7.何でもない日記【チューリップは何も知らない】
春の強い風が目の前を横切る。
乾いた土埃は目も開けられず、息をするのも難しい。
子供達はお散歩に行きたくて、私に向かって不満を訴える。
私たちは一緒に外に出るんだけど、子供達は、やっぱりお家に入ろう、と言った。
全部知ってた。
雪が溶けて露出した枯葉は、秋を思い出したかのように舞い、軒先に集まりだす。
この時期が来ると、私はいよいよ春も本番だな、と思うんだ。
妻は、吹き溜まる枯葉を掃除する。
でもその日の午後には、また同じように土埃が溜まり、妻は、こんな事に意味はないと投げ出してしまうんだ。
全部知ってた。
何もする前に、何もかも情景が浮かぶ。
そっか、今年はこんな事をするんだね。
じゃあ、きっとこうなるね。
ああ、やっぱりそうなったか。
そんな事が増えた。
去年の秋、妻と娘が、球根を植えたんだ。
雪が溶け、葉が伸びて、花が咲く事をみんな楽しみに待ってた。
折れてから思い出したんだ。
なぜ守ってあげられなかったのだろう。
全部知ってたはずなのに。
