。
ふと気がつくと、4才の長女が、ずいぶんと先に行ってしまった事に気がついた。
『4才ちゃーん!戻っておいで!!』
私は大きな声で呼び、追いかける。
私が軽く走りだした事に気付いた次女もまた、面白がって走り出す。
するとその途中、ハルジオンを握りしめた手が緩み、地面に落ちた。
そこから1mほど離れた位置で、次女は止まる。
一瞬だけ、何か躊躇したかのような間を経て、
『バイバイ。』
次女は、ハルジオンを置いて、長女の元へ走っていった。
子ども達が先に行ってしまう。
私もまた、ハルジオンを置き去りにして走った。
春の風の中、そこそこの距離を歩き続けた長女はついに、
『だっこしてー。』
という。
私は長女をだっこして、次女と手を繋ぐ。
帰り道、私たちは、時々通りかかる車を避けて道の端に寄り、おんぶをしたり、頑張って歩いてもらったり、抱っこの順番を変えたりしながら歩いた。
子ども達の手には、様々な花が握られている。
そして私の両手には、2人の子ども達。
さっき次女が落としたハルジオンに、もう一度出会ったけれど、誰1人、空いている手を持たなかった私たちは、あの花を置き去りにして家に帰ったんだ。
ごめんね。
