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美輪明宏さん追悼/「ヨイトマケの唄」と吉田修一作品の舞台は重なる?/『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』/桑田佳祐・坂本九版の「ヨイトマケの唄」もお勧めです

 美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」について『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』で詳しく論じています。「ヨイトマケの唄」の舞台と吉田修一作品の舞台は重なるのです。
 紅白歌合戦でも戦前の長崎・丸山の芸能の粋が詰まった「唄」を見事に披露されました。表現を通して様々な差別と闘った方だったと思います。心に沁みる歌声でした。ご冥福をお祈りいたします。

 丸山明宏(美輪明宏)の「ヨイトマケの唄」については、公式の音源だと、桑田佳祐版のカバーが公開されています。原曲の歌詞やメロディを、桑田佳祐らしい歌声と情感で、優しく包み込んでいて素晴らしいです。

 坂本九版も含めて「三大ヨイトマケの唄」だと思います。「ヨイトマケの唄」の背景にある美輪さんの被爆体験について、追悼報道であまり触れられていなかったので、『吉田修一論』からご紹介します。

 吉田修一の初期の作品で描かれている「小島」の坂道や階段道を舞台にした有名な歌と言えば、何と言っても丸山明宏(美輪明宏)の一九六六年のヒット曲「ヨイトマケの唄」である。<中略>
 シャンソンとも民謡とも浪曲とも言える土地から湧き出たような歌詞とメロディーは、「土方」や「ヨイトマケ」の仕事をする母親の逞しさと、子ども思いの優しさの双方に光を当てている。この唄は土方やヨイトマケという言葉が職業差別だという理由で、長らく「放送禁止歌」として自主規制の対象にされていた。しかし桑田佳祐やビートたけしなど、この歌の熱烈なファンの有名人が多かったことも手伝って、二〇〇〇年代からテレビでも徐々に紹介されるようになる。<中略>
 美輪明宏の自伝的なエッセイ『紫の履歴書』によると、美輪の実家は丸山の近くの本石灰町でカフェや料亭などを経営する商家で、その店の隣には南座という劇場があり、どさ回りの芝居からレビューや歌舞伎、日本映画やフランス映画など、様々なものを上演していたという。<中略>
 美輪明宏は歌だけではなく、身振りや演技を加えた多様な芸で聞き手の関心をステージに引き付けるのが上手い。このような芸のルーツは、美輪明宏が子供の頃に過ごした丸山という色街が内包していた、文化的な奥行きと猥雑さにあるのだと思う。<中略>
 美輪は一〇歳の時に屋内で原爆の爆風を浴び、その後も爆心地近くに立ち寄ったこともあり、嘔吐などの原爆症を発症している。<中略>丸山明宏時代にベストセラーとなった『紫の履歴書』によれば、三輪は塀の下敷きになっても友人に避難を促す三菱の女子挺身隊の少女や、首のない赤ちゃんを背負って歩く母親や、焼け爛れた半身に蛆がわくのを取りながら、よたよたと歩く子どもや大人など、原爆投下直後の長崎の惨状を目の当たりにしている。
 一般に「ヨイトマケの唄」は、発表が一九六五年だったこともあり、高度経済成長期の土方やヨイトマケを題材にした唄と誤解されている。しかしこの唄は原爆が落とされる前の長崎を舞台にした唄に他ならない。エッセイの記述によると、三輪が戦時中の一九四二年から一九四三年頃に出会った、美輪の同級生の母親をモデルにした唄である

酒井信『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』

 吉田修一さんの新作『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎、2026年5月27日発売)は、映画「国宝」が大ヒットする中で、日本経済新聞に連載されていた作品です。作家デビュー30周年の記念作で、20周年の記念作が『国宝』でした。産経新聞に書評を寄稿しています。

 マーク・ロスコやバーネット・ニューマンの絵画のような美しい装丁で、長崎の夏の海と空を想起させます。初期短編のような青春小説が、500頁を超える大作として読めるとは。長崎の人にとっては懐かしい「大黒市場」も登場します。

 吉田修一さんの『国宝』や『悪人』『怒り』などの作品については、宇野常寛さん司会の三宅香帆さんとの対談でお話ししています。松本清張の後継者としての吉田修一という見立てで、原作映画が特大ヒットした芥川賞作家という共通項があります。
 吉田修一さんの新刊『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎、2026年5月27日発売)と合わせて、ぜひご視聴ください。

