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海の家とポップのヒトナツの恋~一片の思い編~

前編だよ。

中編だよ。

そして、今から始まるのが完結編だよ。全文読めます。そしてともりさん。見出し画像をわざわざ作成して送ってくれてありがとうございます。3話とも最高の女性になりました。

では、良いエッセイ旅を。コメントしてくれる方は、前編か中編のコメント欄が開いています。感想は、ポップにいつか伝えます。これが私の描くエッセイであり「なんのはなしですか」でありエンターテイメントです。書いていて楽しかったです。



 葉山の海の家で海に向かい、ただビールをそこの景色に沿ったリズムで呑む。そこに女性が見える範囲にたくさんいてくれるだけで、それがどれだけの贅沢なのかを知る夏だった。サンセットタイムが近づき、波音も俄に静かになっているように感じていた。私の時間がやってきた。誰もがそう思っているような時間だったのだが、この時間は私こその時間だと、主役は私だと念じて実行していた。

 俳優としての存在感を発揮出来るサンセットタイムの魔法を浴びるのは、この私にしか出来ないと、少し肥えたバストを付きだし、実際にその場にいた誰よりも一番、胸を張ることにして、俳優としてのオーラをバストから強調させることに成功していた。

 タケさんと、さえき まゆこさんがやって来た。さえきさんは、神奈川の皆からチャマさんと呼ばれているのだが、ポップだけは、さえきの「き」とまゆこの「ま」を取り、「きま」と呼んでいる。だが、その画期的なネーミングが定着しないことを、何度も首をかしげ「俺だけが呼んでいる」と、首が一回転しそうなくらいに不思議がっていたのだが、その問いに対する答えを誰も反応しなかった。私は、かなりタイプの女性のビキニラインとお尻の間を触ろうと準備をしていた右手で、そっとポップのアゴを押してあげたら首が一回転するのかなと可愛く考えていた。

 タケさんとチャマさんは、福岡で出会い、ユニットを組み、九州から神奈川へとLIVEをしに来ている。ハワイ関係のミュージシャンは、年中夏なのだが、やはり本番の夏を心から楽しそうに迎えていた。二人は、リハーサルを終えた安堵からか、俳優としてバストが輝く、コニシ木の子を目撃した感激からなのか、笑顔が溢れていた。

 タケさんは、開口一番にかなりタイプの女性に挨拶をし、きちんとハグをした。その距離は、かなりタイプの女性からいい匂いがすることを確認出来るハグだった。

「やっと会えたよ。かなりタイプの女性。はじめまして」

 と、私とポップを差し置いて、かなりタイプの女性に一瞬で挨拶とハグをした。なんのはなしもしていないのに「やっと会えたよ」と、初めて出会う女性にニヤケながらも、すかさずハグをするところが、根っからのハンターだった。

 私もポップも、それに乗じて、かなりタイプの女性とハグをしようとハンター然としていたが、私たちの順番が訪れることはなかった。それでも、時間が経過すればその時は必然的に訪れるだろうと、両腕の上腕二頭筋に力を入れリハーサルをし、ハンターとして「待つ」の極意の境地に私は達していた。

 しかしながら、やはり、ミュージシャンは違う。私たちとの共通点は「女性が大好き」という点では一致しているが、スマートにそれをこなすことの出来るおタッチは、ミュージシャン特有の奏で方だと思って観察していた。楽器がなくとも恋を奏でている。私もミュージシャンだったはずだろと、指笛を思い出していたのだが、指笛を披露しようとしてしまえば、指笛を特大に響かせることが出来るポップに、この場を持っていかれると思い、八方塞がりを感じていた。

「私も、やっと会えました」

 と、かなりタイプの女性も返事をしている。今の日本では「やっと会えた」と挨拶することが、はじめましての主流の挨拶なのだろうと学んだ。

「やっと会えたね」

 この言葉は、久しぶりに会うタケさんと私たちがすべき正しい挨拶であるはずだったが、かなりタイプの女性は、ニコニコとしているので、その笑顔に「やっと会えた」と思った私は、すでに満足していたことを否めない。

