見出し画像

15.私の日記【クサノオウに愛はいらない】


4枚の花弁が可愛らしいその花は、少し荒い葉に、産毛のような茎を持っていた。


摘み取ってみると、断面から黄色い液体が滲んでくる。



思えば私も幼い頃、さまざまな植物に触れて育った事を、今更ながらに思い出した。


茎の間から滲んでくる液体。

少年だった私は、花束を集めるような事はなく、解体して、部品毎に仕分け、構造を知るような遊びをしていた。


だから自分の肌で覚えた。

棘が刺さる感覚。

虫がよじ登る感覚。

口の中のザラついた感覚。


その都度、遊べる草と、遊べない草を、身体で覚えた。


これまでに何度も、子どもたちから花を受け取ったはずなのに。

茎から滲み出す液体を思った時、初めてあの庭の景色が思い浮かんだ。




積み重なるパレットに、粒々の土を入れる大人たち。

青くて大きな水槽。

薄められた農薬に沈む種もみ達。

ビニールハウスに並べられたパレットは、やがて稲の芽を出した。


台所のホースをずっと長く引っ張って、母が声をあげる。


水出して。


私は思った。

僕も水を撒く係をやりたいって。





その花の名は、クサノオウと言った。



私は、君の事、知ってる。

でも子ども達は知らなくていい。


翌日の朝も、まだそこにあり、咲いてた。


かわいい花。
でも、君には毒があるから。

今度は私のいない場所に咲いてね。


私は靴の底で踏みつけて、90度に捻った。



いいなと思ったら応援しよう!