「変わる日本文学―社会の「構造」と「本音」を読む」(楽天大学ラボ)酒井信×三宅香帆×宇野常寛
https://youtu.be/8SMtshKFZ5s?si=jyuI1egzKWGSKU4n

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 2026年1月7日に『吉田修一と『国宝』の世界』が朝日新聞出版より刊行されています。装丁は『国宝』と同じ町口覚さんで、版元も『国宝』と同じ朝日新聞出版です。

『国宝』を中心として、吉田修一さんの代表作を網羅したブックガイドとしてもお読み頂けます。よろしくお願いいたします。
 過去に記した記事は下のリンクでお読み頂けます。

 批評家の宇野常寛さんと映画評論家の森直人さんと映画「国宝」について批評座談会を行ないました。
 映画「悪人」「怒り」と比較しながら、吉田修一原作・李相日監督の作品の特徴について深掘りした充実した内容でした。

 映画『国宝』は歌舞伎を「殺した」のか? 吉田修一&李相日監督の到達点を語り尽くす
https://www.youtube.com/watch?v=Y_q0gmNy7vY&t=1504s

「ニューズウィーク日本版」に、『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)の紹介記事をご掲載頂いています。タイトルは「吉田修一の『国宝』は「原点」から生まれた...<長崎南高校の校区><旧市街>の記憶と風景とは?」です。

 ダイヤモンド・オンラインの「ニュースな本」に『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)の紹介記事が3本掲載されています。
 1本目の記事の表題は「映画『国宝』で、女形が「からっぽ」とネガティブな言葉で評されたワケ」です。

映画『国宝』で描かれた歌舞伎の世界。女形の立花喜久雄が「からっぽ」という言葉で評される映画のワンシーンや、女人禁制の掟などから、歌舞伎はもう時代にそぐわないとの批判も少なくない。だが、差別の名残りと片づけてしまうとその特異な深みは見えなくなる。『国宝』が、そして原作者の吉田修一が、女形を「からっぽ」と表現した真意とは?

ダイヤモンド・オンライン 
映画『国宝』で、女形が「からっぽ」とネガティブな言葉で評されたワケ

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授

 2本目の記事の表題は「映画『国宝』のタイトルに込められたもう1つの裏テーマとは?【文芸評論家が解説】」です。各記事ともに目を引く写真をご掲載頂いています。

映画『国宝』は、単なる歌舞伎役者の成功譚ではない。本作が浮き彫りにするのは、生きた人間が「国宝」と呼ばれる苦悩や、個人の欲望を削ぎ落とし文化を背負わされる宿命だ。人間国宝の在り方について考えていくと、映画『国宝』のタイトルに込められた裏のテーマが見えてきた。

ダイヤモンド・オンライン
映画『国宝』のタイトルに込められたもう1つの裏テーマとは?【文芸評論家が解説】

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授


 3本目の表題は「映画『国宝』では描かれなかった、梨園という「小さな水槽」で生きる歌舞伎役者たちの悲惨な末路」です。編集はお任せしてますが、過激なタイトル(笑) 
 写真は、小説『国宝』で喜久雄が演じた「助六由縁江戸桜」の「三浦屋揚巻」で、歌舞伎ファン好みの良い選択だと思いました。ご一読を頂ければ幸いです。

「歌舞伎役者の家系に生まれれば一生安泰」。そう思われがちだが、現実はまったく逆だ。梨園という閉ざされた世界では、舞台に立ち続ける以外の生き方を選べず、生活に困窮した挙句、身を持ち崩していく役者も少なくない。華やかに見える梨園とは、一度入ったら抜け出せない「小さな水槽」なのだ。映画『国宝』で描かれなかった、歌舞伎役者たちの行く末を追う。

ダイヤモンド・オンライン 
映画『国宝』では描かれなかった、梨園という「小さな水槽」で生きる歌舞伎役者たちの悲惨な末路

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授


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酒井信 『松本清張の昭和』講談社現代新書『吉田修一と『国宝』の世界』朝日新聞出版 ありがとうございます! 今後ともよろしくお願いいたします!

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