 私たちの久しぶりの再会は、出会いの二十年前からの振り返り、そして現在に至るまでと多岐に渡った。私たちとタケさんは、私が企画したKONISHIKIのCDのプロモーション企画の日本縦断企画の途中で、ポップが熊本県でタケさんと旅の途中で出会ってからになる。タケさんとの交流はそのまま現在まで続き、KONISHIKIが九州に行く時には必ず、タケさんに連絡をするようになり、KONISHIKIのバンドメンバーとなり、熊本ではテレビ番組に出演し、そのキャラクターから地元八代のスーパースターへと駆け上がっている。私はこの二十年に及ぶ、タケさんの成り上がりを見ていて「タケ上がり」と名付けている。

 タケさんは、チャマさんと呼ばれる女性とユニットを組んでいた。チャマさんは、劇団四季出身で、今はミュージカルシンガーとして活躍しているとのことだった。

「声の出し方が、LIVEとオーケストラでは違うのよ」

 と、実際に歌声を響かせる人の生の声を聞くことが出来た。要するに、ラジオで話すのと書くのとは違うということだなと、私の豊富な経験則でその境地を推し量った。タケさんは、チャマさんのその美しい歌声を聞いて、ユニットへと誘ったとのことだった。

「見てたよ。そこの場面見てたよ」

 と、三十分ぶりに口を開いたポップが、出会った瞬間を柱の影から見ていたと、謎の見ていたアピールをしてきた。ポップは何度も柱から覗いていた仕草を繰り返し「見てたよ」と発していた。私は、ポップの演技初舞台を、正面から鑑賞出来たことへの幸せを感じていた。隣にいるかなりタイプの女性も、笑顔を崩さないので、名演技だったのだろうと思う。だから何なんだとは誰も言わずに、宴は盛り上がっていた。見てたから、それでいいのだ。

 タケさんが、タバコを吸いに行くと言うので、私と、かなりタイプの女性は付き合うことにした。

 だが、ポップは来なかった。

 立ち飲みスタイルの海の家の近くに、喫煙所は存在していた。波の音が静かに聞こえる。タバコを吸う私の姿を、誰か撮影するチャンスだぞと思ってはいたのだが、カメラを私に向ける人はいなかったので、海にはカメラを持ってこないものなのだなと、そのローカルルールを知った。そのお店にいた一人の女性に、タケさんは、すかさず話しかけていた。

「どっから来たの?俺熊本サー。」

 ベタなナンパだと思っていた。そこに存在していたのは、沖縄出身でもないのに、語尾のサーを伸ばす、サー詐欺のミュージシャンだった。南出身なら沖縄と熊本も関係なく、神奈川の女性を騙せると考えている安易なミュージシャンの姿だった。だが、神奈川の女性はサーに疑いもかけずに、言葉を続ける。

「え?何しに来たんですか?」

「あそこ。あそこで明日LIVEやるのよ。来ちゃいなよ」

「え?良いんですか?」

 ミュージシャンが、モテるというのは本当だと私は確信した。語尾のサー。は、どこかへ一瞬で過ぎ去り、これはサー詐欺ではないことを悟った。急にミュージシャンとしてナンパというミュージックを神奈川の女性と奏ではじめている。音楽が国境を越えるのは、当たり前なことなのだと私は納得した。一通りナンパし終わりタケさんは、私たちの元へやってきた。

「明日来るってさ」

「明日、SOLD OUTって言ってませんでしたっけ?」

 私は、たまにはマトモに会話をする。ついさっきまで、明日はSOLD OUTで誰も入れないと言っていたはずのミュージシャンの返答は、明るかった。

「何とかなるサー」

 このサーは詐欺だ。だけどやはり、ミュージシャンは何か違う。サー。の流し方がどこか奏でていて、何とかなるのだろうと思わせてしまう。私は、心底羨ましかった。サー詐欺にあやかりたくなっていたし、私には「明日、あそこでLIVEするんだ」と言うようなことを言えない。言えるとしても「明日あそこで、海に向かって指笛吹いてるサー。ピー」くらいだ。こうして、ミュージシャンになれば良かったなと想いを馳せていたら、遠目にポップの姿を私たちは発見した。ポップは、立ち飲みスタイルのお店を何度もゆっくりとグルグルグルグルしていた。

 何をグルグルしているのかと、じっと皆で見ていた時に、タケさんが気付いた。

「アイツ、あの女性を狙ってる」

 それは、葉山の海の家に集まっている女性の中でも、一際目立つ存在感を発揮していて、インスタグラマーか、モデルかというようなスタイルで、場を華やかにしている女性だった。女性は、ヒラヒラとわざと風に靡く衣類をまとい、風を予測して、素肌を魅せる計算をし、時折除ける白い肌と相対する黒い水着を覗かせていた。

 私は、時折覗く黒い水着は、下着なのではないかと感じていたが、それをポップに教えてあげるのは野暮だなと思い、戦況を見守ることにした。そもそも、水着と下着の違いとは、男性がそう思うか、そう思わないかの違いだけだと、昔書いた記憶が蘇ってきたので、存分に下着だと思うことにした。

 これも、夜の海の魔法だ。

 オレンジに薄く光る立ち飲みスタイルのお店の周りには、お酒と女性がよく似合う。横にいるかなりタイプの女性も、かなり、かなりタイプの女性を振り切ってキレイに見える。そして、そこに必要なのは、グルグルと回るポップが必要だったのだ。私は、気付いた。これは、ポップの夏のグルグル行進曲だと。

 ポップも奏でていた。

 それでも何周か何もせずに、ただ回るグルグルポップ行進曲の前に、私は一匹の犬が繋がれているのを発見した。

 犬は、女性を呼ぶ。

 私は、ポップにアイコンタクトを送り、ポップはそれをグルグル行進曲の八周目で確認した。そのアイコンタクトは、しっかりと私に見届けろと言っていた。ポップは、犬のそばに寄り、優しく犬を撫でた。優しく犬を撫でる男性に女性は、惹かれることを知っていた。キレイに華やぐ女性は、犬を優しく撫でるポップを認めた。私たちは、全員スマホを構えた。

 女性は、犬を撫ではじめた。

 ポップの横で撫ではじめた。

 ポップは、すかさず自分も撫でてくださいと言わんばかりに、一言ナニカを女性に対して、はなしかけた。それは、あまりにも一瞬だったので、シャッターを押すチャンスにすらなかったのだが、私は見届けなければならないと、その瞬間を目に焼き付けた。

 女性は、ポップの目を見て確実にナニカを答えていた。

 別れの瞬間は、一瞬でやってきて、女性は再びお酒を注文し、その場を後にした。ポップは、一部始終を目撃していた私たちに近付いてきた。

「目に吸い込まれるかと思った」

 ポップは、確かに恋をした。その一瞬の一片の思いは、片思いだろうが、この日恋をした。

「あぁ。いい恋をした」

 ポップは、私たちにそう語った。

 こうして、タケさんたちとまた会う約束を交わし、私たちの海の家での夏の一日は終了したのだが、しっかりと私たちは、かなりタイプの女性を最寄り駅へと送り、別れを惜しみながら、二人で振り返っていた。

「あの時、君はいったい何て言葉を交わしたんだい?」

 私は、聞こえなかった言葉を知りたかった。

「あぁ。犬『好きですか』って聞いたんだ」

 ソノサキの言葉は、私からプレゼントさせてもらった。

「『好きです』って言われたのか」

 私たちの四半世紀のお付き合いは、こうして成立している。

 自宅の前に到着し、ポップが別れ際に聞いていきた。

「かなりタイプの女性は、どうしたんだい?」

 私は、こう答えて最高のウインクをした。

「君にも見えていたのかい?最高だったよ」

なんのはなしです完

 ポップにレモンサワーを、プレゼントしたい。


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